天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

学生たちの休日3

リアクション公開中!

学生たちの休日3

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「いっくぜー!」
「おっまかせー!」
 ゲームセンターで、姫宮 和希(ひめみや・かずき)ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)が、ちっちゃなギターのネックを振り上げる。
 昔懐かしいギター演奏の音ゲーであるが、空京ではまだ現役であるらしい。
 アトラス・ロックフェスティバルの興奮を思い出しながら、姫宮和希はコントローラーのレバーを弾いてギターをかき鳴らした。ゲーム機用のミニギターもどきのコントローラーなので多少勝手は違うが、出てくる音はそれなりのエレキギターの音である。
「いい感じ。おしい、もうちょっとでハイスコアだったんだぜ」
 一曲弾き終わって、ミューレリア・ラングウェイが残念そうに言った。軽快にリズムを刻んだつもりだが、まだ少し乗りが足りなかったらしい。
「よし、次は上級モードで、ツインリードに挑戦だ」
「おっまかせー」
 ミューレリア・ラングウェイが、ネコミミをピクピクさせて応える。
 さすがに弦がないので、チョーキングなどの細かいテクニックは使えないが、コントローラーの角度によってファズがかかったりと結構音色が変化する。派手なパフォーマンスで弾けば弾くほど、いろいろな音が出せるという仕組みだ。
「いぇーい!」
 
