天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

【十二の星の華】秘湯迷宮へようこそ

リアクション公開中!

【十二の星の華】秘湯迷宮へようこそ

リアクション

 次に左の扉を開けた。
「ヒャッハァーーーーーッ!!!!!」
 いきなり、大音量で全方位から叫び声が聞こえた。
「すごい音量だね……耳が痛くなりそうだよ」
 高村 朗(たかむら・あきら)は耳を押さえ、よろめいた。
「待って下さい! そこの足元にスイッチ――」
「えっ?」
 司が朗を掴もうとしたのだが、遅かった。
 朗の足元でカチリという音がした。
 壁から丸くて細い筒が出てきたと思ったら、一気にガスを噴射。
 そばにいた朗と司がモロにかぶってしまった。
 ついでに扉も閉まってしまったようだ。
「あ〜ぁ、何やってるのよ」
 その様子をホイップの隣で見ていたシオンが言った。
「大丈夫!?」
「平気よ。だって司だもの」
「ええっ!?」
 ホイップが心配して駆け寄ろうとするのをシオンが腕を組んでとどめた。
「ねっ、それより……エルとどこまで進んでるの?」
「えっと……」
 シオンの質問にホイップが顔を赤くする。
「もう、あ〜んな事や、こ〜んな事は済ませたのかしら?」
「はぅ……えぅ……」
 ホイップの耳元でシオンが言うと、茹でダコのように更に真っ赤になってしまった。
「……ふふっ……ヒトをからかうのってなんて愉しいのかしら」
 シオンがホイップの反応を見て、悪戯っぽく笑った。
「あぅ……」
 ホイップの顔が赤から戻らなくなっているときに、司と朗に異変が起きた。
「わひゃひゃひゃひゃっ…………」
「うっひゃっひゃっひゃっひゃ…………」
 2人からおかしな笑い声が聞こえてきたのだ。
「わ、笑いが止まらな……わひゃひゃ……」
「うっひゃっひゃ……く、くるし……」
 大声での笑い声、そして、大音量の――
「ヒャッハァーーーーーッ!!!!!」
 攻撃。
 それが暫く続いたが、笑い声が落ち着いてくると大音量の叫び声もなくなり、扉も自動的に開いたのだった。
「もう少しホイップで遊びたかったのに……残念」
 シオンはそんな事を呟いていた。


 最後、真ん中の扉を開けると、そこは巨大なカラオケルームだった。
 天井ではミラーボールが回っており、正面の壁には扉と“0”の数字が表示されているモニター。
 中央には丸いステージとカラオケマシンが設置され、周りをぐるりとふかふかのソファーが囲んでいる。
「これって歌えってことだよね」
 遠野 歌菜(とおの・かな)がワクワクしながら陣と真奈に話しかける。
「そうやろね」
「歌菜様の出番ですね」
 陣と真奈は歌菜の背中を押した。
 何気に他の人達はソファーに座っている。
「それじゃあ、アイドル歌菜、歌うよ〜!」
 歌菜は自分が普段よく歌う明るい感じの歌を入力。
 伴奏の時点から振付までバッチリだ。
 マイクを持つ姿も様になっている。
 声がよく通り、音程がはずれることもなく無事に歌が終了した。
 みんなからは拍手喝さい。
「得点は……」
 固唾をのんで見守る中、モニターの数字がくるくる回転しだす。
 ゆっくりと回転が止まり、現れた数字は“100”満点だ。
「おお〜っ!」
 聞いていた人達から感歎の声が漏れた。
 しかし、扉が開く様子は全くない。
「壊れてるのかなぁ〜?」
 歌菜は首を傾げた。
「エル様、良いところを見せるチャンスですわよ!」
 そう言うと、ロザリィヌは無理矢理ステージの上にエルを立たせた。
 自分はちゃっかりホイップの隣に座っている。
 エルはなんとか歌い終ることが出来、得点が発表される。
 “83”
 まずまずの得点ではないだろうか。
 しかし、扉はびくともしない。
「次はルーシーの番」
 ステージに上がったのはリュシエンヌ・ウェンライト(りゅしえんぬ・うぇんらいと)だ。
 探索前に歩きやすいようにと履き替えたスニーカーがよく似合っている。
 幼い外見とは裏腹にその歌声はしっとりと落ち着きのあるものだった。
 得点は“89”。
「この機械壊れてるんじゃないの?」
 得点に不服のようだ。
「温泉に連れて行ってもらえなかった恨みを込めて……」
 黒い感情をルイ・フリード(るい・ふりーど)に向けてステージに上がったのはリア・リム(りあ・りむ)だ。
「ははは、おや? リアも温泉に入りたかったんですか?」
「当然だ!!」
 ルイの言葉に噛みつく。
 歌のジャンルは演歌だった。
 もしかしたら得点は関係なく、歌のジャンルとかいう可能性も考えてのことだ。
 こぶしがまわって良い感じだ。
 歌い終るとキチンとお辞儀をした。
 “94”
 なかなかの高得点だ。
 しかし、演歌でも扉は開かない。
「ではワタシが行きましょう」
 ルイが立ち上がり、ステージへ。
 リアはそれを見て、自分の耳をふさいだ。
(もしかしたら、これで開くかもしれないしな)
 おどろおどろしい伴奏が始まり、ルイの歌かもしれないものが始まった。
 歌のタイトルは『ゴブリンよ永遠なれ』。
 なんともすごいタイトルだが、歌詞も酷かった。
 そして、ゴブリンの為に作られた歌なので、ルイはゴブリンの歌声のモノマネをしている。
 かなり酷いものだった。
 普通に歌えばうまいの……かもしれない。
 歌い終ると、周りはしんと静まり返っていた。
 怖い物見たさに近い感覚で、気が付けば全部聞いてしまっていたようだ。
「ははは、やはりこの歌は素晴らしいですね! おや? みなさんどうされました?」
 リア以外は呆けてしまっていた。
「皆さん、まだ迷宮は終わってませんよ? 仕方ありませんね……ルイ☆スマイル! さあ、元気が出ましたか?」
 誰も見てはいなかった。
 そして、得点は――
 “8”
 ああ、またダメか、と皆が思っていたところ、なんと扉が開いた。
 低い点数を叩きだせば開く仕組みだったのだ。
 高得点を出していた人達はがくりと膝を落とした。