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【十二の星の華】 Reach for the Lucent World (第2回/全3回)

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【十二の星の華】 Reach for the Lucent World (第2回/全3回)

リアクション

  ☆ ☆ ☆

 優梨子の引き起こした爆発が生徒たちを混乱に陥れたのは確かだが、もう一つ重要な事実があった。爆発のおかげで、謎の物体の大部分が露出したのだ。
 騒ぎが収まるにつれて、当然生徒たちの関心はそちらへと移る。謎の物体の正体。それは今や誰の目にも明らかだった。そう――

 巨大な飛空艇だ。山腹から飛び出していたのは飛空艇の後部、平らな部分は甲板だった。

「いたたたた……これは……やはり飛空艇ですか」
 爆発の衝撃で船縁に叩きつけられた御凪 真人(みなぎ・まこと)が、痛む体をさすりながら身を起こす。彼は、自分が今まで調査していたのが巨大飛空艇の甲板だったことを理解した。予想していた通りだ。
「山の上に船とは、まるでノアの方舟のようですね。ん、あれは?」
 真人は、甲板上に何かを発見する。近寄って周りに積もった土砂を慎重にどけていくと、一枚の扉が現れた。
「これは……入り口?」
 その様子を見て、翔が声を上げた。
「なんだって? おい、イーディ、入り口だ! 入り口が見つかったぞ!」
「お星様が見えるじゃ〜ん。物体の正体はロケットだったんじゃ〜ん」
 翔はパートナーのイーディを揺さぶるが、イーディは目を回している。
「だめか……おーい、みんな!」
 翔は甲板にいる生徒たちに声をかけると、次いで携帯を手に取り、入り口が見つかったことを仲間に知らせた。

 謎の物体が飛空艇であったこと、そしてその入り口が見つかったという情報は、すぐに生徒たちに広まった。あっという間に、入り口の前に人だかりができる。
「うーん、どうすりゃ開くんだ?」
 その最前線で、メイコ・雷動(めいこ・らいどう)は悪戦苦闘していた。入り口が見つかったはいいが、閉ざされた扉が一向に開く気配がないのだ。スイッチらしきものも見当たらない。
「仕方ない、力業でいくか」
 メイコの一言に、ラルク・クローディスが嬉々として腕を回し始めた。
「お、俺の出番か?」
「よしあんた、即席の合体技だ! あたしは得意の雷パンチをお見舞いする」
「んじゃ俺はドラゴンアーツでぶち破るぜ!」
 二人は息を合わせて拳を引く。
「「せーのっ!」」
 そこに、リフルが口を挟んだ。
「ちょっと待った」
 沙幸や美羽が言っているの聞いて真似してみたらしい。水を差されたメイコとラルクはつんのめりそうになった。
「リフル、どうした」
「やっぱ壊すのはだめかあ?」
 リフルは、二人の間に入って入念に扉を調べ始める。と、不意に扉に文字が浮かび、扉が開いた。生徒たちは驚きの声を上げる。
「『認証』と出たな」
 扉に一瞬浮かんだ文字。それは現代の言葉ではなかったが、【シャンバラ古王国語研究会】に所属しているメイコには読むことができた。
「リフルさんが近づくと扉が開きましたね。何か心当たりは?」
 ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)がリフルに尋ねる。
「あるような気がするけど……」
 リフルは小さく首を捻った。
「思い出せませんか。状況から考えて、この飛空艇がリフルさんに関係するものである可能性は高いですね。とりあえず中に入って調査してみましょう」
 ウィングが扉の向こうへと進み、残りの生徒たちも後に続く。あわよくば扉の破片を解消しようと考えていた月詠 司は、あっさり扉が開いてしまって少しがっかりしていた。
「んじゃまぁ、いっちょスープの出汁になってくるか」
 まだそんなことを行っているヘルに、ザカコがツッコむ。
「だから、ラーメンどんぶりじゃないですって」
「いいじゃねえか、そう見えたんだからよ」
 当然、リフルも飛空艇の中に入ろうとする。しかし、ここで問題が発生した。限界を迎えた彼女のお腹が鳴ったのだ。わけてもらったお菓子だけでは足りない。ちょうどそこで、上杉 菊(うえすぎ・きく)の声が聞こえてきた。
「リフル様、作業も一段落したようですし、ちょうどいい時間です。お昼にしませんか?」
 用意のいい菊は、地面が平らになっているところを見つけてシートを敷き、その上にお弁当を広げている。菊のパートナーであるローザマリアたちも食事の準備をしていた。
 弁当と飛空艇を順番に見るリフル。結論はすぐに出た。リフルが甲板から降りようとすると、後ろからマコト・闇音(まこと・やみね)が呼びかけた。
「リフル、待ってくれ。貴公のおかげで過去の記憶も少しだけもどったし、ナラカ城へ出向いて寺院の目的を聞き出す原動力になった。とても感謝している。お礼の印も兼ねてこれを」
 マコトも手作り弁当を持参していた。彼女は、リフルに弁当と水筒を渡す。
「俺は飛空艇の中を調べてみるつもりです。そこでお願いなのですが、差し支えなければ、その羅針盤を貸してもらえませんか?」
 真人は、リフルにそう頼んでみた。
 リフルは少し考えた後、
「大事に」
 真人に羅針盤を預けた。

「ふうん、ロザもあながち間違ってはいなかったというわけか」
 飛空艇を見て、メニエス・レイン(めにえす・れいん)は少しだけ驚いた。
 彼女のパートナー、ロザリアス・レミーナ(ろざりあす・れみーな)は、闇市で女王像の右手を探そうとトレジャーセンスを使用した際、全く見当違いな山の方――つまりは飛空艇のある場所――に何かを感じると主張したのだ。メニエスはそのとき、ロザリアスの言うことを信じなかった。
「へへ、おねーちゃん、あたし偉いー?」
「そうね、今日役に立ったら、少しは褒めてやるわ」
「うん、頑張るー!」
 メニエスの言葉に、ロザリアスがはりきる。
「嘘つきにはお仕置きをしないとねー」
 メニエスたちと行動を共にする鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)は、菊の方に歩いていくリフルを見てそう言った。
「フフッ、マスター怒ってる。血がたくさん見られそう……楽しみだなあ」
 氷雨の無邪気な口ぶりの裏に冷たいものを感じ、ルクス・ナイフィード(るくす・ないふぃーど)も不敵な笑みを浮かべる。氷雨は、今にも飛び出しそうな彼を制した。
「まあまあ、焦ることはないよ。ちょうど休憩し始めるみたいだし、油断したところを、ね」