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アタック・オブ・ザ・メガディエーター!

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アタック・オブ・ザ・メガディエーター!

リアクション


【十三 三位一体】

 しかし、理沙、ザカコ、ダリルに迫るアロコペポーダを駆逐するには、まだ戦力が足りない。
 知恵子は後方付近で、メガディエーターと併走する形で飛翔する理知に、大声を張り上げて呼びかけた。
「悪いけど、下の方を見てくんない!? さすがにそっちまではケア出来ねぇよ!」
「良いよ〜! 任せて〜!」
 何となく気が抜けそうな声で、理知が応答してくる。しかし彼女の手にした銃は容赦無く火を噴き、アロコペポーダを次々と撃ち落としていった。
 これで、周囲の危険に対する心配は無くなったと見て良い。
 理沙は再び、視線をダリルに向けた。
「……あったぞ」
 向かい風の中でも、ダリルの低い声はよく聞こえた。
 鮫肌の奥に隠されていた端子にケーブルを繋ぎ終えると、ダリルは慣れた手つきでノートPCのタブレットキーを素早く叩いた。作業は、ものの数秒で完了した。
 ザカコが神妙な顔つきで問いかける。
「どうですか?」
「成功だ。これではこいつはもう、超音波は使えなくなった筈だ。加えて空中での姿勢制御機能も狂わせた。飛行速度が各段に落ちるから、狙い易くなるぞ」
 自信に満ちた表情で、ダリルは小さく頷いた。後は、離脱するだけである。
 ザカコは、メガディエーターに併走する形で飛翔するルカルカに振り向いて叫んだ。
「ルカさん! いきますよ!」
「あいよ〜!」
 ルカルカの声を聞くや否や、ザカコと理沙は示し合わせてダリルを宙空に放り出し、続けざまに自分達も武器の切っ先を鮫肌から引き抜いて、メガディエーター体表からの離脱を図った。
 まずダリルは、落下途中でルカルカが抱き止めた。次いで理沙も、セレスティアの小型飛空艇に拾ってもらった。
 ところがザカコは、フォローする者が居ない。離脱してから、誰にも頼んでいなかったことを、今更ながら思い出した。
「あー……しまった」
 自由落下の法則の中で、ザカコはひとり、頭を掻いた。あと数秒もすれば、浮島地上に全身を叩きつけられるだろう。
 が、途中で彼の肉体は何かに引っ掛けられ、落下を免れた。ふと見上げると、加夜が両手を精一杯差し伸ばしてザカコの左の二の腕を必死に捉えていた。
「だ、大丈夫……ですよ!」
 空飛ぶ箒スパロウに跨り、額に脂汗を浮かべながら全力でザカコの体を吊り下げている加夜に、ザカコは申し訳無さそうに頭を下げた。

 一方、理沙、ザカコ、ダリルの離脱を見届けた知恵子も、借り物の剣の切っ先を引き抜いて宙に舞った。
 こちらは程なくしてフォルテュナの駆るヘリファルテに飛び乗ることが出来た。但し一人乗り用である為、すぐに着陸しなくてはならない。
 操縦桿を操って着陸態勢に入りつつフォルテュナは、頭上で急激に速度を落としつつあるメガディエーターの巨影に、複雑そうな感情を浮かべる視線を向けた。
「後は仕留めるだけ、か」
「ま、今日のところは彼女達に譲ろうぜ」
 フォルテュナの想いを察した知恵子は、よっこいせと自身の体を機上に押し上げながら、フォルテュナの肩にぽんと手を置いた。
 そうしてもう一度、頭上を舞う巨影に視線を戻す。
 その巨大な影の頭部の遥か先には、幾つかの影が殺到する如き勢いで迫りつつあった。

