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なし

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晴れろ!

リアクション公開中!

晴れろ!

リアクション

 シー・イーは亞狗理と一緒に大鋸を探しているが、どこにもいない。
「朝からいないんだヨ」
「どないしたんじゃろか?」
「ダージュ、心配ヨ」
「洞窟をみてくるヨ、もしダージュに会ったら、レッテのところにいるように言って欲しいヨ」
「わしにまかせつかあさい」
 亞狗理はどんと胸を叩く。


13・いよいよ襲撃が・・ステージにて



 サングラス姿のレン・オズワルドが運転してきたトラックをフリマ会場から少し離れた場所に止めた。
 アグゥーニンから借りた手下とカーシュ・レイノグロスが幌のついた荷台に乗っている。
「なんで、こんなところに停めるんだ。このまま乗り込もうぜ」
 飛び降りたカーシュが運転席を蹴飛ばす。
「いらつくな、まずは騒ぎを起こそう。混乱に乗じて子どもを攫う!」
 レンは手下数人に、なにやら耳打ちする。
 そのまま、走り去る手下。
「まあ、しばらくここであいつらの実力を試そうぜ」
 レンは、背もたれを倒すと、そのまま体を沈めた。
 隠れ身のスキルを使って、トラックを監視している男がいることには、気が付いていない。

 潜入した手下は3人。いずれも小柄で気弱そうなナリをしている。
 あれこれブースを覗くふりをしながら、会場内を進んでゆく。奥まで進むと、目の前にステージがあり、左側に孤児が行うブースが見えた。
 目配せする3人、隠し持ったピストルを手に少しはなれた場所で粥を売っている子どもに狙いを付ける。
 するすると歩み寄る姿に隙が生まれた。
 気弱な男の仮面がはがれている。
 会場を回りながらも警戒していたパラ実のサレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)は、偶然男の姿を見つけた。手に隠した拳銃が陽光を浴びて光っている。
「ヨーさん、始まったッス!」
 その一言が合図だった。
 パートナーのヨーフィア・イーリッシュ(よーふぃあ・いーりっし)は、先ほどの特設ステージに駆け上がるとマイクを手に叫ぶ。
「愛と正義のヒロインラヴピースショーが始まります。皆さんステージから離れてくださいっ!」
 ギョッとする手下三人の目の前で、サレンは着ていた上着を脱ぎ捨てる。
 その下には、ピンクの仮面を付けた愛と正義のヒロイン「ラヴピース」が現われた。
 あっけにとられる手下たちをステージに追いやるラヴピース。
「正義の鉄槌 食らうがいいッス!」
 ラヴピースがハイスピードで繰り出す「アクセルパンチ」を手下に食らわす。
 マイクを持ったヨーフィアが実況する。
「頑張れ!ラブピース、会場の平和を守るんだっ!」
 しかし、三対一と圧倒的に、ラヴピースが不利な展開になっている。
「みんなッ、ラヴピースに声援を送って!せえの、がんばれぇーーーー!!」
「がんばれぇ!」
 子どもたちは固唾を呑んで見守っている。
 正気を取り戻した手下たちが、銃を出したとき、警護に回っていた教導団の鷹村 真一郎と天槻 真士がステージに駆けつけてきた。
 銃を構えた真士は、相手の背後に回りこみ、銃のグリップで後頭部を一撃する。そのまま崩れ落ちる手下。
 素早く動いた真一郎も手下一人の喉下に銃を突きつける。
 残る手下は一人だ。
「がんばれぇ!ラヴピース!」
 子どもたちの声援を受けてラヴピースが、手下にパンチをする。
 降参し、両手を挙げる手下。
 いつの間にか、ステージ前方の観客の後ろには教導団のメンバーが揃い、隠し持った銃口を手下たちに向けていた。
 そのまま、三人は連行される。
「これで終わりでしょうかぁ」
 メイベルは困り果てている。本当の主催者である王がどこにいるのか、わからないのだ。


14・いよいよ襲撃が・・会場外



 手下の携帯電話に電話したレンは、皆が捕まったことを知った。
「しゃーないなぁ、戻るかぁ」
 弱気な発言をする。
「俺は、突入するぜ」
 カーシュは、ギラギラした瞳でレンを睨みつける。
「ああ、行くかぁ」
「よし!」
 運転席に飛び乗るカーシュ。
「シュッーーーー!」
 鋭い音がして、カーシュの左頬を弾丸が掠めた。
 空からの襲撃である。
 レンは、音のした空に向けて反撃の銃を撃ち、草むらに身を隠す。

