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快晴開催! ヴァジュアラ湾の感謝祭!!

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快晴開催! ヴァジュアラ湾の感謝祭!!

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第一章 顔を合わせて見合わせて
 バチとバチが弾く音がして、ギター先行で爆音が続いた。
 ドラムを前にバチを振るは波羅蜜多実業高等学校のソルジャー、泉 椿(いずみ・つばき)である。目を見開いて血走らせながら演奏している椿に、同じく波羅蜜多実業高等学校のローグである五条 武(ごじょう・たける)が、ギターを掻き鳴らしながらに寄りて行った。
「いいぞ、椿、やれるじゃないか」
「うるさいっ、話しかけるな」
 椿が小柄な体を目一杯に使ってドラムを叩く事が、南側ステージに集まっている生徒や魚人たちを昂らせてゆく。
「いいぞいいぞ椿、君のドラムは最高だ!!」
「褒めるな、ただ叩いてるってレベルなんだ、自分で分かってる」
「へっ、ただ叩いてるだけで客がノッて来るんだ、凄ぇじゃねぇか」
 言われて椿は小さく顔を上げた。ステージに、そして自分たちに向いている瞳と出会い、そしてその熱気に背筋が震えるのを感じて、笑んだ。
「そうかぃ、そっちがその気なら」
「あぁ! つっ走るだけだ!! 行くぜ野郎共!!!」
 武のサインにより、椿が、そしてバックバンドの面々が音を加速させる。ハードロックな轟音がステージ界下へ、そしてスピーカーを通じて湾内全域へと、祭りの始まりを告げていた。
「おぉっ、アツいな、祭りっぽくなってきたぜ」
「えぇ、人魚の皆さんや魚人さんたちも元気そうで何よりです」
 蒼空学園のプリースト、今井 卓也(いまい・たくや)の言葉に、セイバーの雪ノ下 悪食丸(ゆきのした・あくじきまる)も会場内を見回した。ステージを見上げる顔、屋台前で揃いの半被を着て客引きをしている顔、生徒たちと話す顔。そのどれもが笑顔であった。
「ああ…… 何か、皆で頑張ったのが報われた気がするよな」
「えぇ、皆さん沈んだ顔をしてましたからね、元気になって良かったです」
「良いのか、卓也? 元気すぎる奴が離れて行くぞ」
「えっ? あっ、フェリックス!!」
 卓也のパートナーである吸血鬼のフェリックス・ルーメイ(ふぇりっくす・るーめい)が人魚のお二方に手を取り、握り締めていた。卓也は、弾け溢れさせている笑顔ごとフェリックスを回収した。
「フェリックス! 勝手に動くなって言っただろう!」
「そうは言ってもね、卓也。人魚のお嬢様方の美しさを見れば、声をかけない事の方がよっぽど罪だ、そう思えてならないだろう?」
「そう思えてならなくない! フェリックスは軽すぎるんだ、大人しくしててくれ」
「これ以上、男4人で顔を合わせていたら、俺はきっと大人しくなり過ぎてしまうよ。血も枯れてしまう」
「気をつけると良いぞ、卓也君。吸血鬼が大人しくなれば、覚醒した時の反動は見境が無くなるだろうからね」
「おぃおぃジョージ、同種族での暴露は無しだろう、君の血を頂く事になるよ」
「君の趣味では無かろう」
 そう言い掛けたのは悪食丸のパートナーで吸血鬼のジョージ・ダークペイン(じょーじ・だーくぺいん)である。ジョージとフェリックスは笑み合いを見せて、それぞれにパートナーの元へと顔を向けた。
 祭りは始まっている。他生徒たちも足早に各イベント会場へと向かい移動しているのだ。
 4人も足先向きを変えて歩みを始めたのだった。


