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廃墟の子供たち

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廃墟の子供たち

リアクション




7策略



「大荒野のゴロツキ達の言うことなんか信じてどうすんの??」
 如月 和馬(きさらぎ・かずま)は、椅子に浅く腰掛け、投げ出した足を組み替えた。
「あんたたちが奴らのことを信じても、奴らはあんたを信じてない。裏切るよ」
 ジャジラッド・ボゴルが調停役として、先ほど提示してきた案を和馬は聞いている。
「寺院メンバーの引渡しするから、攻撃をやめろって、エリュシオン国立のパラ実生として帝国側に付くのは当然の考えだけどよ、本当に引き渡すと思う?」
 パイオンは冷静に話を聞いている。
「オレはおんぼろ寺院のイコンが爆破して、全員死亡…実は裏から逃がすって筋書きだと思うぜ」
「エリュシオンを敵に回すことがどんなことか分かっていればそんな策は練らない」
「そう、まあ、見てな。もうすぐ時間だ」


「隊長!廃墟から残りのシュメッターリングが飛び立ちました!」
 既に到着しているワイバーンライダーとトリケラトプスライダー、合わせて100機が戦闘準備に入る。
 うち、数十機が発動する。
「オレの言うこと、信じろよ!」
 和馬は片頬で笑う。

 イスナーンに搭乗したブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)はシュメッターリング2機を一見、追跡しているように見える。
「寺院兵士は、タシガン空峡方面へ逃走中。1機3名の搭乗を確認。現在、追っているのは、我だけだ。援軍を求める」
 無線を使っている。
「孤児の人質はいない模様。廃墟での怪我人はどうだ?」
 孤児院から無線が流れる。
「数名の孤児が軽症です。まったく匿っていたのになんて恩知らずなんでしょうぅ」
 答えているのは、メイベルのようだ。


「どう思う。本当のようでもある。女の声が震えている」
 エントマはさも面白そうに和馬を見る。


 シュメッターリングが空峡に差し掛かった。


 1機を運転していたのは、黒崎天音だ。天音は事前に打ち合わせていたポイントで、ベルフラマントの隠れ身と宮殿用飛行翼で姿を隠しシュメッターリングから脱出する。
 もう1機は、天音が乗る1機と連動して動いている。

「治すのに長けているということは、壊すのも得意な範囲ですよね」
 遡って。


 シュメッターリングの修理をしている顕仁にレイチェルが言う。
「逃亡イコンに似せたダミーを仕立て、それを破壊させることも出来る。そのぐらいの道具は持ってきているよ」
 代わりに答えたのは、フランツだ。
「ダミーは一機だけでいい。一機は僕が搭乗するよ」
 大鋸、ナガン、ローザと共に話を聞いていた天音がいう。
「ダミー機の運転がリモートコントロールできるようにしてほしい」
 泰輔は顕仁を見た。
「機工士として最善をつくすぞ、だが、あやつらは納得しているのか」
 顕仁は先ほど少しジョーンズと話を交わした。逃げることに疲れているようにも感じる
「逃げる方法は考えてるんだが」
 ナガンが言葉を切って、隠れていた菊を呼んだ。
「あたしらのやり方でトラックに乗ってもらう。納得してもらうぜ、子どもらを救う義務がやつらにはある、こんなとこで潔く死ぬのがかっこいいなんて子どもに見せんな、生き恥さらせ、ってな、生きていればいいんだってことをよぉ、どんなにみっともなくてもよぉ、それを見せんのが、ここを戦場にした奴らが子どもらにする恩返しだっ!寺院の兄ちゃん達によ、供達がどんな苦労してきたか教えてやるよ。」



 天音が飛び降りてすぐ、エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)が搭乗するセレーネ・ヘプトゥスが現れた。
 エシクは、シュメッターリングを躊躇なく爆破する。
 イコンのサブパイロットからローザマリアが飛び降りる。手には拳銃を持っている。
 爆破により半分に折れた機体に近づくローザ、慎重にパイロット席に歩み寄る。
 背後を上杉 菊(うえすぎ・きく)が援護している。射殺したのは人型の布袋だ。
 その後、ローザは退く。
 その刹那、機体は燃え上がる。
 エシクは燃え残る機体を、空峡の谷間に突き落とした。
 そのとき、落ちてゆく機体にワイバーンライダーが猛追した。機体を確かめようと、近づいたとき、水面が見える。
 一気に水中すれすれでターンするワイバーン。
 ヴァラヌスがローザマリアの前に走ってくる。
「何をした」
 ヴァラヌスは戦闘態勢のままだ。
 エシクはローザマリアを救出すべく、セレーネ・ヘプトゥスを空中に待機させる。
 菊がローザの前に立つ。
「国軍工作(教導団情報科)員たる我等が、単なるテロリストを抹殺した、それだけの些事にございましょう。其方の内政干渉は受けませぬ故」
「本当に抹殺したのか!」
「証拠はこの機体」
 ローザマリアは爆破で飛び散った機体に残る血痕を指差した。
「なぜ、遺体を捨てた」
「なぜ残す。証拠を隠滅するのも、我々の仕事だ」



