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契約者のススメ

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契約者のススメ

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「宮殿周辺で犯罪行為をするとは、まるでテロリストだな」
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)はそう呆れた。
「もう、ヨシュアに私とエースが契約した時の話をしてあげようと思ったのに」
 まだまだ空京も治安が悪いのね、と、リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)も言い、二人のパートナー、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は、
「とにかく、誘拐現場に行ってみよう。
 何か解るかもしれない。周りの植物に話を聞いてみる」
と提案した。
 助け出して、少しくらい遅れても、ヨシュアを約束の場所に送り届けたい。そう思いながら、エースはヨシュアが誘拐された現場に到着する。
 果たして、植物達は饒舌だった。
 エースの問いに、彼等は次々、特徴的な高笑いと名乗りを上げた犯人の言葉を繰り返す。
 誘拐犯が誰かは、明白だった。
「……でもそれは、既に解ってることなのよね……」
 白竜が電話をして来た時点で既に、ドクター・ハデスが犯人だということは解っていたからだ。
「引き続き、植物に奴等の行方を聞いて回ろう」
「ディテクトエビルには、反応が無いようだな」
 メシエが首を横に振った。
 空京は、人のとても多い街だ。
 沢山の感情がひしめくこの街中で、特定の悪意を探り当てることは殆ど不可能で、だが、気になるほどの悪意を見つけられないということは、犯人は、明確な悪意を以ってヨシュアを誘拐したのではないのでは、とメシエは考えた。
「……まあ、そうか」
 犯人があの男であるのなら、と、納得もしつつ。



 ヨシュアにパートナーができるかもしれない。
 そう聞いて、会いに行ってみたら、ヨシュアはいなくて、どうも誘拐されたらしいと聞いた。
「何でヨシュアを……浅はかというか、警察仕事しろって感じよね」
 リネン・エルフト(りねん・えるふと)は、そう思いつつ、放っておけないので、追跡調査を開始する。
「まあ、私の知り合いにそんなことをしてくれる人は、粛清させて貰うわ……」


 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)と、パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は、教導団から派遣された警察の施設で偶然、ヨシュア誘拐の通報を受け取る場所に居合わせた。
「は? ヨシュア? どこの闇金から金を借りすぎてヤケクソになったら、ヨシュアを誘拐なんて愚行になるわけ?」
「とにかく、目撃情報を収集しましょう」
 二人は、速やかに行動する。
 エースやリネン達と手分けをしつつ、彼等が目撃情報に事欠くことはなかった。
 ヨシュアは白昼堂々誘拐されただけではなく、犯人は高笑いと共に周囲の注目を集め、名前まで名乗って行ったというからだ。
「……」
「へこたれないでセレン。
 目撃情報が途絶えた地点から、半径五百メートルの範囲に、空家を三件検索したわ。ウイークリーマンションの空室は15件。
 ここ数日の間に契約された場所を、今調べてる」
 セレアナの報告に、セレンフィリティは少し考える。
 ウイークリーマンションは、手軽に監禁場所に使えるだろうが、ドクター・ハデスなら、そんな手順を使わず、空家を勝手に使用するような気がした。
「セレアナ、空家を優先に調べて」
「解ったわ。監禁場所に使えそうな場所の優先を出すわね」
「お願いね」
 言いながら、セレンフィリティは、既に連絡を受けていた叶白竜に折り返す。
「現在、半径五百メートルまで範囲を絞り込んでいます」
『了解、現場に向かう。情報が広がりすぎるからHCは使うな』
「了解。連絡は携帯で」
 セレアナにも聞こえるよう、セレンフィリティは指示を繰り返した。

 程なくして、ハデスのアデスが特定された。
 セレンフィリティ達が到着するのとほぼ同じ頃にニキータ達も到着し、彼等は物陰に潜んでアジトを伺う。
「一気に突入すべきだわ。犯人の拘束と、被害者の救出に担当を分けましょ」
 セレンフィリティの提案に、異論を唱える者はない。

 窓から飛び込み、陽動している隙に、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が侵入してヨシュアを救出する。
 ダリルとそう手筈を組んで、ダイヤモンドダストを発動しようとしたルカルカは、腕をとられて制止された。
 リネンだった。
「何?」
「ここは、出番を譲るべきよ」
「え?」
 リネンの視線はルカルカではなく、事態に動揺することも臆することもなく、ニキータ達と共にハデスのアジトの様子を伺っている、見知らぬ女性に注がれている。
 彼女がそうなのだと、リネンには解った。
 だから。