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リアクション
「止めなさい、グラート」
メチェーリの声に雪だるまは消え、5歳ほどの子供が現れた。
メチェーリはすぐさま子供、グラートに駆け寄ろうとしたが、騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が先に駆け寄る。
「ね、グラートくんはどうしてこんなことしたの?」
「……走ってたら、あの人にぶつかって」
あの人、とグラートは訳が分からなそうなセレスティアーナを見た。
「びっくりしてくっついたらすごく楽しそうに遊んでる光景が見えて。僕、友だちいないから、うらやましくて」
偶然セレスの思い出の一部に触れて、普段は抑えていた寂しさがはじけてしまったのだ。
「それでみんなと遊びたかったんだ」
「ごめんなさい」
話を聞いていたメチェーリが駆け寄っていく。そして他の全員を見渡し、
「今回はご迷惑をおかけしまして、誠に申し訳ありませんでした」
「ごめんなさい」
頭を下げたメチェーリを真似して、グラートも一緒に頭を下げた。
「ということなので、あまり怒らないであげてくれませんか。本人も反省しているようですし」
樹月 刀真(きづき・とうま)が2人を庇うように言うと、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が一歩前に出て言った。
「そう気にすることはない。前にも言ったが、我が蒼空学園の生徒たちはむしろ雪が降った現状を楽しく過ごした。だろう? 生徒会長よ」
話を振られた東條 カガチ(とうじょう・かがち)は苦笑する。それが答えだ。
「ねぇどうせだからさ、みんなで遊びなおさない? 雪合戦だっ、操られて遊ぶより楽しいだろうし、かまくら作るのも楽しいよ、絶対」
詩穂が明るい声で提案をした。グラートがぴくりと反応する。
「かまくら、作ったことない」
「じゃ、作ろう! あ、でも雪合戦のやり直しが先ね」
「えっあの! これ以上ご迷惑かけるわけには」
遠慮しようとしたメチェーリに、
「メチェーリも混じって遊んだらどうだ。グラートも母親が一緒なら心強いだろう」
ハーティオンが遊びに混じるように言うと、
「あ、それいい。グラートくんもお母さんと一緒がいいよね」
「……うん」
「ほら行くよ、メチェーリさん。グラート、私も混ぜて」
「グラート様もああいってますし、行きましょうメチェーリ様」
「きゃっ郁乃さん、桃花さん」
郁乃と桃花がメチェーリを引っ張っていく。
「ふぅ。なんとか無事に治まりましたね」
「そうだな。よし、私も雪合戦に混ぜてもらうとしよう2人はどうする?」
「うぅ寒いから私はあそこで休憩しているわ」
「私もご遠慮します」
「む、分かった」
ハーティオンがその後を追いかけていき、鈿女(うずめ)は寒さに耐えかねて避難。シャーロットは苦笑した。
「休憩所やってるから、疲れたら遊びに来てねー」
布袋 佳奈子(ほてい・かなこ)が笑顔でグラートたちに呼びかけている。
「せっかくですので、全員で巨大雪だるまを作りませんか?」
何とか壊れなかった巨大雪玉を撫でながらルイ・フリード(るい・ふりーど)が言うと、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)が手を叩いて賛成し、提案した。
「じゃ、その前で記念撮影しましょ」
それはいいと皆頷き、巨大雪玉を雪まみれになりながら転がした。やや歪かもしれないが、またそれも味わい深い。
「グラートくん、最後に目をつけて」
「ここでいい?」
「うん、そこらへんかな」
最後にグラートが黒い目を貼り付け、雪だるまが完成した。
その日の蒼空学園からは、笑い声が絶えなかったという。
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