 あゆみは、もう嬉しくて堪らないといった様子で、左手をぐっと握り締めた。
「おほほほほ! 最後の最後で、美味しいところが回ってきましたでございますですのよ〜!」
「……あゆみ、気持ち悪いにゃ」
 狂喜するあゆみに胡乱げな視線を送るミディアだったが、当のあゆみは知ったこっちゃない。
「心配御無用! あゆみは愛のピンクレンズマンよ!」
「んにゃ……ミディーはこっちの心配をしてるのにゃ」
 いいながら、ミディアはおつむを指す仕草をしてみせたのだが、矢張りピンクレンズマンには聞き入れられない様子であった。
 ともあれ、超音波による衝撃波の心配が無くなった以上、真正面から突入する作戦が可能となった。
 あゆみとミディアの他に、重武装を施したヴォルケーノを駆る茜と、重たい一撃を用意している千百合、そして彼女達のサポート役に回る日奈々が同行している。
 ぶっちゃけた話、あゆみとミディアの攻撃力には誰も期待しておらず、茜の全弾一斉掃射と、千百合の口腔内への突撃に、全てを賭けているのが実情であった。
 更に茜は大魔弾タルタロスをも用意している。決まれば、ほとんど一撃必殺の破壊力があるだろう。
「よぉっし! それじゃあ、いっちゃおうか〜!」
「アイ愛サー!」
 茜の呼びかけにミディアが応じると、日奈々以外の全員が一気にメガディエーターとの距離を詰めていく。
「えっと、そのう……いってらっしゃ〜い」
 残った日奈々は、まるで他人事のように微笑みながら、手を振っていた。
 ところがそのすぐ脇を、レティシアが猛スピードで飛翔してゆき、先行する茜達の後を追っていった。
「あちきも混ぜて〜!」

 それから、数分後。
 二体目のメガディエーターはぐらりとその巨体を斜めに傾け、しばらくふらふらと宙空を彷徨った後、そのまま一気に太平洋上へと落下していった。

 霧が急激に晴れていった浮島地上では、大勢の人々が歓声をあげていた。

     * * *

 再び、天御柱学院内のイコン研究施設。
 猛は相変わらず、無機質な壁に設置された通信用ディスプレイに渋い面を向けている。傍らには、この数時間でもう何杯目になるか分からないコーヒーをトレイに乗せてやってきたルネの姿があった。
 ディスプレイには、レポート用紙を手にしている蛇々とリュナが並んで座っている姿が映し出されていた。
「レポート提出、ご苦労。教官の方にはすぐに転送しておく」
 それで用件は終わる筈であったが、何故か蛇々は通信を切らず、小難しい表情で身を乗り出してきていた。
『ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど……メガディエーターって、あれで全部なの?』
「と、いうと?」
『だってさ……』
 ディスプレイの中の蛇々は、一瞬口ごもった。あまり自分ではいいたくない内容なのであろう。
 すると、隣のリュナがついっと背を伸ばすようにして割り込んできて、蛇々がいい躊躇っている内容をずけずけと口にしてきた。
『大型機動兵器の小隊編成っていうと、確か、三機で一個小隊、なんだよね?』
「確かに、その通りだ」
 猛が表情も無く答えると、傍らのルネが息を呑んだ。あまりに恐ろしいひとことを、猛はさも当然であるかの如く、簡単に口にしているのである。
『まぁ良いや。んじゃねっ』
 そこで、通信は途切れた。
 目の前には、ブラックアウトしたディスプレイだけが広がっている。
 猛はカウンターデスク上に両肘をつき、顔の前で両手を組み合わせて呟いた。
「さて……もう一匹は、どこだ?」

     * * *

 既に誰も居なくなった空中展望塔の下部第三層内。
 床が斜めに大きく傾いた管制室では、設置されているほとんどの計器や装置の電源は落とされていた。
 ただひとつ、気象レーダーだけを除いては。
 その気象レーダーの円形ディスプレイはというと、相変わらず浮島周辺の雲の動きをトレースし続けているのだが、雲をあらわす黄色いマーカーはほぼ全て、偏西風に乗って東へと動いている。

 それら雲の帯の中からひとつだけ、軌道を大きく外れた雲があった。


『アタック・オブ・ザ・メガディエーター!』 了

担当マスターより

▼担当マスター

革酎

▼マスターコメント

 当シナリオ担当の革酎です。
 このたびは、たくさんの素敵なアクションをお送り頂きまして、まことにありがとうございました。

 それにしても、GWって良いですね。
 もう暇で暇で暇で暇で暇で暇で暇過ぎたので、筆の進みも抜群に宜しゅうございました。
 あれ? 何でしょうか、両目から水が……あぁ、何だか目の前がぼやけてきて、もうこれ以上は書けそうにありません。

 それでは皆様、ごきげんよう。

■5月11日追記
 一部、記述漏れがございましたので、修正致しました。大変ご迷惑をおかけしました。