天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

デーモン氾濫!?

リアクション公開中!

デーモン氾濫!?

リアクション

「ぐあああ!」
 壁の向こうではクルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)が光条兵器、【龍閃華】をふるい終わっていた。
 クルードは光条兵器の特徴、斬りたい物と斬らない物を使用者の意思で決める事が出来る、と言う能力を利用して壁越しにサガンだけを斬り裂いたのだった。
クルードのパートナー、ユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)はパソコンルームへ向かうと、アシッドミストをかけ、サガンの動きを封じようとする。さすがのサガンにも余裕がなくなってきている。そもそも、先ほどの戦闘で精気をすっかり奪い取られてしまったのだ、弱体化もする。
 ずっとサガンを見張っていた縁からの合図とともに、遙はパソコンルームの外からスナイパーライフルで、サガンの前足を撃ち抜いた。
「ギャアア!!」
 サガンの絶叫がパソコンルームに響き渡る。
「前バラ肉ゲット…でも、既に牛ではなく、人間になっていますね…こまった。人肉鍋になってしまいます」
「わっぱども、こわっぱどもめがああ〜!!」
 サガンが最後の力を振り絞り、地獄の大総統としてのプライドをかけ戦おうとした時、その目を撃ち抜かれてしまったのだ。
「『魔弾の射手』はひとりだけじゃないですよ」
 影野 陽太(かげの・ようた)がシャープシューターを抱え直し、パートナーのエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が雷術とサンダーブラストで次々と攻撃すると、サガンのもう片方の目は強い光への対光反応のため、視界が狭くなってしまったようだ。目を押さえて、右往左往している。
「今だ」
 サラス・エクス・マシーナとシャチ・エクス・マシーナがサガンを追い詰めていく。
「たったひとつの命を捨てて、生まれ変わった機械の体、牛の悪魔を叩いて砕く! サラスがやらねば誰がやる! …師父これでいいの? ていうか、サラスまだ死んでないよ!?」
 師父こと、支倉遥にサラスが聞くが遙は焦った様子で
「機晶姫と言えども睨まれたら、オイル部分がいかれてしまうのです! 早くしなさい!」
 と叫ぶと、さすがにあせったのか、サラスは轟雷閃で、そしてそのサラスの後ろに付いたシャチは「…みんち」とぼそりと呟きながら、ちまちまと火術・雷術でサガンを攻撃する。
 サガンは一瞬、まだ無事な方の眼を開けかけたが、それも陽太の第2弾目で撃ち抜かれてしまった。
「ギャアア!」
 地獄の総統とは思えない程の激しい叫び。しかし、それは断末魔の叫びと変わることになった。
 伊達 藤次郎正宗がサガンに肉薄し至近から『ソニックブレード』を放ち、首を叩き落としたのだ。
「伊達 藤次郎正宗、サガンがネック…いや、首、討ち取ったり!」
 サガンの転がり落ちた頭部を藤次郎正宗は拾い上げると、名乗りをあげる。が、その瞬間だった。サガンの口がぱくっと開き、藤次郎正宗の腕を噛んだのだ。
「な、何事!」
 さすがの藤次郎正宗もあまりの恐ろしさにサガンの首を取り落としてしまう。
 すると首がまだ生きているかのように、ズルズルズルっと体の方へと進んでいく。
「…わっぱども、よくも我が首、落としてくれたな。このサガンの両の眼、潰れてしもうたが、お主らの顔はよっく脳裏に刻みつけた。地獄で待つとするわい。再び相まみえる時が楽しみじゃ…」
 そういうと、サガンの体はザザザザザっと急激に砂化が進み、すうっと黒い影になったかと思うと、ホストコンピュータに吸い込まれていった。
 


第4章 終焉



「折角討ち取ったのに…すき焼きの予定が台無し…」
「みんち…」
 サラスとシャチがしょんぼりしている。
「そういうけれども、地獄の総統に噛まれたらああするしかないと思うが!?」
 藤次郎正宗がいつもの調子はどこへやら、さすがに気味が悪かったようで、腕をなんども確認していた。
「英霊だから大丈夫なのでしょう。 それにしてもあのまますき焼きを実行していたら、少々イヤな気分になっていましたね。カニバリズムに通じるような…」
 遙はいたしかたない、と言う顔をしているが、他の面々は今晩のおかずに再び頭を悩ますこととなった。

「陽太、このホストコンピュータにまだサガンがいるかもしれませんわ…悪魔召還のプログラムはまだ、破壊されていないのですよね」
「ああ、確かに…環菜校長のもとへ持って行くのが最善の選択でしょうね」
「おっと、そうはさせないよ」
 桐生 円(きりゅう・まどか)がパートナーのミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)の運転する小型飛行艇に相乗りし、コンピュータルームの窓をぶちやぶって入ってくる。
「ミネルバのトレジャーセンスはさすがだね。ボクにとっての最高のお宝をこうもすんなり探し当ててくれるとは」
「悪魔! 悪魔がこのパソコンのなかにきっといるよ!」
 はしゃぐミネルバの背後から、空飛ぶ箒にのったオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)も現れる。銀色の髪にとらえどころのない感じが妙にセクシーさをかもし出していた。
「暇つぶしに来ちゃったわぁ〜悪魔って魅惑的よねぇ〜、ミステリアスなところがとっても素敵ぃ〜」
「PCにまだ悪魔がいるなら、出てこないようにさせたいね」
 それだけ言うと、円は情報攪乱をホストコンピュータにかけてしまう。
「有効かどうか、効果はまだ解らないが、かけないよりは良いだろう。そしてボクが百合学園に持って帰って、調査させてもらおう」「おっと、それは俺たち『デビルハッカーズ』の物だ」
 レオンハルトにイリーナ、佐野 亮司にソルが円たちの前に立ちはだかる。
「あなたたち、その身のこなし…やっぱり教導団の生徒のようですね…! そのホストコンピュータをどうするつもりですか」
 幸がそういうとアスクレピオスが身構える。その姿を見て、レオンハルトがにやりと笑い、言い放った。
「教導団としても悪魔の召還プログラムは是非にでも手に入れたいところだ。しかも、このホストコンピュータはまだ生きているようだ…鹵獲し、教導団技術科へ送ることにする」
「そのようなこと、蒼空学園の生徒として、科学者として許可できません」
「そうそう、そういうこと。泥棒は嘘つきの始まり…逆だったかな? どっちでもいいぜ。筋の通らない事は見逃せねえ」
 いきなりその場にトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)が乱入してくる。明らかに不良風で、風来坊、その場の空気に馴染まないトライブの出現に緊張していた雰囲気が微妙なものに変化した。
「…なんだ、この空気」
「トライブ、あなたのせいでしょう」
 千石 朱鷺(せんごく・とき)が淡々と指摘する。
「デコ校長のお願いだからな、悪魔召還プログラムはこっちに渡してもらうぜ!」
「いや、我々百合学園のもとへ」
「教導団のものとさせて貰う!」
 三すくみの争いを止めたのは、凄まじい悲鳴だった。