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リアクション
「その娘を渡せば、洗脳を解いても良いんだぞ、ノーム」
「君が洗脳を解く、それが一番簡単だと思うけどねぇ」
「俺がそれをするとでも?」
「あぁ、負けを認めて、解くが良いさ」
互いに笑み合い、視線をぶつけながら。フラッドボルグは雷術を放った。
正面から、吹雪 小夜(ふぶき・さよ)が雷術を放ち…… 押されながらも相殺した。
「良い雷術だねぇ、助かったよ」
小夜が雷術を放たなければ、どうしたのだろうか。小夜は教諭の顔を見上げ見た。
「教諭、そろそろ本気を出してください」
「私かぃ? くっくっくっ、私は魔力のコントロールが上手くないからねぇ、戦えないのさ」
両手の平を宙に見せて笑う教諭が、楽しそうに言った。
「次、来るよぅ」
氷のつぶてが襲い来る。小夜は瞬時に氷術を放って防いだが、同時に飛び込んできた菅野 葉月(すがの・はづき)には反応できなかった。
振り下ろされる降閃に瞳を閉じた直後、それを受けた音が聞こえた。恐る恐る瞼を上げた小夜の前には、葉月 アクア(はづき・あくあ)が立っていた。
「大丈夫?」
「えぇ、ありがとう、です」
「この方は私が引き受けるから、小夜はユイードさんを守って」
そう言ってアクアは菅野を木刀ごと押し弾いた。彼女もショウと同じく封印解凍を唱えていた。攻撃力は上がるが、時間制限もある。
「村雨丸、いきますよ」
光条兵器の銃剣ではなく、村雨丸の峰打ちを選んだ。菅野の制服は切りはだけていて、白い肌も右胸の下部もチラと見えている。
彼女だって、操られる前にも、また知らない間に暴れさせられたに違いない。そんな彼女を、アクアは倒す、ではなく、止めようと心に決めて振り向かっていった。
「あれは…… 敵ね」
シャチ・エクス・マシーナ(しゃち・えくすましーな)は、首を伸ばして観察しながらに呟いた。
「お、おぅ、そうじゃのう、正解じゃ」
「…… 縁、バカにしてる?」
「そ、そんな事はないぞ、大した観察眼に、わらわは、ただただ感心しておるのじゃぞ」
「…… もういい…… サラス、行くわよ」
「えっ、私っ? あの男と戦うの?」
「それは俺と、殿がやるぜ」
伊達 藤五郎成実(だて・とうごろうしげざね)が、一歩を歩めば、
「後ろは任せた」
と伊達 藤次郎正宗(だて・とうじろうまさむね)も歩みを始めた。
「じゃあ、僕たちが道を開けるよ」
「よぉし、行っくよ〜」
サラスとシャチが操られた生徒たちの中に飛び込んだ。
「食事の前の運動だよっ」
サラスはアーミーショットガンで足元を狙い、撃ってゆく。それを避けて開いた道に縁を付けるようにシャチが氷術を放っていった。
「今よっ」
開いた道の先に居る男に向かって。藤次郎正宗は突進した勢いのままに雅刀で突きを放った。
フラッドボルグは、これを短刀でいなし過ごした。影に隠れるように、藤次郎正宗の背後から藤五郎成実が間髪入れずにブロードソードで突きを打ったが、これも同じくいなされてしまった。闘牛士のように、それでも決定的に違うのは、奴は一歩たりとも動いていないという事だった。
藤次郎正宗がすぐに斬りかかる。フラッドボルグはこれの全てを短刀で受け弾いたが、藤次郎正宗は間を作る事なく次撃を続けゆく。藤五郎成実も2人の打ち合いの隙を縫って突きを繰り出すのだが、フラッドボルグはこれも刀身を打ち払ってしまう。
2人の剣撃を、1本腕で。
藤次郎正宗は距離を取ってから宙に跳び、轟雷閃を打ち下ろしたが、同じく轟雷閃を打ち上げられてぶつかった。隙あり! と藤五郎成実が左腹部への突きを放ったが、これが届くよりも前に、放たれた雷術が藤五郎成実の身体を貫いた。
「藤五郎!!」
藤次郎正宗は爆炎波を−−−。
剣が動き始めた瞬間の刀身に、短刀が突き当てられていて。気付けば間合いは詰められていて。頭を掴まれたまま、藤次郎正宗は雷術を浴びせられた。
