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夢は≪猫耳メイドの機晶姫≫でしょう!?

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夢は≪猫耳メイドの機晶姫≫でしょう!?

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「……いらっしゃいませ。ご案内いたします」
 客として入り口から改めて店に入ってきた和泉 絵梨奈(いずみ・えりな)ジャック・メイルホッパー(じやっく・めいるほっぱー)は、メイド服に全員に支給のピンクの猫耳と尻尾をつけたバルト・ロドリクス(ばると・ろどりくす)を目の前に、動けずにいた。
「きゃ……」
 すると、バルトが二人を抱えて席まで運ぼうとする。
「わっわっ、なんだこのごついの!?」
「失礼ですわね。バルトや九頭切丸くんのネコミミってかわいいじゃない」
 ミスティーア・シャルレント(みすてぃーあ・しゃるれんと)はジャックに魅力的にウインクし、ジャックを強引に納得させた。
「うわっ……」
「では、ごゆっくり〜」
 絵梨奈とジャックを客席に降ろすと、バルトとミスティーアはそそくさにさっていった。
 そして、絵梨奈とジャックの前にはよく知った人物、和泉 猛(いずみ・たける)ルネ・トワイライト(るね・とわいらいと)が座っていた。


「ジーナさん。私達の分まで用意していただきありがとうございました」
 睡蓮はテーブルでぐったりと突っ伏したジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)に感謝を述べた。
 それに対してジーナは怠そうにしながら答える。
「別にいいですよ。楽しかったから……でも、ちょっと疲れました。甘い物が欲しいです」
 他の生徒の協力もあり、ジーナはどうにか一日で参加した生徒達の大半にメイド服を作りあげたのだった。
「わかりました。パフェを用意しますね」
「ありがとうございます」
 ジーナに背を向け、厨房に向かおうとした睡蓮はこぢんまりした店内を見渡して思った。
「あの、結局のところ伝説のデザイナーが考えたメイド服ってなんだったんですか?」
 生徒達に用意されたメイド服は個々で皆違っていた。おそらく、型紙通りを忠実に作り上げたであろうあゆむのメイド服に至っては、こげ茶の生地に足の付け根まであるスカートと到底斬新とは思えなかった。
「ああ、それなんですけど……」
 ジーナは少し落胆気味に話した。
 伝説的デザイナーが作ったという型紙はジーナに期待していたものではなかった。
 デザイナーは何年か前にはやった英国メイドのブームにはまっていたらしく、渡された型紙はメイドの起源となるハウスキーパーの服を忠実に再現したうえで、多少アレンジしたものだった。
 ただ残念なことに、シンプルなデザインと、主人より目立つべきではないという考えから地味な色が選択され、残された内容通りに作っても現代人の趣向に合わないものだった。
「だから、製作されて市場に出回ることもなく、伝説になっていたわけですよ。……でも、よくできていることには間違いないんですけどね。動きやすく設計されているし、細かい装飾に力を入れているし、破けたりしにくいように工夫がされていますから。それに何故かスカートが大きく翻るくせに中身が全然見えないとか、不思議な所もあったりしますしね」
「はぁ、そうですか。……確かにあゆむさんが転ぶたびに、ショウさんがすごく残念そうにしてますね」
 葉月 ショウ(はづき・しょう)はあゆむが配膳の途中で転ぶたびにスライディングして覗き込むが、まったく見えないことに落胆していた。
「ところで、なんだか先ほどからあゆむさんがたびたび転んでいますが、なぜでしょう? まだどこか調子が悪いのでしょうか?」
「あぁ、それは回収した≪ご奉仕の機晶石≫がドジっ子メイドシステム搭載だという話です」
「えっ!?」
 唖然とする睡蓮の目の前であゆむはまたしても転んだ。
 そのうち腰の巾着に入れて繋いでいる≪ご奉仕の機晶石≫を落としてしまいそうで心配だった。
 睡蓮が本当にそんなメイドで騨はいいのだろうかと思っていると、ミスティーアがやってきた。
「ちょっとあなた、パートナーだけ働かせて何をさぼっているのですわ」
 店内では多くの生徒達に混ざって睡蓮のパートナー鉄 九頭切丸(くろがね・くずきりまる)が、黒い装甲の上から可愛らしい青と白のメイド服に身を包み、さらにピンクの猫耳と尻尾をつけて配膳を行っていた。
「それにあなたはわたくしと勝負しているのだから真剣にやってもらわなくては困りますわ。ま、わたくしの勝利に間違いないでしょうけど、おほほほ」
 ミスティーアは挑発的に口元に手を当てて笑っていた。
「パートナーを手伝わせるとは約束したけど、別に私自身が参加するつもりは……」
「何ですの? 今更辞めたいとか言い出すつもりですの? 九頭切丸さ〜ん、睡蓮が辞めたいとか言ってますけどぉ!」
 すると、九頭切丸が睡蓮の元までやってくると、メモ帳に言いたいことを書いた。
『それは駄目、にゃん。それでも抵抗するなら……』
 九頭切丸は龍騎士のコピスを取り出そうとする。
 身の危険を感じた睡蓮は慌てて撤回する。
「わ、わかりました、一生懸命やらしていただきます。」
 九頭切丸が仕事に戻っていく。睡蓮もため息を吐いて仕事に戻ろうとすると、様子を見守っていたジーナに呼び止められた。
「睡蓮さん。パフェ忘れないです」
「……かしこまりました。お嬢様」