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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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2-03 わるきゅーれの陰謀

「やがて、蜂起勢力がこちらに到着するでしょう。ケーニッヒとイレブンには、落ち合う場所へ移動してもらうとしようか。
 菅野殿は、どうされます。これはもともと教導団の戦いであるが……」
「僕も、もちろん、戦いますよ。イレブンさんたちと共に!」
 ハインリヒは、頷いた。菅野も、もう決意を決めている。
「では、イレブンたちのこと、頼みます。
 わたくしはその前に……」
「ハインリヒ?」「ハインリヒさん……?」
 ケーニッヒは無言で頷く。「うむ。やつなら大丈夫。行こうぜ、イレブン。菅野」
「わたくしは、ここでやっておくことがありましてな。
 ヴァリア。ケーニッヒらを外れにある地下の入り口まで送ってくれ」
「ええ……」
 ヴァリアも、残るハインリヒをさすがに少し気遣うふうである。
「アクィラもいるし、大丈夫だ」
「俺の同志たちの内、選りすぐりの精鋭と言えるやつを数人残していくよ」ケーニッヒが言う。「さあ貴様ら、見つからないよう隠れていて、ハインリヒの悲鳴が聞こえたらすかさず飛び出すんだな」
「ハインリヒ。互いに武運を」
「ああ。こっちも後で戦場に加わるさ。イレブン、今度こそ教祖を」
「うむ……討つ!」
 クリストバル ヴァリア(くりすとばる・う゛ぁりあ)は、前回本営から届けられた軍資金にこれまでのキャバクラの売り上げをプラスし、武器を買い集めておいたのであった。それを、装備の手薄な民衆の集まりである蜂起勢力の兵らに支給するために。
 
 そして黒羊郷の外れで、移動してきた蜂起勢力の面々と、今回の戦いの指揮者と言えるわるきゅーれにいた者らが顔を合わせる。
「イ、イレブン!」
「デイセラのお留さん……!」
 イレブンとデイセラもここに再会することとなった。しかし、今は涙を見せてはいられない。それは、戦いの終わってのちに。イレブンはただ静かに頷き、デイセラはニッと笑みを見せるにとどめた。
「さて、皆。我はこの度の戦の指揮を執る一人ケーニッヒ・ファウストだ。
 ここに武器がある! 各々に見合った武器を好きに取れぃ!」
 アンゲロ・ザルーガ(あんげろ・ざるーが)は各勢力をまとめる主だった者に、アクィラが作成した地下通路の地図を配った。彼らを集め、各自の攻撃目標とそこに至る攻撃ルートをしっかりと把握させておく必要がある。
「おうファウスト。こんなとこで大体いいんじゃねぇか」
「ううむ。全員、武器を持ったな?!
 おお、貴様は……そこで何をしている?」
 ケーニッヒの傍らに、武器も持たずにそわそわとしている。「あの……」蜂起というには似合わない可愛い女の子であった。
「……何だ。間違って付いてきたのかな。
 怪我をするぞ。この地から離れるといい」
「いえ、私これでもご当地十二星華なので……」
「!」「えっ。私たち以外にも、まだ……?」
 乙女座のデイセラ、アンジェリカらも驚いた。同じ蜂起勢力の中に……?
 天津 麻衣(あまつ・まい)と言った。
「亜衣のこと、知らないかな?」
「何。亜衣……もしや。いや、ともかく今はそんなことを言っている場合ではない。
 我と来るといいであろう。貴様もご当地十二星華であれば、十分に戦える筈」
「珍しいなあ……ファウストがナンパなんて」
「な、何を言っている、ザルーガ!」
 麻衣はというと、ハンサムな青年系男子がいいなぁ……とか思っているのであった。が、この瞬間彼女とケーニッヒとのパートナー契約が成されたことになったとはまだその時気付いていなかった。
 


 
 さて、ふたご座十二星華である麻衣の双子の姉、天津 亜衣(あまつ・あい)はハインリヒと共にキャバクラ・わるきゅーれに残っていた。今では親しくなった他のキャバ嬢たちと、これから訪れる客に最後のサービスをしなければならない。とっておきの……。
 キャバクラ嬢の中には、ケーニッヒの残していった部下が扮しているかなり無理のあるごつい女子たちもいるが、あまり気にしてはいけない。
 ハインリヒの開いた慰労会に、キャバクラの常連となっていた黒羊側の幹部が続々集まってくる。気合を入れてもてなすキャバクラ嬢たち。亜衣は思う。「これで、この子たちと一緒に働くのも最後になるのか……。何だか、さみしいな?」思い出が甦る。「それに、このキャバクラでのお仕事っていうのも……」
 今、亜衣に、これまで散々お触りやセクハラ行為を繰り返されてきた思い出が……
「天神将来!お覚悟ッ!」
「あ、亜衣ッ、まだだ、まだ早い……!」
「な、何どうしたアイちゃん」「可愛いねぇ。こういうアイちゃんにも萌えるよ」とかいう幹部らにホーリーメイスで容赦なく殴りかかった。
「く、完全に、ぐでんぐでんに酔い潰してから、幹部どもを一網打尽にする作戦だったのだが、致し方あるまい。
 ええい、出でよ! ケーニッヒ嬢軍団!」
 どぉりゃあああッッッ!!!!
 フンガァァァッ!!!!
 ケーニッヒやザルーガに似たキャバ嬢たちが、天井や床下からわき出てきて、幹部たちに一斉に襲いかかった。
「きゃぁぁ」「いやぁぁぁ」
 泣き叫ぶ幹部ら。お店のキャバ嬢たちもお祭騒ぎだと参戦し、ついに幹部たちをぼこぼこのぐるぐる巻きにしてしまった。
「はぁ、はぁ……おらぁぁ! 天神将来ィィ!」
「亜衣、亜衣! もういい!」
「おのれ、キャバクラ経営者〜〜……! こ、このような無礼講は許しておらんぞぉぉ。
 寺院に言いつけてこんなキャバクラ潰してやるぞ!」
 ハインリヒは、ふふ、と笑った。
「お、おい……聞いているのか!」
「さて、男の夢を追求する時間は一旦終わりだ。現実に戻るとしようか」
 ハインリヒは、経営者然とした髭をばりりと取り去った。
「な、何。貴様? 一体……」
「あなた方も正体を現したことです。最後に、わたくしの正体も明かしてさしあげましょう」
「さ、最後にだと?」
「ええ。あなた方はもう、寺院に帰ることはできません。残念ながら……」
「ぶるぶる、ぶるぶる……お助け……」
「ふふふ」
 ハインリヒはこうして、幹部らに偽の命令書を書かせた。
「さあ、亜衣。城門へ向かおうか?」
「そうね……」
 散々お触りされた幹部らを叩きのめした後は、散々働かされたハインリヒにも少しお仕置きを……とも思った亜衣であったが、今日のハインリヒは少しカッコよく見えた。かもしれない。
「おおー!」
 キャバクラ嬢たちも、武器を取る。