 ヴァジュアラ湾内の東側では「島の主は我であるゲーム」の開始を告げる小型花火が打ち上げられていた。
 海上に浮かぶ小さな浮島が3つ。直径5メートル程の浮島にはそれぞれ魚人が一人ずつ構えていた。初回故に主候補は魚人たちが務めていた。
 百合園女学院のソルジャー、レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)はトミーガンを抱えながらに浮島の一つに向かい、海中を泳ぎ向かっていた。パートナーでウィザードのミア・マハ(みあ・まは) とは左右に分かれていたが、レキが先に海中から飛び出した。
 魚人がレキの姿を捉えるまでに、レキはトミーガンの防水装備を解くと、素早く魚人の右肩を狙い撃った。
 魚人はゴム弾を避けたが、レキは続けて魚人の肩、腹部、太ももから足元への追撃を全て右部へと集中させた。これらのどれも魚人は避けたが、それはレキが避けさせたと言うが正しかった。狙撃の瞬間に狙撃部を見つめ、瞬時の間の後に撃っていたのだ。
 右部への狙撃を避け続けたは、浮島の隅へと動かされていた。それに魚人が気づいたのは、海中から飛び出したミアの火術が背中を焼いた時であった。
「レキっ」
「分かってるって。逃がさないよ」
 浮島に着地したレキは体勢を崩した魚人の足を狙い撃ち、魚人を見事、海へと落とした。
「よしっ、上手くいった」
「そうじゃのう、よくやったぞぃ」
 陸上から手を差し伸べたレキを見上げて、ミアは唇を尖らせた。
「レキ、やはりシャツは脱ぐべきじゃ」
「え〜、でも水着はこれしか持ってないし」
「スク水しか持ってない事は武器じゃと言うに、分かっとらんのぅ」
 水から上がったミアが黒ビキニを着ている事も、ちんまりとした身長をしている事も、胸が小さいのをそのせいだと言っている事にも、レキは触れずにミアの手を握り引いた。触れれば浮島を守り抜くのと同時に、シャツを剥ぎ取られぬよう注意しなければならなくなる。
「ボクの水着、持ってきてるかも知れないからな」
「なんじゃ? 何か言ったかのぅ」
「うぅん、何にも」
 笑顔を見せながらレキは太ももに張り付いたスパッツを掴んで水分を絞り取った。
「余所見をするでない!」
 海中から上半身だけを浮かせたまま、狙いの浮島を見つめていたはずであったはずに、駈銘 輪駒(かるめ・りんく)の視線は気付けば、レキの小さく折れた腰のラインに釘付けになっておったそうな。そんな輪駒の頬をマジックワンドで押しつけたのがパートナーのアダレイド・フォウンテイン(あだれいど・ふぉうんていん)である。
「痛いよ、アダレイドさん、やめてよ〜」
「しっかりと、見るべきものを見よ!」
「うぅっ、見てるよ〜、ほら、まずは島に立っている人を落とさないといけないんだよねぇ?」
「まだその段階の話をしているのか!」
「大丈夫、彼女たちの動きは、ちゃんと見てたから。まずはこの含気薬を飲んで」
「あっ、こらっ、そんな安易に……」
 アダレイドが制止をかけた時には、輪駒は含気薬を飲み込んだ後だった。ノーム教諭のパートナーで助手のアリシア・ルードから提供された含気薬は、腹内へ納める事で水中でも息をする事が可能となるのだが。
「行くよ、アダレイド、見ててよ」
「なっ、こら、待てというに」
 アーミーショットガンを握り締めて、輪駒は潜り、泳ぎ向かった。先刻に見ていたのは水着姿ばかりに非ず、レキがトミーガンを用いて魚人を追い詰めたのを輪駒はしっかりと見ていた。だからこその自信とは言え、力強く潜り込んだ輪駒の姿は、アダレイドは小さいながらも嬉しさを感じさせていた。
「ほほう、手並み拝見といこうかな?」
 笑みを得たアダレイドも含気薬を飲んで潜っていった。