「おっと」
倒れる藤次郎正宗の姿を瞳で追ってしまった為に瞬間遅れてはいたのだが。意表をついたと思われたベアトリクスの弓撃もフラッドボルグは避け笑んだ。
「さぁ! 水晶の娘を殺すのだ!」
彼の言葉に、操られた生徒たちが動きを加速させる。
マーク・モルガン(まーく・もるがん)は光条兵器である吹き矢を手に、ノーム教諭に問いた。
「教諭、光条兵器に活用できそうな麻酔薬とか麻痺毒とか、そういった類のものは無いのですか?」
教諭はマークの光条兵器の形状を見て、笑み応えた。
「面白い発想だけど、無いね」
「そんな…… パッフェルは毒を光条兵器に織り込んでいるじゃないですか」
「なるほど、確かに」
「教諭、危険です、こちらへ」
突っ立ったままの教諭を、グレッグ・マーセラス(ぐれっぐ・まーせらす)が引いて退けた。よく見れば両の腕上、破れた白衣からは血も流れている。
「彼女のランチャーは波動の弾と、水晶化の光を放っていたねぇ。それに毒の効果がある弾もある、か…」
引き退けても立ったままに姿勢を変えぬままの教諭に、グレッグは何も言うまぃ、ヒールを唱えた。
「何か特殊な薬や毒があるんじゃないですか?」
「いや、大砲のように放った事もあったねぇ。出力を調整できるという事は、それが彼女のベース、つまり波動の弾を撃つというのがランチャーの仕様なのかな」
「えぇと、つまり?」
「波動の弾に水晶化なり毒なりを加えてるのは彼女自身の力って事だ。まぁ、どれも推測でしかないけど… あの光条兵器は確かに興味深いねぇ」
「いや、だから、」
「教諭、腕の傷は治しました。これ以上のお怪我をなさいませぬよう、もう少しお下がり下さい」
「ありがとう。でも、ここをこれ以上離れたら、彼女たちの盾になれないだろう」
教諭は自身の後方へと、瞬きに視線を向けた。小さな机の上で幾つかの機械に向かっているダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)とルカルカ・ルー(るかるか・るー)の姿があった。
「検体も資料も渡してある。2つの村を救えるかは彼女たちにかかっているんだよ」
モニターには大量の文字が高速に現れては羅列して流れてゆく。白衣に身を包んだダリルはキーボードと機械のボタンを、息つく間もなく打ち操作している。
「第4検体、解析完了。次っ」
「はぃよっ、ダリル、頑張って!」
教諭が腕を組み直して戦況を見つめ見たとき、バタバタと走り逃げる生徒の姿が見えた。
「おぉうっ、おわっ」
振り下ろされる剣を、間一髪で避けた! すぐさまに銃口が向けられている事に気付いて、
「とぉうっ」
と跳んで地に転がった、山のような教科書も転がり広がった。屋代 かげゆ(やしろ・かげゆ)は、えっさほいさと教科書を拾い集めた。
「あれっ? …………あっ、あった♪」
「危ないっ」
離れ開いた本を取ろうと飛び出したかげゆは、グレートソードが振り下ろされた事に気付かなかった。
翼の剣でこれを防ぎ弾いた姫神 司(ひめがみ・つかさ)は、かげゆに手を差しのべた経過で顔を赤らめた。
「そ、そなた、何の本をよんでおる!!」
差しのべられた手で殴られた。かげゆがページに瞳を向けると、そこには肉付きの良い男が海パン姿で腕を開いていた。
「こ、これは保健体育の教科書だにゃっ! イヤラシイ事なんて鱗の欠片も無いにゃぁ!!」
本の背表紙を見て、司はようやく納得したようだが、すぐには顔の赤みは消えないようで。
「まったく、このような場所に、あのような… わたくしが恥をかいたではないか…」
少しばかりブツブツと言っていたが、襲い来た高周波ブレードを受けて弾いた所で瞳に鋭さを蘇らせた。
「乱れている場合ではない」
司は机上と窓際に置かれた花瓶を、次々に生徒たちの輪の中へと放っていった。
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