「なんだか、むこうで盛りあがってる人たちがいるわね。こちらも負けずに盛りあがりましょう」
 エアーホッケー台を取り囲んで、白波 理沙(しらなみ・りさ)が言った。少し離れたゲーム機では、姫宮和希とミューレリア・ラングウェイがジャンピングしたり、派手なパフォーマンスで乗りまくっている。
「ゲーム代ぐらいは俺が持とう。みんな思いっきり楽しんでくれ」
「太っ腹だね。でも、手加減はしないよ」
 財布片手に言う虎鶫 涼(とらつぐみ・りょう)に、クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)が言った。
「じゃあ、くじ引きでチーム分けだよね」
 ファニー・アーベント(ふぁにー・あーべんと)が、リボンを使った即席のくじを用意して言った。二つ折りにしたリボンの端をそれぞれでもって、同じリボンをつかんだ人同士がペアという物だ。
「では、第1回戦。ジィーン・ギルワルド(じぃーん・ぎるわるど)サフィ・ゼラズニイ(さふぃ・ぜらずにい)組vs白波 理沙(しらなみ・りさ)ファニー・アーベント(ふぁにー・あーべんと)組」
 虎鶫涼が、ゲームの開始を宣言した。ゲーム機なので、試合は時間制だ。五分間でたくさんゴールした方が勝ちとなる。
「えー、よりによってジィーン君と!? 代わり映えしないなあ」
「その代わり、ストレートで勝てばいいんだよ。ホッケーは初めてだが、すぐ慣れるぜ。要は、ゴールに突っ込めばいいんだろが」
 くじの結果にちょっとがっかりしているサフィ・ゼラズニイとは対照的に、ジィーン・ギルワルドはすでにやる気まんまんだった。
「敵は強そうだけど、チームワークは悪そうよね。終わったわね。私たちに勝てるかしら」(V)
「守りは任せてだもん」
 白波理沙とファニー・アーベントの方は、自信に満ちて落ち着いている。
 試合は、パワーゲームとなった。
 果敢に責めたてる白波理沙の攻撃を、ジィーン・ギルワルドが力任せに突き返す。馬鹿正直の飛んでくるパックは分かりやすいが、受けるファニー・アーベントのマレットを持つ手が痺れるほどだ。
「少しは手加減してよね」
 たまに意表を突いて直接シュートしながらファニー・アーベントが叫んだ。
 戦いは点の取り合いとなったが、真正面から打ち合う他の三人の隙を突いて、変則的なシュートで点を稼いだサフィ・ゼラズニイのおかげで、四対三と、ジィーン・ギルワルド、サフィ・ゼラズニイ組が辛勝する。
「残念。負けちゃったかー」
「でも、楽しかったよね」
 さすがに全力の戦いで、負けた白波理沙とファニー・アーベントも悔いはないというところだ。
 続く第二試合は、フィール・ルーイガー(ふぃーる・るーいがー)レアティータ・レム(れあてぃーた・れむ)組vs白波 舞(しらなみ・まい)、クライス・クリンプト組だ。
「えっと……、このティーポットの蓋……みたいなので打ち返すんですよね……」
「多分それでいいと思うんだけれど」
 マレットを持ってちょっとおどおどしているフィール・ルーイガーに、レアティータ・レムが自信なさそうに答えた。
「私も、あんまりしたことないのよ」
「大丈夫。さてと、それじゃ、勝ちに行きましょう」
 同様にあまり自信がなさそうな白波舞に対して、クライス・クリンプトは自信満々だった。
 どうも、先ほどとの戦いとは対照的に、超初心者の戦いとなりそうである。
「では、舞さん、パス行きますよ……と見せかけて、シュート!!」
 開始早々、クライス・クリンプトのフェイントシュートが炸裂する。
「きゃあ……」
「反則……違うの?」
 容赦のない先制攻撃に、フィール・ルーイガー組はすでにパニックである。
「いけますよ。一気に勝ってしまおうよね」
 勝利を確信したクライス・クリンプトが、白波舞に声をかけた。
「え、えーと……」
 そうは言われても、白波舞としては、状況がよく分かっていない。
「きゃー、また来ます……」
「来るな、来るなー!」
 再び襲い来るクライス・クリンプトのシュートに、フィール・ルーイガーとレアティータ・レムが無茶苦茶にマレットを動かした。
「えいえい!」
 カン。カン。
「ええっと……えいっ」
 スカッ。ガコン。
「へっ!?」
 白波舞が豪快に空振りした。打ち返されてきたパックが、ゴールに吸い込まれていく。
「入ったー」
 フィール・ルーイガー組がだきあって喜んだ。
「やばい、僕が頑張らないと、ゴールはがら空きかも」
 クライス・クリンプトは気を引き締めた。
 戦いは、一進一退で、それでも四対六で白波舞組が勝利した。
「いえーい……はれっ!?」
 勝利のハイタッチを白波舞としようとして、クライス・クリンプトがスカる。
「いつ負けたの?」
「ありがとうございました」
 まだルールが飲み込めていないレアティータ・レムの横で、フィール・ルーイガーがぺこりとお辞儀をした。
 次は、アンネリーゼ・シュライエント(あんねりーぜ・しゅらいえんと)、虎鶫涼組vsランディ・ガネス(らんでぃ・がねす)カイル・イシュタル(かいる・いしゅたる)組の戦いだ。
「いよいよ、真打ち登場というところだな」
「何でもかんでも打ち返せばいいんだよねー。アンネリーゼ、やっちゃうんだもん」
 最後の組とあって、待ちくたびれていたアンネリーゼ・シュライエントたちはやる気まんまんだ。
「初めてだけど、がんがん打ち返せばいいんだよな」
「ランディと似たようなものだが、俺たちが組んだんなら、勝ちはもらったぜ」
 ビギナーとはいえ、ゲームとかスポーツでは引けはとらないと、ランディ・ガネス組も自信満々だった。
 試合は、およそ守りなんか無視の総力戦となった。打ち返せなければゴールである。最大の防御は攻撃なのだ。
「七対九……、なんでこんなに点が入るんだよ」
 クライス・クリンプトが唖然とする中で決着がついた。勝者は、ランディ・ガネス組だ。
 とはいえ、三組では数が半端になるので、敗者組の中でもっとも高得点をあげたアンネリーゼ・シュライエント組が敗者復活となる。
「では、準決勝」
 白波理沙の宣言で、準決勝が始まる。
 ジィーン・ギルワルド、サフィ・ゼラズニイ組vsアンネリーゼ・シュライエント、虎鶫涼組だ。
 試合は、ジィーン・ギルワルドとアンネリーゼ・シュライエントの激しい打ち合いの下、サフィ・ゼラズニイと虎鶫涼が必死に守るという構図になった。
 両者一歩も譲らず、四対四の同点で時間が迫った。
 激しい打ち合いのスピードで、めまぐるしくパックがいききする。それはもう、テンポよくリズムを刻んでいるという感じだ。
「あまりむきになるのもなんですから、ゲームは楽しみましょう」
 最後の最後で、虎鶫涼がフッと肩の力を抜いた。突然、パックのスピードが落ちる。
「あっ!」
 ジィーン・ギルワルドがスカった。予想していなかった出来事に、サフィ・ゼラズニイも追従できない。
 ゴール。
 四対五で、アンネリーゼ・シュライエント組が辛勝した。
「やった、決勝なんだもん!」
 得意満面で、アンネリーゼ・シュライエントが叫んだ。
 準決勝第二試合は、白波舞、クライス・クリンプト組vsランディ・ガネス、カイル・イシュタル組の戦いだ。
 これまた初心者同士の戦いとなったが、白波舞以外は、敵を倒す気まんまんだった。
 試合は、ランディ・ガネスとカイル・イシュタルの猛攻が続いた。完全に気圧された白波舞とクライス・クリンプトはお互いのマレットをぴったりと合わせたまま、防戦一方である。
 ところが、あまりにもランディ・ガネスたちのシュートがもの凄いため、弾かれたリターンも通常のシュートなみのスピードで返ってくる。なまじ攻撃に特化した分、守りは甘かった。ゴールできないと、自分の方のゴールにパックが吸い込まれていくのだ。
「ランディ、少しは守れ!」
「そういうのは、あんたに任せるぜ」
 言い合いつつも、ランディ・ガネスたちは攻撃の手を緩めなかった。
 その失点のほとんどが自殺点であったような気もするが、結果は七対八で、ランディ・ガネス組の辛勝であった。
「決勝はリターンマッチか」
「受けてたとうじゃねえか」
 奇しくも準決勝と同じ組み合わせになって、両者が対峙した。
 さすがに、ここまで来ると四人ともエアーホッケーに慣れてきたようである。ちゃんと攻撃と防御を使い分けられるようになってきている。
「クッション使え、クッション」
「いったん止めて、止めて」
「いいブロックです」
「どっちも負けないでー」
 一進一退でゲームが進んでいく。
 時間切れでエアーが止まる直前、ランディ・ガネスの力押しの一撃がゴールに突き刺さった。
 試合終了。
 三対四。僅差で、ランディ・ガネスとカイル・イシュタルの優勝となった。
「やった、一番だぜ!!」
 優勝した二人が、息もぴったりに持っていたマレットを打ち合わせて、カチンと小気味いい音をたてた。
「証拠写真……じゃなかった、記念写真撮ろうぜ!」
 嬉しくてたまらないランディ・ガネスの提案で、一同はプリクラを撮ることとなった。
「あそこあそこ」
 虎鶫涼にだっこされた、レアティータ・レムがプリクラコーナーを指して言った。
 いくつかあるブースの一つでは、クレーンゲームで手に入れた特大ジェイダス人形をかかえたミューレリア・ラングウェイが姫宮和希とくっついてポーズをとっている。
 虎鶫涼は試合のペアごとに別れると、記念のプリクラを撮って楽しそうに交換していった。