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【十二の星の華】秘湯迷宮へようこそ

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【十二の星の華】秘湯迷宮へようこそ

リアクション

 扉が開き、皆の意識が戻ったところで一目散に駆けだした者達が居た。
 リュシエンヌ、忍びの覆面を付けたウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)、歌菜、陣、真奈だ。
「そろそろ1人でも行動出来るような罠になりますよね」
 そうウィングは呟いた。
 実際、1人で行動しようとしていたのだが、罠が突破出来無さそうなのを見て、隠れてついてきていたのだ。
 歌菜、陣、真奈はその後ろを走っていく。
 リュシエンヌが後ろを振り返った。
「そこで地団駄踏んでなさい、貧弱一般人さん達!」
 そう言うとリュシエンヌは地面に破壊工作を使用し、大きな穴を作ってしまった。
 先に行くのが困難になってしまった。
 5人が奥にある扉を開けるとそこには看板が設置され、カラフルなタイルが敷き詰められた床が現れた。
【スノードロップをアメリカデイゴがからかい、それをカロライナジャスミンが見ていた。トリカブトはその様子をヤマニシキギに話して聞かせた。毎日それの繰り返し】
 幾つかの宝箱があるのが見える。
「フフフ、ふひひ……ティセラったら、そんなところまで……」
 リュシエンヌは玄武甲を手に入れたときの事を妄想しているようだ。
 妄想が終了すると、何も考えずに青いタイルに足を乗せた。
「きゃーーーーー…………」
 途端に足元のタイルが無くなり、リュシエンヌは黒く口を開けた穴へと吸い込まれてしまった。
 リュシエンヌがいなくなると穴は自動的に閉じてしまった。
「間違えると偉いことになりそうやな」
 陣が歌菜と真奈に言うと、2人とも頷いた。


 大きな穴の手前では他の人達が立ち往生していた。
「やっと私達の出番です!」
 張りきって大きな穴の前に出てきたのは安芸宮 和輝(あきみや・かずき)だ。
 その後ろにはクレア・シルフィアミッド(くれあ・しるふぃあみっど)安芸宮 稔(あきみや・みのる)がいた。
「どれを使いますか?」
 稔が背中のリュックを降ろし、リュックの口を開けた。
 中にはロープ・縄梯子・楔とハンマー・携帯食・万能ナイフが入っていた。
 稔の手にも6フィートの棒と電気式ランタンが握られている。
「縄梯子を使うのはどうでしょう?」
 クレアがそう提案すると、和輝は縄梯子の端にロープを付けた。
 縄梯子は和輝が肩に持ち、ロープの端を稔が持つ。
「ちょっと離れていて下さいね」
 6フィートの棒を持ち助走をつける。
 穴の手前に棒で突き、体が宙に浮く。
 そのまま、穴を飛び越え着地成功。
「ロープを引きますね!」
 稔は和輝が縄梯子をしっかり地面に取りつけてから、そう叫んだ。
「良いですよーっ!」
 和輝が準備が整った旨を伝える。
 稔はクレアと一緒にロープを一気に手前に引いて行く。
 あっという間に縄梯子が橋となった。
「しかし、これだけでは危険ですね……」
 稔が呟いた。
「確かに……これをホイップに渡らせるのは不安がある」
「大丈夫だよ!?」
 黎が同意すると、ホイップは抗議したが聞きいれてはもらえなかった。
「それなら氷術を使って、縄梯子ごと凍らせて道を作ったらどうだろう」
 ケイの提案は受け入れられた。
「ゆくぞーっ!」
 カナタが叫ぶと和輝は縄梯子から離れた。
「しっかりね」
「うん!」
 ソラとソアが顔を見合わせる。
「せーの」
 黎が掛け声を掛けると一気に氷術で縄梯子が凍っていく。
 縄梯子の間が無くなって行き、両側には手すりのようなものまで出来ていく。
 氷だけでは滑るからとの配慮だ。
 橋が完成すると、次々に渡っていく。
「さ、行こうぜ!」
 ベアがそう言って、ソアとホイップを促す。
「うん!」
 2人はほぼ同時に返事をした。
「そういえば、玄武甲って……しかるところに持っていけば高く売れるんじゃないか? それでホイップの借金も全てチャラ――」
「なんてこと言うんですかーっ!」
 ベアをぽかぽか両手で叩く。
「ご主人、冗談! 冗談だって! 場を和ませる為の!」
「だからって言って良い事と悪い事がありますーっ!」
 ベアを叩くのをやめた。
 ソラやケイ、カナタから笑いが漏れると他の人達からも笑みがこぼれた。
 こうして最後の部屋へと歩きだした。


