天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

デーモン氾濫!?

リアクション公開中!

デーモン氾濫!?

リアクション

 イリーナたちと連携して行動している佐野 亮司(さの・りょうじ)は光学迷彩を使い、蒼空学園生徒にも悪魔にも見つからないよう、分校の1階でホストコンピュータを探していた。慎重に教室を一つ一つ調べていく。鍵がかかっている扉はピッキングで開け、トレジャーセンスを使い、ホストPCの探索に当たっている。
 その時、携帯にイリーナからの着信が入る。
「『佐野っち』か」
「…佐野だけど。イリーナ? 2階はどうだった?」
「それらしきものはない」
「そうか。1階もみあたらねえな」
「おそらくインプが沸いてきているのは3階だ。レオンが向かっているから、私たちもすぐに後を追いかけよう」
「了解。…で、『佐野っち』ってのは俺のこと?」
「そうだ。それとも『闇商人』のほうがいいか?」
「だから闇商人いうなと。ソルの方には連絡はいれたか?」
「まだだ」
「佐野商店経理担当だからな…俺の方から連絡する。…浮かれておかしな行動してなきゃいいが」

 佐野商店経理担当、超絶ナルシストのソル・レベンクロン(そる・れべんくろん)は髪の巻き方向を手鏡でチェックしていた。
「ふう。今日の巻きはかろうじて合格といったところか。…亮司は悪魔を屋上に引きつけろって言ってたけれど、どうやら蒼空学園の生徒さん達が頑張っているのか、悪魔らしいものに出会いやしない。まあ、出会ったとしても、このボクの美しさ、神々しさにはひとたまりもないけれども。美しい姿をした悪魔がいたら、是非ボクと美しさを競い合って欲しいものだね、普通の人たちじゃボクに匹敵するような美しさを持った人なんてそうそう現れないしね〜。おや、亮司からメールだ。3階に集合? ふう、屋上からボクの美しさをみんなにみて欲しかったんだけど、まあいいか」
 足取りも軽く、ソルは階段を上がっていく。

第2章 アロケルとの対決

「くそう、インプは泉から沸いてでも出てくるのかよ」
 2階に上がり、廊下の途中まで進んでいた涼司たちだが、次から次へとインプが沸いて出てくる。
「涼司さん、一般生徒たちは僕たちが避難させますよ、だから先へ進んで下さいね」
「おお、頼んだぜ、綺人!」
 神和 綺人(かんなぎ・あやと)はインプと戦うグループとは背中合わせにしんがりをつとめ、生徒達を誘導する。
「一般生徒のみなさん、こちらです!」
 クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が禁猟区を張る。二人とは離れ、避難所で生徒達の介護に当たっているユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)が、あらかじめ綺人とクリスにパワーブレスをかけていたので、二人の攻撃力は格段に上がっていた。
「アヤ、禁猟区の反応が全て同じです…」
 クリスが生徒達をインプから守りながら、禁猟区を見つめた。
「クリス、どういうこと?」
「ユーリさんも言っていたのですが、悪魔と出現が同じ。分校で召還されたのだと思います。1階は制圧できたけれど2階ではこの数…多すぎるとは思いませんか?」
「確かに。それを涼司さんに伝えよう。インプはそれほど強くない。どんどん倒して、取り残された生徒の救出のため、避難路を確保しよう」
 綺人は涼司あてにメールを送信した。携帯と通信帯が一緒のハンドヘルドコンピュータに着信されるだろう、そう踏んでのことだ。
「アヤ、インプが!」
 携帯に気を取られていた綺人にインプが飛びかかろうとするが、とっさにリターニングダガーを投擲し、倒してしまった。
「ありがとう、クリス! とにかく、僕らは生徒たちを一人でも退避させよう」
 ニッコリとこんな時でも笑顔を忘れない綺人に、クリスは心強さを覚える。
「ええ、勿論です。みんな、こっちですよ! 慌てないでください!」


 月城 瑠奈(つきしろ・るな)は、分校の中で逃げ遅れた生徒達の探索に当たっていた。パートナーのライム・シュナイゼル(らいむ・しゅないぜる)とアキバで買い物をしている最中、アキバ分校の異変を知らされ、正義感の強い瑠奈はいてもたってもいられず、駆けつけたのだ。
「まだ生徒が残ってるかもしれない、探そう!」
「瑠奈、突っ走るなよ! まだ、インプがいるかもしれないぜ!」
「ライム、こっち! 女の子がいるわ。あなた、大丈夫? 助けに来たから大丈夫よ」
 瑠奈が腰が抜けたようになって動けない女子生徒を見つけると、ライムがその生徒を抱きあげる。
「とりあえず、この子を避難所まで連れて行こうよ」
「オッケー」
 二人はインプに見つからないよう、女生徒を守りながら、分校から抜け出す。
 何回も危険を乗り越えながら、二人は取り残された生徒がいないか、丹念に調べることを繰り返した。


 月森 刹夜(つきもり・せつや)は山葉 涼司とともに先陣を切って戦っていた。
「山葉先輩、ここは俺に露払いの役をさせて下さい!」
「頼もしいな、月森」
「それにしてもこの数のインプ…どこから沸いてきたんですか!? 先輩は何かしってるのではないのですか?」
 インプに光条兵器<蒼ノ逆月>を振るいながら、刹夜は涼司に尋ねる。
「詳しいことは、カンナ校長に聞いてくれ。俺も詳しいことは知らん」
 その瞬間、ハンドヘルドコンピュータが特殊音を立てる。
「綺人からメール着信? …三階からインプが沸いてきている、と。…そういえば、確かパソコンルームが3階にあったな。よし、3階に向かうぞ!」
「そうはさせんぞ」
 涼司が駆け出そうとしたその瞬間、しゃがれた低い声がその場に響き渡る。
 インプとは比べものにならない巨大な影が生徒達の前に立ちはだかった。立派なたてがみを持った馬にまたがり、燃えるような目を持つ真っ赤なライオンの頭を持った兵士がそこに立っている。
「お前は…」
 涼司がぐっと睨み付けると、豹頭の戦士はニヤリと、笑った。
「我が名はアロケル。ソロモン72柱の魔神そして、地獄の36の軍団を率いる大公爵なり」
 そう告げると、アロケルはすらりと大剣を抜く。
「長年の眠りを邪魔したのはお前達か…それにしてもこわっぱばかりではないか。どちらにせよ、我の敵ではない…封印を解かれた我が身。この世界を手に入れようではないか」
「うるせえ!」
 涼司はグレートソードを構える。アロケルに圧倒されていた刹夜も我に返り、斬りかかろうとするが、パートナーで剣の師匠でもあるベルセリア・シェローティア(べるせりあ・しぇろーてぃあ)が制止する。
「さがって! 刹夜! まだ無理!」
「そうだ、さがれ、月森。お前じゃまだ無理だ。それより沸いても出てくるあのインプを排除してくれ」
「解りました、先輩」
「臆病者どもめ」
 アロケルが嘲笑したその瞬間だった。