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リアクション
14・猛女の恋
少し時間が遡って・・・
逃げ出した亜津子は、手探りでぶつかりながら、百合園から外に出ようとあがいていた。亜津子は悟っている。自分が静香の側にいてはいけないことを。もうすぐ自分の心が奪われていまう。そうなれば静香に何をするか。自分が死ぬことで解決できるかもしれない。しかし、その前にパートナーのウタを助けたい。なんとかマルハレータの元へ。
亜津子の足は傷つき、血が滲んでいる。体のあちこちに打ち身。
校門に向かって足を引きずりながら、走ろうとする亜津子。
大勢の生徒が亜津子の姿を見つけ、その必死な形相に声を掛けられず、遠巻きに見ている。その切ないまでの逃走に、傷だらけの亜津子に、涙を流す生徒もいる。
勿論、亜津子も気配で気が付いている。
静香がやってきた。生徒たちの制止を振り切って、正門で亜津子に追いつく静香。そっと亜津子を抱きしめる。
亜津子の体がこわばる。
「ごめんね、途中から知ってたの、だけど・・・」
亜津子、静香を押しのける。
静香、亜津子を抱きしめる。傷だらけの亜津子、そのまま足を止めて、崩れ落ちる。
「あなたが好きだよ。可愛いからじゃないよ。一生懸命だから・・魔女の契約なんか信じてないし、自分が助かりたいからじゃないよ。だたお礼がいいたいんだ、ありがとう、僕を愛してくれて」
そっと唇を寄せる静香。
必死で抵抗する亜津子。体を丸め、腕で頭を抱え、顔を地面に押し付ける。
シア・メリシャルアが思わず声を出す。
「二人に幸せになってほしいんだよ、お願いっ、カノンさん、校長の愛を受け取って」
亜津子、出ない声を振り絞って、
「だ・・め・・・・だめだ、あなたの心を偽ってはだめだ!」
美しいアルトの、歌うような声が亜津子の口から流れる。
と同時に亜津子の体が、カノンへと変貌した。
15・富の行方
そこにベアに連れられたカノンのパートナーである機晶姫ウタが到着する。彼女の機晶石は弱く、常に体の不調と戦っていた。マルハレータは、カノンに恋が成就すれば、お祝いに機晶石を上げようとそそのかしていた。
弱っているウタに歩みよるカノン。ウタを抱きかかえ「すまない・・・私は・・・」言葉につまるカノン。
それからしばらくしてマルハレータを捕まえた征伐隊の面々が到着する。
ロープで捕らえられたマルハレータは泉 椿のバイクの後部シートに縛り付けられていた。手を拘束されたマルハレータ、カノンを見つけて、
「この愚か者。全てが手に入ったのに。わざわざ自分で失うとは」
あざけるように笑う。
「俺の勝ち、俺の勝ち、ケケケケケッ」
不愉快な声が頭上に響く。極彩色のオウムの羽が、夕日に輝く。いつの間にか時刻は夕暮れを迎えている。
「あのオウム、何者?」
マグとシアがマルハレータに問いかける。図書館で調べていて、どうしても得られなかった答えを聞いている。
「弟じゃよ・・・まあ、信じても信じなくてもいいぞ」
皆の視線が頭上のオウムに向く。
いつの間にか、縄から開放されたマルハレータが空に浮かんでいた。
桐生とオリヴィエが縄をといたのだ。マルハレータと桐生の間に密約があった。もしカノンが自力で魔法を解くことができたら、「冨の約束」も叶えてくれ、すればマルハレータを助けると。
「だってねぇ、円がウタに同情しているのだよぉ・・・」
そのまま、そっと百合園に戻る桐生とオリヴィエ。
機晶石がカノンに投げられる。
「約束の冨じゃ。カノン、これはお前のものだ。つまらない、実につまらない結末じゃったの」
マリハレータはそのまま霧と消える。
「弟っ?あのオウム?」
そこに、遅れて「真実の鏡」を借り受けてきたリリ・スノーウォーカーとユリ・アンジートレイニーが現れる。
問題が解決して、カノンが元に戻ったことを喜ぶリリとユリだったが、せっかく苦労して借り受けた鏡をそうしようか、思案したとき、空を旋回するオウムの姿が眼に入る。
鏡をオウムに向けるリリとユリ。
そこにうつったものは・・・一瞬、人の姿が見えたような気がした。しかし確かめようとしたときには、鏡の中には誰もいず、オウムの姿も消えていた。
一度姿を消したオウムが戻ってきた。鏡に映らぬよう木々の隙間に身を隠している。なにやら口にくわえている。それを地上に放り投げるオウム。
「約束のプレゼント、
俺は約束を破らない。
俺の約束に期限はない、
俺の約束に、キャンセルもない。
ケッ、ケケケケケッ」
地上に落ちてきたのは、極彩色の羽で出来たビキニセット。ターラがそれを拾って、呟く。
「こんな気味のわるいもの、困ったわ」
他にも魅世瑠、レベッカのものもある。
わざわざ、名前と「オウム社特製」の刺繍が入っている。
「おっ、ラヴィンのもあるぜ!」
怜史が素っ頓狂な声を上げた。
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