「さて、では始めるか」
 エントマはパイオンを見る。
「あの死体が本物か否かは関係ありません。廃墟にいるものを全て調べれば分かるのですから。子どもは殺さないと約束しました。しかし、歯向かってくるものには容赦しません。我々も損失を出しています」
 和馬が笑い出した。
「どっちにしても総攻撃か」



8総攻撃

 御剣 渚(みつるぎ・なぎさ)は、廃墟の一番見晴らしの良い場所でスナイパーライフルを構え、敵イコンの配置などを観察し、地図にソートグラフィーでその配置を念写していた。
「これはこれで美しい景色なのだろう」
 廃墟は苔で覆われ、ところどころ鈍く光っている。かつては栄華を極めた富豪の持ち物だったのだろう、崩れで落ちて欠けたまま朽ちるレリーフはどれも精巧で、盗掘で失ったのであろう瞳や髪が無残に切り取られていても、まだ威厳を残している。
「私は殺す事しか出来ない人生だったが…」
 こうした廃墟で生きる子ども達には、きっと自分とは異なる未来があるのだろう。
 何かが動く予感がする。
 遠い地平線が微かに歪んだ。
「来た!」
 渚は、敵が動き出したらその事を精神感応で夜月 鴉(やづき・からす)に知らせ、戦闘準備に入る。
 待機していた鴉は、すぐさま情報を皆に伝達、バイクに乗ってカットラスを構え、廃墟を飛び出す。


 
 ワイバーンライダーとトリケラトプスライダー地上と空を埋め尽くす。


 突然数体のトリケラトプスライダーが爆発音と共に、飛び上がる。近くの大岩の上に吉永竜司がいる。
 竜司は乗り手を落とそうとスキルを使い、格闘している。


 援軍のなかにはイコンもいる。
 エリュシオンのヴァラヌスだ。増援のイコンはそのまま既に戦闘中のヴァラヌスの中に紛れ込んだ。とても自然に。
 このヴァラヌス、光龍は、少し他とは異なっているが、うまくカモフラージュされている。
 乗っているのは、朝霧 垂(あさぎり・しづり)夜霧 朔(よぎり・さく)だ。
 二人は自分たちが教導団だということを悟られないよう、工夫をして、砂埃舞う戦闘のなかに紛れ込んだ。
 既に、仲間にはこの作戦を知らせてある。
 垂のイコン、光龍に砲弾が飛んでくる。避ける垂。
「誰か、作戦を知らない奴がいるのか」
「いえ、故意です。私達のイコンだけ狙われないのは不自然です」
「それにしてもギリギリを狙ってくるな」
 垂は、砲弾が落ちた地点に出来た大きなクレーターを見て微かに笑う。


 夜月鴉は、精神感応で渚が攻撃するリケラトプスライダーを教えてもらい、リケラトプスライダーの脚部にアルティマ・トゥーレを叩き込み、無力化している。
「左!」
 渚の声に反応して、動く鴉。
「数が多すぎる」
 鴉は、廃墟を守る布陣に加わる。
「守りを固めるぞ!」
 リケラトプスやワイバーンから転がり落ちたライダーが、廃墟を目指して走っている。
 その群れを追いかけて、鴉は走る。



 アイオリアに搭乗したレオとカズマは、隊長機の撃破を狙っている。
 加速2とブースターを使用して、隊長機の後ろに回りこむ。しかし行く手をヴァラヌスに阻まれた。
 射線を、行動予測で回避し、先制攻撃とビームランスでヴァラヌスを薙ぎ払う。ヴァラヌスの足ものにランスが命中、そのまま光と共に爆発する。



 瓜生 コウは、マリザ・システルースと共にダーク・ヤングに搭乗し、彼らを勇気づけモロゾフの改造ビームサーベル、イングヴァルの改造ビームキャノンを命中させるために勇気の歌を歌っている。

