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レッツ罠合戦!

リアクション公開中!

レッツ罠合戦!

リアクション

 さて。
 大急ぎで引き返していくニクラス一行の姿を見て、洞窟内に居た人々は宝がニクラスの手に渡った事を知りました。
 そうとなれば長居は無用。皆は或いは早く脱出するため、あるいはニクラスの手からお宝を奪って自分の手柄にするために、各々急いで来た道を引き返しはじめます。
 しかし、ニクラス一行は二十人からなる大所帯。宝の横取りを企む連中も、人の壁に阻まれてニクラスに近付けません。
 そのまま洞窟探索をしていた面々は、団子状態のまま洞窟の入り口まで戻ってきました。
 外からの明かりが見えます。
 知らずにほっと安堵の笑みが皆の顔に浮かびます。
 そして――

「びゃうっ!」

 先頭を走っていた誰かが、何かに足を取られて急に止まりました。 
 さらに止まりきれない後続がどんどんその背中にぶつかります。
「なに、コレぇ?」
「……なんか、ロープが……っていうか、取れない……!?」
 そこには、誰が仕掛けたのか、足元にはロープが、その先にはトリモチがのれん状に仕掛けられていました。
「誰よ、こんなところにこんなもの仕掛けたの……」
 よっこらしょ、と一人が冷静にトリモチののれんをくぐります。
 すると。
「ぴあああああああああああっ」
 その先に出来ていた、パチンコ玉がぎっしり並んだスロープに足を取られ、綺麗に滑っていきました。
「ちょっと、なんなのよ!」
「誰だよこんなの仕掛けたの!」
 人々の間から口々に声が上がりますが、コレをくぐり抜けないことには洞窟から脱出できません。
 しかも、足元を見ると何となく黒いもやが掛かったようになっていて、足元がよく見えません。誰かが暗術を使っているようです。
「どうなってんだよ!」
 完全に安心しきっていたところへ突如現れた罠に、一同はすっかりプチパニックです。
 前の一人がハマった罠を避けようとすると次の罠が待っている、見事な罠コンボに次々と引っかかり、最終的に、スロープの先に設置されているサラダ油の池にどぼんして、ほぼ全員が油まみれとなって這々の体で洞窟から出て行くのでした。

 その酷い様子を、物影に隠れて撮影している人影がよっつ。
「ははは……設置しておいてなんですけど、これにはかかりたくないですね……」
 出口にトラップを仕掛けまくった犯人の一人、ザカコ・グーメル(ざかこ・ぐーめる)がカメラを回しているルカルカ・ルー(るかるか・るー)の隣で苦笑します。
 因みに、落とし穴やパンチグローブなど、先に仕掛けられていた罠は四人の手によって撤去されています。
「しっかし、みんな面白いように引っかかるわねぇ」
「そうだなぁ。おっと、術が解ける……」
 ルカルカの声に、ザカコのパートナーの強盗 ヘル(ごうとう・へる)がニヤリと笑います。が、その拍子に罠を見づらくするために使っている暗術の制御が疎かになり、慌てて気を引き締めます。
「さあ、長居は無用です」
 殆どの人たちの、見事な滑りっぷりを録画したところで、ルカルカのパートナーであるニケ・グラウコーピス(にけ・ぐらうこーぴす)が空飛ぶ箒を取り出します。ルカルカとニケはベルフラマントを羽織って気配を断ち、罠に藻掻き苦しんでいる人々の横をサッとすり抜けて退散していきます。ザカコ達もまた、光学迷彩で姿を隠してそっと立ち去りました。


 ルカルカとザカコ達が仕掛けたトラップをなんとかかんとか抜けだした一行は、必要以上に疲労して洞窟の入り口でひっくり返っていました。
「なん、なんとか……持ち帰れたな……」
 ニクラスは、ぎゅっと腕に抱きしめていた本を空に翳します。
「戻ったか、ニクラス」
 そこへ、捜索隊帰還の一報を受けたマルティン氏がやってきました。
 ニクラスは慌てて鯱張ってその場に姿勢を正します。
「ち、父上……約束通り、我が家の家宝を持ち帰りました!」
「ほう……」
 まさか本当に持って帰ってくるとは思っていなかったマルティン氏は、自慢の髭をついっと撫でると、ニクラスの手から本を受け取ります。ちょっと油でぺとついていました。マルティン氏の眉が不機嫌そうに顰められます。
「……なるほど、本物のようだな」
 それでも、一応中身を点検したマルティン氏はふむと唸ります。
「じゃ、じゃあ……」
「……約束だ。勘当は取り消しとしよう」
 マルティン氏の言葉に、ニクラスと、それからニクラスの護衛に付いた面々の顔に笑顔が浮かびます。
「しかし!」
 が、すぐに響いた鋭い言葉に、一同はシンと静まりかえります。
「己の試練のためにこれだけの人数を雇い、しかもその金はユーハンソンの娘が出したそうだな。そのような甲斐性の無い者をリヒター家の跡取りにするわけにはいかん! お前は当面、社会勉強だ!」
「そっ……そんなぁ……!」
 ニクラスの情けない声が響きます。
 が、勘当を解除してもらた以上、強く文句も言えないニクラスなのでした。

 なお、一応「ニクラスの勘当を解除させる」というシェスティンの願いは叶ったため、ニクラスのボディーガードに着いた面々には、シェスティンからの報酬が約束通り支払われました。


 ――ちなみに、ルカルカ達四人が仕掛けた「ドッキリトラップマスター大作戦」の模様はDVDに焼かれ、イルミンスールのエリザベート校長へ献上されたとかなんとか……ついでに、希望者にはルカルカからDVDが配布されたそうです。



――おしまい。――
 

担当マスターより

▼担当マスター

常葉ゆら

▼マスターコメント

たんこぶが痛いです常葉です。ご参加頂きました皆様、ありがとうございました!
今回は全編、ですます口調でのリアクションに挑戦してみましたが如何でしたでしょうか。
罠合戦、ということで皆様さぞ素敵な罠を仕掛けて下さるかと思いきや、いえ勿論、沢山の素敵な罠のアクションも頂いたのですが、それとほぼ同数、罠に引っかかりに行く! という素敵なアクションを頂くことができ、嬉しい悲鳴を上げながらマスタリングさせていただきました。
今回直接的なキャラクター同士の絡みは少なくなってしまいましたが、実はあっちで仕掛けた罠にこっちで引っかかている……という仕様です。もしよろしければ、読み返してニヤッとしてみてくださいませ。
皆様の手厚いサポートのお陰で、ニクラスが最終的にお宝を持って帰る事ができました。が、彼の受難はまだ続きそうですネ。

いつも楽しいアクションをありがとうございます。次回作でまたお目もじ出来れば幸いです。ありがとうございました。