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ミッドナイトシャンバラ放送中

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こんばんは、シャレさん!
 地球在住のダンディ(笑)な魔法使いディーグ・ウェンボリスでっす♪
 新コーナー募集中ということなのですが、お悩み相談コーナーなんてどうですか!?
 ちなみに私の悩みは、12歳になる娘がいまだにぺったんこなことです(爆)
 いや、君はこの番組の何を聞いているんですか、ディーグ・ウェンボリスさん。お悩み相談コーナーなら、もうさんざんやっているじゃないですか。もう、しょうがないなあ。一児の父なら、もう少ししっかりしてくれないとぉ。字だって、凄く汚くて、読むのに苦労しましたよぉ」
 
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「ぶっ!! なんですって!」
 思わず飲んでいたお茶を噴き出し、さらに勢い余ってお気に入りの睡蓮の花型のコーヒーカップを割りそうになって、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)はひたすら焦った。
 さすがに、彼女の父親であるディーグ・ウェンボリスがこの番組にハガキを出すはずがない。だとすれば、犯人と考えられるのはただ一人だ。文字が汚いということからも、ソア・ウェンボリスの父親ではなくて雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)だということが分かる。
「違いありません。絶対にこれはベアの悪戯です」
 確信をもって、ソア・ウェンボリスは言った。
「ベアったら。後でみっちりお仕置きです。それとは別に、どうしてあげましょうか……。そうです!」
 何か思いついて、ソア・ウェンボリスはレターセットを机の引き出しから取り出した。
 目には目を、手紙には手紙をということで、自分も雪国ベアをネタにして投稿しようと思いたったのだ。
「そういえば、七不思議に、『戦慄、ゆる族の墓場』という物があったはずですね。よーし、ゆる族の墓場に、脱ぎ捨てられたシロクマの着ぐるみが朽ち果てたまま転がっていることにしましょう。誰かが近づくと、中身のないその着ぐるみが、『クマー』と叫びながら後を追いかけてくるんです。『中に入るクマー、中に入るクマー』と言いながら追いかけてくる……。うー、これは凄く怖いです。そして、誰かを取り殺すと、そのシロクマのぬいぐるみはさもそしらぬ顔をして、みんなの中で生活を始めると。よおし、これで投稿しちゃいますよ。見ていなさい、いや、聞いていなさい、ベア!」
 ソア・ウェンボリスはペンを取ると、せっせと手紙を書いていった。
 
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「さて、では、次のコーナー……。えっ、もう二枚ハガキがあるから読めって? はいはい。では、もう少し新コーナーコーナーいってみましょー」
 次のコーナーに移動しようとしたシャレード・ムーンは、インカムで『ハガキを読んでくだサーイ』と言ってきたアーサー・レイスの声に、あらためてデスクの上を見た。いつの間にか、用意してなかったはずのハガキがおいてある。
「ペンネーム、カレー・ザ・ノーブルさん。
 この猛暑そして歴史的難所を乗り切る為には根本である食を見つめる必要がありマース。
 そしてその食とはカレー!
 今大ブーム!
 カレーコーナーを設ける事を提案しマース
 DJやゲストの方があらゆるカレーに舌鼓を打つ、これは人気コーナーの予感!
 ゲストにはカレー大好き娘リン・ダージさんやカレーの本場のインド人空大学長をゲストにお呼びするのも良いかもしれませんネー。
 今回はイルミンカレー学科オススメの逸品を差し入れて置きました。
 ご賞味アレー!
 ええと、カレーですか……。
 ラジオでどうやってカレーを使うのでしょう。
 えっ、もう一枚カレーのおハガキがあるんですか?
 こちらは、ペンネーム、あなたの子羊さんからですね。
 カレーに付いて思う節があり投稿致します。
 カレーなる料理は勿論ご存知でしょう。歴史も深い料理ですが発祥地のインドではその様な呼称では扱われておらず、そう呼称するのは二次的に発展したUK及び日本ではと思います。
 昨今イルミンスールにて更に三次発展させ様とする輩がおります。
 ですがあれは危険です。
 皆様パラミタで食すカレーには充分の注意を
 主のご加護があらん事を アーメン
 これは、どちらかというと反対意見ですね。
 そうですねえ。我が家のカレーなんてコーナーは面白そうですけれど、パラミタのカレーは危険な香りがするのも事実ですから、へたすると謎料理のレシピばっかり集まっちゃいそうでもありますね。カレー生クリームのショートケーキなんか、絶対食べたらお腹壊しそうでしたもの」
 普通に放送を続けるシャレード・ムーンとは別な所で、カレーに関する攻防が繰り広げられていた。
「真宵、なぜ我輩の邪魔をするのデース!!」
 カレーライスの載った皿を持ってスタジオ内に乱入しようとしているアーサー・レイスを、日堂真宵と大谷文美が、必死に食い止めていた。扉の前には影野陽太が立ちはだかって死守している。
「あなたの魂胆なんかお見通しよ。今、シャレさんが謎カレーで死んだら番組はおしまい。バイト代も入らなくなるわ。みんな、絶対にアーサーを中に入れちゃだめよ」
「分かりましたですぅ」
 大谷文美が、必死にアーサー・レイスの腰にしがみついて叫んだ。
「ねー、わしの出番はまだかのう?」
 混乱に拍車をかけるように、そこへビュリ・ピュリティアが現れる。
「いい所へ。ビュリさん、アーサーを凍らせられます?」
「簡単じゃが……」
 どうしてそんなことをするのじゃと、ビュリ・ピュリティアが聞き返す。
「ノー!!」
「やっちゃってください!」
「分かったのじゃ。この天才魔法使いビュリ様に任せておくのじゃ。ていっ!!」
「たとえカレーがアイスカレーになっても、我輩の熱き魂は……」
 最後まで言えずに、アーサー・レイスがしがみついていた大谷文美ごとかちんこちんに凍りつく。
「ありがとうございました。ビュリさんは、もう少し待っていてくださいね。すぐにお呼びしますから。さあ、これを運び出しちゃいましょ」
 日堂真宵は、影野陽太に合図すると、二人でアーサー・レイスたちをサブコンから運び出していった。
『何かあったの?』
 おかしいと思ったシャレード・ムーンが、瞬間カフを下げて問いただしてくる。
「大丈夫、問題はすでにクリアいたしました。番組をお続けください。すぐにCM入りますでございます」
 電子兵機レコルダーは、インカムでそう回答した。
 
