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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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2-02 やってきたマラ太郎、黒羊郷地下の地図、おにぎり
 
 さて、ここでまた少し黒羊郷の方に場面を戻そう。キャバクラ・わるきゅーれ。
「イレブンさん?」
「おい。イレブンの様子がおかしいぞ」
「……マーラ……マーラ……」
 ミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)が小首を傾げ、菅野に問う。「葉月。イレブンは一体どうしたの? マーラって何」
「マ、……さ、さあ何でしょう。
 あの、イレブンさん……?」
 菅野が、イレブンをゆさぶる。
「……マーラ……マ、はっっ。
 いかん、頭から離れないぞ」
 前回、悟りを開こうとするイレブンの心に生じたマーラのことらしい。(しかしイレブンは奈良で見たマラ兵の姿かたちを思い浮かべてもいた。)
 (チュウ)
「?」「?」「なんだ?」
「おや、いつの間にか懐にデビルゆるスターが。さっきむずむずとしたのはこいつだったのか」
 (チュウチュウ)
「うむ、うむ。何、仲間が来ていると!?
 そうかカッティたち、動物たちが……
 よく伝えてくれた、……(名前を一瞬考え中)……とっとこマラ太郎!」
「……」「……」「……なんだ、この展開は」
 一同はしばし様子を見ている。
「では聞いてくれマラ太郎」イレブンは、続ける。
「黒羊郷本城を落とすには君の力が必要だ……
 ゴニョゴニョゴニョ。
 うむ。分かってくれたか。ではグロリアーナの所へ!」
 (チュウ!)
「デイセラにもゴニョゴニョとたのむ! 葉月もよく来てくれた!」
 イレブンはここで改めて菅野の手を取った。「本当に感謝!」
「え、え? ……は、はい」
 と、いうわけで、マラ太郎(デビルゆるスター)がデイセラたちの準備の整ったことを伝えてきてくれたのであった。
「そうか、ならば」ハインリヒはハインリヒで懐をごそごそとやって何やら取り出す。
「ここに、アクィラ(あきら)の作成した黒羊郷地下の地図がある」
「何。なるほど……!
 そう言えばところでアクィラ殿は?」
「アクィラは……」
 アクィラは店の外にいた。
「警備? 客引き?」
「いや、どちらでもないのだが……まぁ、そんなところだ」
 地下への入り口は、黒羊郷郊外より更に外れにある。地下は、信徒らの居住区につながっており、そこはまた市内にもつながっている。こうして、蜂起勢力を市内に引き入れることができる。
 ここに彼らのこれまでの各々の活動が、つながったわけだ。
  


 
 黒羊郷裏手の山では、蜂起勢力が待機していた。そこでは、ご当地十二星華らが集った民らの士気を高めていた。
「ご当地十二星華として人々の希望を与える存在になるように頑張ります」というアンジェリカ・スターク(あんじぇりか・すたーく)。さながら民衆を導く自由の女神のように、彼らの前にシャンバラ旗を持って立つ。
「【十二の星の華】編は終わっても、まだご当地十二星華の戦いは終わっとらん!」
 デイセラ 留(でいせら・とめ)が皆を鼓舞する。
 「おおー!」声を上げる蜂起勢力の中には、グロリア・クレイン(ぐろりあ・くれいん)レイラ・リンジー(れいら・りんじー)の姿も見える。レイラは、相変わらずフリップにて「おおー!」
 一時期は、黒羊軍の放った討伐隊の活性化によって鎮圧されていたが、グロリアらはその後、意志を持つ仲間らと共に拠点を転転と移し反抗活動を続け、ジャレイラ死すの報を受けると再び表立って行動を開始した。反黒羊郷とその最大の力となる親教導団を明確に打ち出し、虐げられた周辺の民を集めてきたのであった。
 東の谷で奮戦する鋼鉄の獅子を始めとする教導団の踏ん張りも聞こえてきて、彼らと合流することを願って活動を続けてきた。
 今、ようやくそれが実現しようとしている。
 デイセラのもとに、一匹のデビルゆるスターが帰ってくる。勿論、イレブンのところから来たマラ太郎だ。
「そうかい……イレブンは。(おまえ、マラ太郎なんて名をもらったのかい……いい名をもらったねええ!)
 ニヤリ! さあ、移動を始めよう!」
 とするところへ、更に、思わぬ助けが入り込んでくる。
 内地で一足先に行動し、食糧庫を襲撃した高月芳樹(たかつき・よしき)らであった。もちろん、そこで奪い取った食糧を携えて。
「おお! 最後の戦い前に、腹ごしらえといくか!?」
 高月は、正面からはハルモニアからの進攻軍による攻撃が開始されるだろうことも告げる。
「ニッ」デイセラは力強い笑みを見せる。
「時の歯車がかみ合ってきたわ。じっとしておれんな。しかし……腹が減っては、戦はできぬ!」
 蜂起軍の士気はいよいよ高まった。