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【初心者さん優先】 福神社の蔦退治

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【初心者さん優先】 福神社の蔦退治

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 後片づけ
 
 
 
 焼き芋や差し入れを食べると、新入生たちは帰っていった。
「お土産にどうぞ」
 火村加夜はハートや星などを象った餅を、帰ってゆく皆に配った。
「これは2つで1つの形になるんですよ」
 ほら、と餅を組み合わせて加夜は笑った。
 もうすぐお正月。このお土産が何かのきっかけになってくれれば嬉しい。
「気をつけて帰って下さいね」
 琴子は帰宅する皆を見送ると、福神社の方へと戻ってゆく。その後をアシュレイ・ビジョルド(あしゅれい・びじょるど)は追っていった。
「白鞘先生!」
 アシュレイの呼びかけに、琴子はゆったりと振り返る。
「今日はお疲れ様。ゆっくり休んで下さいましね」
 琴子の柔らかな物腰は、いかにも和の心を思わせる。
 もともと日本が好きなアシュレイだったけれど、憧れの男性が日本をこよなく愛しているということもあって、もっと日本を知りたいと願っている。蒼空学園で日本文化を教えている琴子ならばと、アシュレイは頼んでみた。
「日本文化にお詳しい先生にぜひ師事したいのです」
「あら……」
 思ってもみないことを言われたように面くらう琴子に、アシュレイは言葉を重ねる。
「昨年はクイーンヴァンガードの活動で、先生の講義に参加するチャンスもありませんでしたが、今後は出席させて頂ければと思います」
「でも……あなたは蒼空学園の生徒ではないですわよね? わたくしが教えているのは蒼空学園での授業ですもの。出席するのは無理だと思いますわ」
 日本文化に興味を持ってくれるのは嬉しいのですけれど、と琴子は申し訳なさそうに答えると、蔦のあった神社の裏手へと回った。
 蔦はすべて退治され、もう危険はない。けれど戦闘の名残はそこここに残っている。
「すぐに修理を頼まなければなりませんわね」
 気がかりそうに石灯籠に手をやり、琴子は顔を曇らせた。
 そこに布紅がやってくる。
「あ、先生、今日はありがとうございました」
 にこにこと礼を言う布紅の方は、灯籠が欠けたことを気にしている様子はない。その布紅に、灯籠を見ていたのと同じ憂い顔を一瞬向けた後、琴子は穏やかに微笑んだ。
「いいえこちらこそ。良い経験をさせていただきました」
 後片づけをしようと残った御凪 真人(みなぎ・まこと)も、琴子の言葉に頷いた。
「ふむ、確かに丁度良い依頼でしたね。パラミタで起こる不思議な事件の例として。また契約者が自分たちの力を理解する為のものとしては申し分ない事件だったと思います」
 人によっては、パラミタに来てすぐに大きな事件に巻き込まれることもある。どう経験を積んでゆくのかは人それぞれだけれど、第一歩をスムーズに踏み出せるにこしたことはない。
「ええ。ちょうど良かった、などと言ったら布紅さまに叱られてしまうかも知れませんけれど」
「いえいえ〜。私も本当に助かりました。あのまま蔦が増えてしまったら、初詣も出来なくなってしまうんじゃないかって心配だったんです」
 今年が始まる時、布紅は貧乏神だった。もうすぐ来る新年は布紅が福の神として迎えるはじめての年になる。蔦等の心配事無く、気分よくすっきりと新年を迎えられることは布紅にとって何よりだろう。
「無事に終わって良かったですね」
 これは兄からです、と神楽坂紫翠は白いマフラーを布紅にふわりと巻き付けた。
「『寒くなりますので風邪を引かないように』との伝言です」
「ありがとうございます。お兄さんにお礼を伝えておいて下さいね」
 布紅はマフラーに触れて、ふわふわです、と笑った。
 負けてはいられじと、城ヶ崎瑠璃音は蔦から取り戻した竹箒を布紅に渡す。
「布紅さん、これをどうぞ。わたくしが身を賭して取り戻して参りましたの」
「ありがとうございます。これでお掃除ができます」
 嬉しそうな布紅に、瑠璃音はふらりと大げさに寄りかかる。
「ああ……目眩が。蔦との死闘の所為ですわ……」
「だ、大丈夫ですかっ?」
「こうしていれば治りますわ、きっと……」
 このチャンスを逃すまいと、瑠璃音は一層布紅に身を寄せた。
「その竹箒、貸してくれるか。掃除は俺が代わりにしてやるぜ」
 動けずにいる布紅の手から椎堂紗月が竹箒を受け取る。退治された蔦の残骸はおおむね焼き芋の燃料として燃やされたけれど、細かな蔓の断片がいっぱい残っている。
「掃除をするなら私も手伝います。箒を持ってきますねー」
 確か巫女さんたちが使っていた竹箒があったはず、と高峰結和は身を翻す。
 新入生のこれからを考えれば、蔦退治は見守るしかなかった。手を出さずに見守る、ということは手伝ってしまうよりも難しい。
 でも終わった後の掃除なら気兼ねなく存分に手伝える。
「わたくしも手伝いましょう。わたくしのハウスキーパーの腕があれば、掃除なんてあっという間に終わってしまいますわ」
 集めた蔦は火術で燃やしてしまえば良いし、と十二星華プロファイルも掃除の手伝いを申し出た。
「でしたら俺も手伝いますよ。残務処理等があればそれも」
 真人に言われ、残務処理? と布紅は首を傾げる。
「蔦による被害を確認しなければなりませんし、空京神社本社の方への報告も必要でしょう? 蔦の為に初詣の準備が滞っているならそちらも進めなければならないでしょう」
「あっ……そうでした」
 真人の指摘に、布紅ははじめて気づいたように口元に手を当てた。
 結和は社に向かい始めながらくすりと笑う。
「まだまだやることは残っていそうですね」
 蔦を退治して、燃やすついでに焼き芋を楽しんで。初仕事を終えた新入生たちは今頃帰路の途中。
 その行く先に良い思い出となることがあるようにと願いながら、残った者たちはその後片づけに忙しく動き回るのだった――。
 
 
 ようこそパラミタへ。
 新たな思い出を紡いでいく場所へ――。
 
 
 

担当マスターより

▼担当マスター

桜月うさぎ

▼マスターコメント

 
ご参加ありがとうございました。
蒼空のフロンティアのシナリオに参加しての感想はいかがでしたでしょうか。
新しくこのゲームを始められた方へのようこその気持ちをこめて執筆させていただきました。
少しでも、このゲームの楽しさが伝えられていれば良いのですけれど〜〜。

新しく入られた方のアクションも楽しませていただきましたけれど、既参加者の方のアクションも初心者さんへの思いやりが感じられて、ああみんな、蒼空のフロンティアの世界をどんどん新しい人に楽しんで欲しいと思ってるんだなぁ、と嬉しくなりました。

マスターシナリオは、まったく知らない人が来てぱっと手軽に楽しめる、というのではないので、最初は大変だと思います。けれど、楽しみ方を知れば他にはないおもしろさを感じられる……(とマスターとしては思いたいっ)と思うのです。
私は力不足なマスターですし、相性というものもあります。今回、あまり楽しめなかった、という方もこれに懲りずに別のシナリオに参加してみて下さいませ。そこで、うわぁこんなに面白いものなのか、という出会いがあるかも知れません〜。
そしていつか……先輩として初心者さん用のシナリオに入ることがあれば、今度は皆様が良き導き手になって下さいませ。そんなリレー、素敵だと思うのです。

皆様のこれからの蒼空のフロンティアライフが良きものでありますように――☆