 飛空挺から狙撃してきたのは、篠北 礼香(しのきた・れいか)だ。
「外したかしら」
 後部に乗るジェニス・コンジュマジャ(じぇにす・こんじゅまじゃ)は、ランスを構えている。
 礼香たちは、常に女王の加護は発動しながら、飛空挺に乗り、高い建物の陰からトラックが通るであろう場所を見回っていた。
 急発進するトラック。
 空の荷台に潜んでいた高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)レティシア・トワイニング(れてぃしあ・とわいにんぐ)がトラックから転がり落ちる。
 悠司は隠れ身を使ってトラックが通りそうな場所で待機していた。手下やカーシュが荷台を降りたすきに、中にもぐりこんでいた。
 レンが外にでたら、トラックを略奪するつもりだったが・・・。
 突然、動き出したトラックのなかで、顔を見合わせる悠司とレティシア。
 お互いに頷くと、カーブで減速したトラックから外に転がり出る。
 レティシアをかばって、道路脇に体を打ちつける悠司。
 なんとか起き上がって、眼にしたものは、銃を構えるレンの姿だった。
 対峙する二人。
 先に口を開いたのは。悠司だ。
「あー、そーいや、欲しいものがあったんだよなぁ。トラックは畑耕すのにも取れた作物持ってくのにも役に立つしねぇ。後はべつに、いらねえょ、な!」
 レティシアに同意を求める悠司。
 サングラスの奥でレンが笑ったように感じた。
「ところで、あんた何もん?」
 悠司が再びレンに視線を向けたときには、レンの姿は消えている。

 礼香は飛行艇を低空で飛ばし、ジェニスはランスでトラックを攻撃する。
 トラックの前方に機晶姫氷翠 狭霧(ひすい・さぎり)の乗るバイクが止まっている。礼香から連絡を受けて待機していたのだ。
 バイクのエンジン音が響く。
 爆音と共に、トラックめがけて突進してゆく、狭霧のバイク。トラックと正面衝突かと思ったそのとき、バイクは右に、トラックは左に避けた。
 車輪を狙って、狭霧がはらった刃はむなしく宙を切る。

 ぽつぽつ。
 雨が降ってきた。


15・洞窟



 その頃、大鋸はまだ洞窟にいた。
 ラスコーが描いた壁画を見ている。力強く素朴なラスコーの描く絵は、大鋸が追い求めていたものと似ている。
 ぽつぽつ。
 雨音がする。
 洞窟上部にあいていた穴は、ナガンらの修理で雨漏りをしなくなっている。それでも雨音は聞こえる。
 ジッとしていられず、外に出る大鋸。
 そこに立っていたのは、傷だらけの国頭 武尊(くにがみ・たける)だった。リヤカーを牽引したバイクに乗っている。
「わりぃ、間に合わなかった」
 そのまま、どさっと倒れる武尊。
 大鋸は、リアカー付のバイクと武尊を洞窟の中に運び入れる。
「すまねぇ、ちとアリに襲われてよぉ、でけーしつえーし、死ぬかと思ったぜ」
 リアカーに鍋やら食器やらが山と積まれている。
「オレよぉ、いつまでもレッテたちがここにいるのもなんだと思ってよ、孤児院の場所探してたんだよ」
「チョイ、黙れ!」
 大鋸が武尊の腕の傷に包帯を巻いている。
「フリマまでいけばよ、メイドも大勢いるし、こんな怪我すぐに治るぞぉ」
「だよな、オレもそう思ったんだけど、なーんか、君がここにいる気がしてよぉ」
 黙る大鋸。
「オレ、見つけたぜっ!孤児院の場所ッ!古い集落の跡地だけどよぉ、小さな森も水も、まあ荒れてるが畑もある、スッゲーいい場所だよ、まあ、難点はアリだけど、蟻退治は馴れてる人も多いし、何とかなんだろ!」

 雨の中、誰かが入ってくる音が聞こえる。シー・イーだ。
「ダージュ、ここにいたのカ」
「悪かったなぁ、オレが悪いッ!」
「心配したヨォ」
「ああ、オレは頭が悪いッ!オレは本当に能無しだッ!いいやつとか悪い奴とかかんけーねえ、オレは王 大鋸だッ!」
「武尊、待ってろよぉ、傷直せる奴、連れてくるぜ。メイベルとレッテにも土下座だッ!」
「おう」
 力なく答えた武尊はベッドに横になって、そのまま寝てしまった。
「よし、いくぜっ!」
 スパイクバイクで、フリマ会場を目指す大鋸。