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【十二の星の華】狂楽の末に在る景色(第3回/全3回)

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【十二の星の華】狂楽の末に在る景色(第3回/全3回)

リアクション

「再発患者だ! 症例あり、痙攣だ」
「ここに来て、また増えてきましたね」
「こちら! 手が空きましたわ」
「いや、こっちも足りてない、誰か頼む!」
 ここトカール村では、ヴァルキリーたちの治療にあたる生徒たちの声が飛び交っていた。一度治療した患者が別の症状を訴える、いわば再発患者が堰を切ったように現れた事、そして一人が治療にかける時間が長くなってる事から、どこも人手が足りなくなっていたのだ。
 そんな光景を前にして。橘 舞(たちばな・まい)は自分の口端が下がるのを感じながらに、ブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)に小さく告げた。
「ねぇ、これ… 危なくない?」
「危ない? どうして?」
 給仕盆を手に持っている。盆にはティーセットが乗っていて、後方の給仕カーにはカップやお菓子が用意されている、のだが……。
「だって! こんなもの持っていける雰囲気じゃないような気が…」
「人気のティータイムを一緒に楽しもうって、舞が言い出したんじゃない」
「あ、いや、そうなんだけど…… ねぇ」
 飛び交う声のどれを聞いても余裕が一切に感じられない、怒声混じりが普通のようで。だからこそ、ティータイムの癒しが必要なのだと思った訳なのだ、が……。
「大丈夫! 持ち前の明るさと、優しそうな雰囲気を以てすれば、舞なら、大丈夫!」
「それって勢いでイケって事だよね! ここでそれはちょっと−−−」
「ほぉら! せっかく用意したお茶が冷める前に!」
 背中を押され、いや、心情的な意味ではなく本当に背中を押され、は意を決して腹筋に力を込めた。
「皆さぁん! お茶の準備がぁ! 出来ましたよぅ!」
 ギロリと一斉に振り向き睨まれたような。
 視線が痛い!!
 うぅぅ………… と小さくなりそうになったとき−−−
「こっちに頼む!」
「アールグレイを一杯!」
「ロールケーキはありますかっ!」
 あがる挙手に叫ばれた要望。怒声に聞こえて、すくみそうになったが、中身の理解が追いついた時、は全身の血が騒ぎ出すのを感じて。
「あぁあぁぁっ! うんっ!! 任せてっ!!」
 笑顔を溢れさせて、はカップを手に取った。
 カップやお菓子を受け取るまで、いや、受け取ってからも意識は患者から離れないでいるようで。詰まるところ、これが生徒たちの余裕の無さを表していた。
 三槍蠍の毒には、様々な症状が存在した。誰にどの症状が出るかが分からない上に、その症例が多い。それ故に、この場で解毒薬を造る事は難しく、どの症状にもキュアポイゾンやナーシングなどのスキルが有効だったために修得者による治療が主となっていた。
 有効だといっても治療には時間も体力もSPだって要する。にも関わらず再発という形で発症者は増えてさえいる、その一人一人が苦しみ悶えているとなれば、手を休める事もせずにどんどん消耗していくばかりであった。
「アリシアさんっ、どうですか?」
 負担を軽減するには、スキルに頼るのではなく解毒薬での治療が絶対に必要となる。ブリジットは解毒薬の調合を試みているアリシア・ルード(ありしあ・るーど)の手元を覗き込んだ。
 幾つかの試薬器が並んではいるが、症例に対して数が足りていないように見えた。
「再発の症例もありますから、解毒薬を完成させるには、今少しの時間が欲しいですね」
「症状の再発があるにしても、初めの症状との重複は無いんですよね? だったら、一度に全てを、ではなくて一個一個の解毒薬を造れば良いのかな…… って思ったんですけど……」
「そう! その通りです、素晴らしい分析力ですね」
「あ、いえ、そんな…」
「ですが… それを成すには、それぞれの症例における毒の成分を正確に分析する必要があります。しかし、残念ながらここでは……」
「はぃ、は〜い、はぁぁ〜い!!」
 バイクの暴音に負けない程の声が響き届いた。村へやってきたルカルカは早速にアリシアに保冷ボックスを手渡した。
「ノーム教諭の教えの元、うちのダリルが完成させたの、だから!」
 ボックスの中には多種の解毒薬が薬瓶と共に詰まっていた。
「これ…… 症例分の全てですか?」
「もちろん! だから早く!」
「えぇ、これだけあれば。…… エースさん!」
「あぁ」
 エースルカルカから、そしてアリシアから説明を受けると、ボックスを受け取り、顔を上げた。
「よし、症状別に患者は分けてある。すぐに始めよう」
「さっすが! ルカルカも手伝うよ!」
「助かるよ」
 薬の到着は、村中に活気と希望を沸き上がらせた。間もなくに到着したダリルの説明が、治療をより的確なものにした。
 安心するには早いが、それでもアリシアはヴァルキリーたちの回復の目処立った事に、僅かに頬を緩ませた。
 教諭の研究室が全壊した事を聞いて彼女が慌てふためくのは暫しの後の事だが…… 今はまぁ、苦しむヴァルキリーたちの治療に集中してもらいましょう。しまいましょうぞ。

担当マスターより

▼担当マスター

古戝 正規

▼マスターコメント

 おかえりなさいませ。ゲームマスターの古戝正規です。
 「狂楽の末に在る景色」の第3回、いかがだったでしょうか。 
 
 事件は終幕しましても。狂毒に侵されたミルザム、捕えられたパッフェル、水晶化したままの生徒やヴァルキリーも多数いるようです。
 となれば………… そうです!! 
 次回作もありますねぇ、ありますよぅ♪

 今回、ガラクの村にてパッフェルに協力された生徒は、みなクイーン・ヴァンガード本部に連行されます。
 また、【水晶化(phase-4-ii)】を付与された方は全身が水晶化しています。次回ご参加の際には、解除されない限り行動する事は出来ません。青龍鱗を用いても、ミルザムでは解除できない水晶化ですので−−−

 次回シナリオガイドは近日公開予定です。
 再びにお会いできる事を楽しみにしております。