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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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2-05 地下神殿

 黒羊郷で囚われた仙國 伐折羅(せんごく・ばざら)を救い信徒兵から逃れ、湖から突き出る建物の一部へと入り込んだ久多 隆光(くた・たかみつ)前田 風次郎(まえだ・ふうじろう)デゼル・レイナード(でぜる・れいなーど)、そのパートナーたち。
 そこは、地下へ続く神殿の尖塔にあたる部分であった。
 下り立ったところはしんとして狭く何もないスペースであったが……
「なんとなくだけどよ、ここに自分が求めてたのがある気がする。何が待っていようとも、何があろうとも、逃げだせねぇな。……これで、最後だ」
 久多は、銃をしっかり手に取って、そう思う。
 何かを感じさせる……
 下へ続いているらしいことは皆にもわかる。とにかく、であれば黒羊郷の内部へつながる建物であろう。一行は、勿論、これを下りていくことにする。下へ、おそらく、深く、深くへと……。
 しばらく螺旋状の階段をひた下りていくが、何も出会わない。
「敵から逃げるためとはいえ、妙なところに来てしまったもんだ」
 とは、デゼル。パートナーに、伐折羅や他に傷を負った者に簡単な手当てをさせた。さいわい、大きな怪我を負っている者はいない。伐折羅も、体力は十分残っている。
「一応、前に貰った地図と照らし合わせて、地図にある場所かどうかを確認だな。まあ、ここじゃわからない。とにかく、どこか道らしいとこに出てみないと」
 やがて開けた場所に通じ、そこは黒羊の宗教装飾のなされた神殿であった。
「うーむ。地図の場所とは違うみたいだな」
 高い天井を見上げる一行。
 風次郎は、
「来るとことまで来てしまった感覚がする」おそらく、この戦い自体も終結に向かっているのだろう。そう思う。……それにしても、第四師団の派兵としてこの地に来たのに、一体俺は何してるのだろうな。まぁいい。戦うべき相手がそこにいる。だから俺は戦う。ただそれだけだ、と。
 その隣では、
「んっん〜、やはり銃はいいねぇ」
「ジョニー? 何をしている」
 ジョニー・ザ・キーンエッジ(じょにー・きーんえっじ)は前回久々に銃を撃っての感慨に耽っている様子? しかし、そんな場合では……と言いかけたところ、
「ほら、やっぱりだろ」
 ジョニーは、反対の隅にある扉が開いたのを、そのまま銃で指し示す。
「来た!」
「信徒兵……。やはり、ここにうようよいたのか」
 戻るわけにはいかない。
 ジョニーはスプレーショットを放った。久多も銃を構え、一直線に走り出す。「うぉぉ、なるべく敵とは出会いたくなかったが……こうなった以上、仕方ないぜ。どけ!」久多は、シャープシューターで頭を狙い撃ちしていく。「ちっ」全てが命中とはいかず、腕や足を撃たれた程度で信徒兵はひるまず襲って来るが、久多は極力戦闘を避け、下りの階段へ向かった。
「無茶するな」
 デゼルらも、久多を追う。風次郎は、無言で刀を振るう。
 敵の数は多いし、この広い空間では不利。皆は、ここはなるべく敵と相対さないよう駆けた。
 しかし、敵の攻撃は厳しい。
「やはり敵の数は多いみたいだな。これだけいたらロクに戦えねぇ。誰かが雑魚どもを引き付けるしかない」
「おいジョニー?」
 ジョニーが走るのをやめ、しっかりと銃を構えた。ここで、敵を引き付けるつもりだ。
「やるコトがあるんだろ? どうせ乗りかかった船だ。ここは俺に任せておきな」
「……」
 風次郎は、無言で頷いた。
「あまり長くはもたねぇ。しっかりやれよ……!」
 幾らか階層を下りると、空間は狭まり、些か迷路の様相を呈してきた。とは言え、やはり下へ下へ下りることに変わりはない。入り組んできたおかげか、逆に敵の追撃を振り切るのもらくになってきた。それに、敵の数もここへ来て急激に減ってきたように思う。
「ルケト殿!」
「お、おっ?」
「後ろです、後ろ!」
 忍び寄ってきた信徒兵にいつの間にか後ろをとられていた。「ウワ、不覚……!」
 騎狼兵が剣を抜いて飛びかかり、身代わりになった。
「だ、大丈夫……?!」
 ルケト・ツーレ(るけと・つーれ)も剣を振るい、信徒兵を引き剥がす。「はぁ、はぁ、しぶといなぁ! ホラ、とどめだ……っ!」
「るー!」「クッ、クッ」
 ルー・ラウファーダ(るー・らうふぁーだ)クー・キューカー(くー・きゅーかー)が来る。
「う、ううむ……致命傷ではありませんが、足を切れましたな。まいった、動けそうにもない。すみませぬ」
「いや、そんな。オレのせいだから……」
 デゼルも、駆けつける。「ルケト。こんなところで遅れてたのか」
「すまない……」
 ちょっとしゅんとするルケト。
 騎狼兵はここまで切り抜けてくる中で多くが負傷していた。
「この辺りか、もう少しいったところで、安全そうな場所で待機していた方がいいかもしれないな」
「すみませぬ。デゼル殿……」
「ああ。気にしなくていいさ。どうやらさっきから、敵の数が減っている。少し先を回ってきたが、ほとんど気配もないくらいだった。
 それよりルケトは何か調子出てないよな? ルケトも、休んでるか」
「い、いや、いい……(水の上を渡ってきたときの恐怖でまだ足が震えるだよォ……!)
 まぁ、そんなことより、何だこれ」
 加速ブースター+六連ミサイルポッドだ。
「……(休んでるか、って……言ったよな。ナンダヨ、これは……!!)」
 加速ブースター+六連ミサイルポッドだ。
 えー……(すごく情けない表情)で意志を表明しているつもりなのだけど、そんなルケトにデゼルは平然と、どうぞと言わん顔で押し付けてくる。
「これ付けるのかよ……こういうの使いたくないんだけれどなぁ……メカっぽくて。贅沢言える状況じゃないのはわかるから使うけど……」
 そうなのか、という感じのデゼル。「るー るー!」「クッ、クッ!」ルーとクーは、カッコいい! といったふうに回りではしゃいでいる。騎狼兵も、似合いますよ、とか見てみたいですよとか言って何気に興味深そうに勧めてくる。
「おまえら……絶対半分興味本位だろ。オレがこんなの付けてるとこ見て、楽しいか……」
「ルケト。こんなところでごちゃごちゃしている暇はないぞ」
「えい。
 こうなったらヤケクソだー! 帰ったら覚えてろよ、デゼルー!」
 
 敵の攻撃を避けつつ、迷路状の空間に入り込み、皆は少し離れ離れになってはいたが、確実に下へ下へと進んでいた。
 上階で戦っていたジョニーのところでも、変化はあった。
 信徒兵の来襲がやんだのである。
 数人は倒した。しかし、明らかに撃っていないのだがいつの間にか倒れ伏せている者もいる。そういえば、今まで意識のないまま無言の操り人形のように襲いかかって来てた連中なのだが、倒れて、かすかにうめき声を上げている。どういうことだろう。他は、ぞろぞろと溢れてきていた入り口からもうめっきりと出てこなくなった。明らかに、攻撃がぴったりとやんでいる。
「な、なんだ? ともあれ、助かったか。
 一体何が起こったのか気になるが……皆のあとを追うぜ」