 最後の部屋に到着すると、ウィングと陣、真奈、歌菜が看板の前で首を捻っていた。
「ふ〜ん……何やら謎ときなんですのね。それでしたら情報はいくらあっても邪魔にはなりませんわよね?」
 ロザリィヌはそう言うと、ウィングを黄色いタイルに突き飛ばした。
「わぁーーーー………………」
 ウィングは穴の中へと消えて行った。
「あなたのことは夕食位までは忘れませんわ! ……さっ、これで最初が黄色でないことがわかりましたわ」
 ロザリィヌの酷い扱いに、みんな苦笑いした。
「頭脳労働は任せて下さい!」
「私もやるわよ」
 ソアとソラが買って出た。
「これ……やっぱりタイルの色の順番ですよね」
「そうね……でも……これなんでしょう? スノードロップは花の名前ですよね」
 あまり聞いたことのない名前に首を捻っている。
「ははは、そんなの歩いて行ってしまえば良いんですよ」
「ですよね。これも鍛練になりそうです!」
 ルイと和輝は歩きだしていた。
 しかも、全くの偶然なのか同じ色のタイルを踏んでいく。
 白、赤、黄色、青、緑。
 そして、2人は別々の宝箱に到着してしまった。
 どちらに玄武甲が入っているのか――
「何やら、ポチッと音がしましたが……ありましたぞ!」
「こっちも良い物発見しました」
 ルイの手にあるものは白い亀の甲羅のような胸当て。
 和輝の手にあったのは古いコインが詰まった皮袋。
 とりあえず、ルイと和輝はホイップ達の元へと戻って行った。
「これ……そう、コレ!! これが玄武甲!」
 ホイップはルイの持ってきた胸当てに食いついた。
「そうですか、ではこれはホイップさんにお渡ししますね」
「それがいいだろう」
 ルイの言葉にリアが賛同した。
「ありがとう」
 ルイがホイップに受け取ろうとした瞬間――
「ダメですーーーっ! ホイップさんの浴衣姿は素敵ですが、ってコレはあんまり関係ありませんね……ごほん、とにかく! ダメですーっ!」
 レロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)が奪いとってしまった。
 今までいたことすら気が付いていなかった人物に取られて、呆気に取られていると、地響きが聞こえ出した。
 洞窟が崩壊を始めた。
 そして、最後の罠が発動。
 全員、一気に洞窟の外へと一瞬で移動させられてしまった。


 外に出ると、穴に落ちたりしていた葉月やリュシエンヌ達が居た。
 ウィングの姿はないが、おそらく温泉に浸かりに行ってしまったのだろう。
 玄武甲を手にしているレロシャンは駆けだした。
「うきゃんっ!」
 しかし、幸とメタモーフィックが掘っていた穴に落ちてしまった。
 底には油が敷かれており、ぬるぬるしている。
「なんでこんな事をしたんですか? あなたは一体誰にその玄武甲を?」
「違います! 違います! だって……だって、ホイップさん、この玄武甲を売って借金返済に充てるのでしょう? 大事なものだから、きっと質屋ですよね? でも、ホイップさんだから悪徳業者に持って行ってしまって質流れしてしまって……その責任をホイップさんが……これじゃあ、ホイップさんの借金が増えるだけだと思ったんですーーーっ!」
 レロシャンは幸の質問を一息に言ってのけた。
「ホイップはそんな子ではありませんし、目的も違いますよ」
「へっ?」
 幸の言葉にキョトンとする。
「だから、それはホイップねぇに渡してね!」
 メタモーフィックが言うと、穴の上にいるホイップにおずおずと差し出した。
「誤解してたみたいで……ごめんなさい」
「ううん、返してくれてありがとう!」
 ホイップは玄武甲を大事そうに受け取った。