 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は、隊長機に狙いを定めている。
 廃墟が戦いに巻き込まれないよう、竜司が爆破を仕掛けた大岩で機が通過するのを待っていた。
 オルタナティヴ13には、サビク・オルタナティヴ(さびく・おるたなてぃぶ)と共に搭乗している。
 サビクは、オルタナティヴ13を隊長機の前に飛び出した。
「話がある!」
 シリウスは隊長機に並ぶように、オルタナティヴ13を加速させる。その周りには、ヴァラヌスがいる。オルタナティヴ13は、囲まれた形だ。
「あの場所には、戦争孤児がいるんだ。戦争孤児を巻き込んだらえらい悪評がつくぜ」
 地球化兵のエントマは、血の気の多い、命知らずのサビクをからかうように返事をかえす。
「悪評で結構。まずは任務だ、やつらを引き渡せ。戻って伝えろ、残党をこっちに渡せと!」
 ヤークトヴァラヌスは、スピードを上げる。
 オルタナティヴ13は、ワイバーンライダーに囲まれている。
「やばい!」
 シリウスは、バズーカを地面に落とした。
 粉塵と爆風が巻き上がる。そのなかをオルタナティヴ13は大きく旋回して、側面からワイバーンにバズーカを撃ちまくる。

 小鳥遊 美羽はイーグリット・アサルトに乗って戦闘に参加している。
 パイロットランク20の腕前と改造を重ねた高性能イーグリット・アサルトは、ガトリングガンで、ヤークトヴァラヌスに近づく障害となっている地上のライダーを打ち砕く。
「指揮官機が倒れれば戦闘はこちらに有利です」
 ベアトリーチェはいつでも発射できるよう、ダブルビームサーベルを準備している。


 伏見 明子(ふしみ・めいこ)は、ペガサスで戦闘の地に乗り込んできたが、イコンで戦うつもりはない。孤児のいる廃墟がエリュシオンの標的となっていると知り、パラ実の明子は憤っている。
「帝国が人んちで暴れてるって聞いて来たけど、なんだか面白そうね」
 トランスヒューマン、明子はペガサスの背から地上に飛び降りる。
 明子は、イコンに向かって攻撃を放ったばかりのヴァラヌスに戦いを挑む。爆音が繰り出された操縦の一瞬の隙をついて、疾り寄る。
 宮殿用飛行翼の浮力で姿勢制御しつつロケットシューズで推進、アクセルギアを十倍ぐらいで始動し、ヴァラヌスの側面に上る。
「よし!」
 一瞬のうちに、関節や火器の冷却器に機晶爆弾セットして退避する。
「何かが変だ!」
 パイロットは自分のイコンが思うように動かないことから、異常を察知した。
「関節に何かがいる!」
 パイロットが他の機に連絡を入れたとき、
 距離取ってた明子が、パイロキネシスで焼いて起爆させる。
 燃え上がるヴァラヌス、その動きが止まる。
「脱出する!」
 パイロットが叫んだとき、前方にうっすら笑みを浮かべる長い髪の少女が見えた。
 一瞬だった。
 明子は、ギアを30倍にして、突撃していた。
「レーザーブレードだよ」
 両手で握り締めた剣が、ヴァラヌスの正面に下ろされた。
 明子はそのまま離れていく。何かが、ツ、ツと音を立てたその刹那、
 明子の背後でヴァラヌスが落下して炎上する。


 秋月 葵(あきづき・あおい)は、{ICN0000201#Night−gaunts}の肩に乗ってきた。既に戦闘は激化している。
 葵は目指す方角が、砂埃と砲弾の光で、褐色にかすんでいるのを見た。
「なんだか、すごいことになってる」
 イコンに搭乗しているのは、メインがイングリット・ローゼンベルグ(いんぐりっと・ろーぜんべるぐ)、サブがフォン・ユンツト著 『無銘祭祀書』(ゆんつとちょ・むめいさいししょ)だ。二人とも、空がみえないほど広がった前方の巨大な風景に息を呑んだ。
「これは楽しそうだ」
「悪い奴らは全部イングリットがぶっ飛ばしてやるにゃー」
 一気に戦場へと駆け込む。
 Night−gauntsの姿を見たトリケラトプスライダーが土埃を巻き上げて、やってくる。
「グリちゃん、黒子ちゃん、地上の敵は任すね〜 あとイコンの操縦席は狙っちゃダメだからね」
 肩にのっていた葵は敵を見て、空飛ぶ魔法↑↑を使って、飛び上がる。
「さあ、奴らに恐怖というものを教えてやろう」
 無銘祭祀書は、装備したばかりのビームスピアをトリケラトプスライダー目掛けて撃ち放った。
 閃光がいくつかのトリケラトプスライダーをなぎ倒す。
 しかし、倒れたトリケラトプスを乗り越えて別のトリケラトプスが煙幕の中から現れ、Night−gauntsに体当たりをする。
 ビームシールドで防ぐ無銘祭祀書。
「このバカ猫(イングリット)!しっかり狙え!狙うのは右だ!」
 無銘祭祀書が見る右側のトリケラトプスがNight−gauntsの背後に回り込もうとしていた。
「ちゃんとやってるにゃー、古本(無銘祭祀書)は黙ってるにゃ」
 二人は、うきうきと遠足にでもきたようにイコンを操っている。
「行くにゃー!!最終奥義『波羅蜜多龍滅掌』にゃー」
 空にいる葵は、ワイバーンライダーを相手にしていた。ヒプノシスで相手を眠らせる作戦だ。
「これは大変だ〜」
 飛び交う弾丸の間をぬって、群れから離れたワイバーンにヒプノシスをかける。
 眠ったヒプノシスはNight−gauntsを取り囲むトリケラトプスのいる落下する。
 砂埃と爆発音がする。
「一石二鳥??」
「葵、何するにゃー、イングリットの敵を倒すにゃー!!」
 イングリットは、ぶつぶつ言うと、再び、ビームスピアを撃った!