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「ねえ、遊ぼーよね。遊ぼー」
 水神 誠(みなかみ・まこと)が、課題をしながら苦笑混じりに楽しくラジオを聞いていた水神 樹(みなかみ・いつき)の腕を引っぱって言った。
「だめですよ。これから、楽しみにしていた七不思議のコーナーなんですから。だいたい、もう夜中ですよ、自分の部屋に帰ってください」
 やんわりと、水神樹が弟を諭す。
「いいじゃないかあ。やっと邪魔が入らない姉弟二人だけの時間になったんだよ」
「ですから、ちゃんと節度を持って……」
「課題なんか、いつだってできるじゃないかあ。なんなら、後で手伝ってあげるからさあ」
 そう言うと、水神誠がいきなりラジオのスイッチを切った。
「こら!」
 さすがに怒った水神樹が、ゴツンと弱い力で弟の頭に一発入れる。
「やったなー」
 そう言うと、水神誠はノートとラジオをつかんで逃げだした。
「やーい、ここまでおいで」
「ううっ、かまって欲しいのはよく分かるけれど、時と場所を考えない奴は断固お仕置きだ! 待ちなさい!」
 ちょうどそのとき、メールの着信音が鳴る。
「こんなときに誰?」
 水神樹は、素早くメールを確認しながら走った。
『野原でカレー以外を一緒に食べよう 弥十郎』
「今はそれどころじゃないわよ」
 メールを一瞥しただけで、水神樹は水神誠の後を追いかけていった。
 
七不思議のコーナー
 
 
『錦鯉、それは水中の宝石。錦鯉、それは貴族のたしなみ。ヴァイシャリー湖特産、錦鯉の販売なら、ヴァイシャリー錦鯉協会まで』
「七不思議のコーナー♪
 このコーナーは、各学校に伝わる七不思議を報告してもらおうというものです。今までの投稿ですでに七つなんて軽く突破しちゃっていますが、あまり気にしてはいけません。気にしないでね。
 さて、では、本日一つ目の不思議いってみましょー。
 ペンネーム、ナナ不思議さんから。
 シャレさん、スタッフの皆さん、ラジオお疲れ様です。
 この前、学校を移動していたら…大ババ様、中ババ様、小ババ様、孫ババ様と思わしき行列集団を私見たんです。
 気になったので、跡をつけてみたら…そこには恐ろしい光景が…」
 えーっと、メールで今日投稿された物みたいなんですが、画像が添付されてました。プリントアウトしてみたんですが、手ぶれが凄いですねえ。今どきの携帯は手ぶれ防止機能があるはずなんですけど、よほど焦ったか震えていたんでしょうね。
 ちょっと、画像がはっきりしていないので、これが本当に大中小のババ様たちであるかはちょっと……。
 でも、一応ちゃんと数えてみましょうか。一つ、二つ、三つ……七つ。これって、変な影が七人いますね。
 はっ、もしかしたら、これは七人みさきなのでしょうか。
 だとしたら、ついていっちゃだめですよ。仲間にされちゃいますから。それとも、まさかもう仲間にされちゃったのかしら。心配なので、ちゃんと生存報告してくださいね」