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契約者のススメ

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 一方。
 ニキータ・エリザロフは、ヨシュアとの待ち合わせ場所を、空京大学の食堂にした。
 紹介しようと思った友人が、この大学の研究者だからだ。
 機晶技術の研究を手掛ける{SNM9998600#ナージャ・カリーニン}は、ニキータの幼馴染だった。
「まあ、契約は相性と年齢の問題が大きいみたいだから、しようしましょうで即出来るってものじゃないけどねえ」
「それならそれで、仕方がないさ。友人が増えるのは、楽しいことだよ」
 向かいの席で、そう言ったナージャは、研究室からまっすぐ出て来たのか、いつもの普段着の上に白衣をはおった飾らない姿で、あなたらしいわねえとニキータは苦笑する。
 彼女の膝には、ニキータのパートナーの猫型ポータラカ人、三毛猫 タマ(みけねこ・たま)が、眠そうに喉を鳴らし、気持ち良さそうに撫でられていた。
 本当は、いつもタマを抱っこしている、別のパートナーを連れて来ようかなとも考えたのだが。

「何だか、緊張するね!」
 わくわくもしながら、小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が、パートナーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)に言った。
「無事に契約できたらいいな」
「そうだね」
「でも、ヨシュアさん、少し遅くないですか?」
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が、少し心配そうに言う。
「そうね。先に人に会ってから、ハルカ達と一緒に来るって言ってたけど……」
 ニキータも時計を見た。
 いつも、彼は時間より早く来るのに、どうしたのだろう。
「ハルカと?」
 美羽とコハクは顔を見合わせた。
「まさか迷子になってたり……」
「ちょっと電話してみるわね」
 ニキータは、ヨシュアの番号にかけてみたが、話し中だった。

「テレパシーがブロックされてる? 何で?」
「こっちもダメみたい」
 テレパシーでヨシュアに呼びかけてみたルカルカ・ルー(るかるか・るー)と美羽が、その反応に首を傾げる。
 その時、ニキータの携帯が鳴った。
「あら、少佐から?」
 画面に、白竜の名が表示されている。
「もしもし」
『ヨシュアが、ドクター・ハデスに誘拐された』
「えっ!?」
 白竜からの第一声に、ニキータは驚く。
『羅儀の番号は、向こうの履歴に残っているから、こちらからかけ直すのは避ける。
 そちらからかけてみてくれるか』
「了解」
『通報が入っているらしいから、俺はそちらにも連絡を取って、情報を刷り合わせる』
「では、折り返しこちらから掛け直します」
 ニキータはそう言って一旦電話を切り、何事かと自分を見ている面々を見返した。

 ヨシュアが誘拐された。
「こうしちゃいられないわ!」
 ルカルカが真っ先に飛び出して行き、携帯を片手に、ニキータと美羽も頷き合って、立ち上がる。
「私も行こう」
 ナージャもニキータに続いて行き、何となく、コハクとベアトリーチェはそれを見送った。
「……まあ、美羽さん達に任せておけば、多分大丈夫でしょう」
「むしろ、あのメンバーを相手にする誘拐犯の方が可哀想かも……」
 ベアトリーチェの言葉に、コハクもしみじみ頷く。
 という訳でヨシュアの件は美羽達に任せ、二人は、恐らく何処かで、自覚なく迷子になっているに違いないハルカを探すことにした。