 孤児たちのいる廃墟を守るため、多くのイコンが応戦している。
 霧雨 透乃(きりさめ・とうの)は、戦闘で土煙のあがる荒野を無尽に移動し、ワイバーンライダーを狙っていた。
 透乃を援護するのは、緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)だ。二人は緋雨には搭乗しないで、生身で動き機動力を武器に戦っている。
 イコンに向かって突進するワイバーンライダーを狙って、天のいかづちを撃つ。
 空からの攻撃にワイバーンは動きを停止し、ライダーが地上に落ちる。ここからが透乃の出番だ。
 透乃は、舞い上がる砂埃や爆風に自らの身を隠し、行動予測で落ちたライダーのもとに一気に接近する。
 もてる手段を全て使って攻撃力を高めた拳の疾風突きがライダーの喉を裂く。
 そのまま次の標的への移動する透乃。
 頭上では、陽子がプロミネンストリックで次の狙いに向けて高速移動している。
 負けずとフレアライダーで陽子の高さまで上る透乃、急降下してイコンに攻撃をしているワイバーンライダーを標的に定める。
「殺るか殺られるか、このスリルがたまらないよね!」
 透乃は満面の笑みで、急降下、身を隠しながら、ワイバーンライダーの側面に向かう。ワイバーンが透乃に気がつき、向きをかえる。
 いつもまにか、陽子はワイバーンの真下に来ていた。急接近してワイバーンの腹や喉に直接聖杭をぶち込む陽子。
 そのまま落下するワイバーンは透乃はとどめの疾風突きを食らわす。
「それにしても…」
 一気に2機のワイバーンを射止めた二人は、高度を上げて、戦いを見る。
「あまりにもエシュリオン側の数が多いですね。そこまでするということは、追われていた鏖殺寺院の人達は余程重要だったりするのでしょうか」
「さあ、よくわかんないけど、やれるとこまで戦うよ!!」
 透乃は既に次の目標を定めていた。
「次はあれを狩るよ!」
 一気に翔け降りてゆく。




 「子ども達の避難にはまだ掛かるのか」
月詠に乗る氷室 カイ(ひむろ・かい)は、高速で移動しながら、向かってくるライダーをコロージョン・グレネードとマシンガンで牽制を行い、隙を見つけ試験型パワーブースターで接敵、ダブルビームサーベルと波羅蜜多龍滅掌で各個撃破してゆく。
 サブパイロットの雨宮 渚(あまみや・なぎさ)は、レーダーを意識し廃墟に近づいている敵から優先して攻撃している。
 二人は、ライダーが廃墟内までの侵入を意図していないのは分かっていた。
 しかし、時折、トリッキーな動きで中に入り込もうとするワイバーンもいる。
「中にいた鏖殺寺院の残党は、逃げ出したのよね」
 渚は、ワイバーンに標的をあわせる。
「こんな戦闘を引き起こして、自分だけ逃げるなんて」
「逃げたかどうか、わからないぞ、まだ、戦闘が続いてる理由があるはずだ」
「子ども達の避難が始まったようだわ」
 廃墟近くにいる月詠には、微かに動く、木々の様子が見える。
 カイは、マシンガンを地面にいるライダーに過剰に撃ち付ける。
 砂塵が高く舞い上がる。
「敵の目くらましになるといいが」