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【空京百貨店】書籍・家具フロア

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【空京百貨店】書籍・家具フロア

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■家具フロア 夕


 小柄なあい じゃわ(あい・じゃわ)は、自分のベッドを持たずに他人の寝床にもぐりこんで眠っている。しかしそろそろ自分のベッドくらい持っていた方がいいだろう。そう考えた藍澤 黎(あいざわ・れい)朝霧 垂(あさぎり・しづり)ルカルカ・ルー(るかるか・るー)を誘って彼女たちのパートナーと一緒にじゃわの家具を選びに来ていた。
「これは?」
「もうつかれたですー。つまんないのですぅ〜」
「駄々こねるな。ああ、もう」
 大き過ぎてはいけないだろうとキッズサイズのベッドを探しているが、これ! というものが見つからなかった。そのうちじゃわは退屈し出して、ルカルカに遊んでくれるようおねだりし始めた。
「むーむー!」
「あいちゃん。一緒に遊ぼうか?」
「はいなのですよー!」
 ありがとう、とルカルカに礼を言う。サイズは分ったし、しばらく1人で見た方が効率がいいかもしれない。
「しょうがないな。るかっちや朝霧殿に迷惑かけないように気をつける事、いいな?」
「りょうかいなのです!」
「よし。それじゃ行ってよし」
「にゅー!」
 ぽふん、とじゃわはルカルカの頭に飛び乗る。そのまま彼女に垂の元へ連れてかれた。その隣では夏侯 淵(かこう・えん)がキッズサイズと自分の相性の良さに複雑な表情を作っていた。
 じゃわがすぐに眠ってしまうような、素敵な寝心地のベッドはないものか……。黎の注意は再びベッドに向かった。
 黎と離れたルカルカが、じゃわに何で遊びたいかと尋ねると元気良く『かくれんぼ』と返事をされた。短い右手をぴーんとあげて、無邪気に決意を表明している。
「じゃ、ここでやろっか☆」
 にっと白い歯を見せて、どこかに置いてきた垂に声をかけに行く。途中で朝霧 栞(あさぎり・しおり)ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)に説明をして、皆で仲良くかくれんぼすることになった。

「あいつ等、どこに行きやがったーーーーー!!!」
「ターレちゃん☆」
 振り向いた垂のほっぺに、ルカルカの人差し指がぷにっと刺さる。……。突然のことに何も言えなかった垂が怒り出す前に、隙を見てこぶしを振り上げるルカルカ!!
「な、なんだなんだ!?」
「出さなきゃ負けよー。じゃーんけーん〜♪」
「え? え!?」
「ポイッ♪ タレちゃん、隣の売場で60数えてね。鬼だから」
 疾風突き……もとい、素早いルカルカのグーに圧倒されて思わずチョキを出した垂。経緯はさっぱりだが、どうやら自分が鬼になってかくれんぼを始めるようだ。
「待て待て……」
「あ、さっきのジャンケンそれだから。みんなー、逃げるよー☆」
 ルカと淵は、その言葉の終わりと同時に姿を消した。文字通り、光学モザイクを作動させて視覚的に見つけることができなくなったのだ。
「こんなにい〜っぱい家具があるんだもん♪ かくれんぼをして遊ばないなんて嘘だよね!」
「にゃははは〜♪」
「お前らもかーーー!!!」
 一瞬のすきを突いて手を取り合って元気よく走り出したライゼと栞の首根っこを捕まえようとして失敗してしまう。ぶつぶつとしばらく文句を言った後、垂はやけになってカウントダウンを始めた。
「60、59、58……!!!」
 わあ、どこにしよう〜。
 自分よりも大きな家具に囲まれ、ライゼは栞と別れてどこに隠れようかと考えていた。時間は1分、もたもたしているとすぐに見つかってしまうのに〜。
「と、とと。ここにしよーっと」
 彼女が選んだのは大型テレビが見れるレースのカーテンの影だった。このレースの穴から鬼を見張ることだってできるし、退屈な時はテレビも見れるんだもんっ。……本当は洗濯機に入って見たかったけど、家具売り場にはないみたい。
 ライゼと反対方向に逃げた栞は勉強机の下に隠れた。椅子がほんの少し外に出てるが、些細な問題。気にしない、気にしない。
「ふはー、どうせ隠れるならこういうとこだぜ」
 体育座りをしながら、木のにおいのする机に背中を預ける。薄暗くて眠くなりそうだ……ふああ。そういや、じゃわはどこに行ったのかな。

 ピンクの花模様のついた涼しげな白のワンピースに、おそろいの柄の幅広帽子をかぶったヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)。小さなポシェットを肩にかけ、今日は親友のセツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)と大きなベッドを買いにきたようだ。
「うーん、何がいいですか? セツカちゃん」
「ヴァーナーが好きなのがいいですわ。お好きになさって」
 4人で一緒に眠れるサイズ……財布を預かるセツカは、値段を気にしなくていいと言った。黒のシックなワンピースに白のジャケットを着ているセツカ。彼女の趣味は、上品な白の帽子や肩掛けカバンを見ても分かる通り落ち着いた雰囲気のものだ。
「セツカちゃん、このベットかわいいですよ〜。ねごこちもいいです〜♪」
「あらあら。スカートがしわになってしまいますわよ? うふふ」
「えへへ♪」
 しかし、ヴァーナーが好きなものならそれにしたかった。頭の横に結んだリボンがヴァーナーの顔にかかっている。それをそっと横に払ってやりながら、彼女がいいと言ったシャンデリアと天蓋付きのベッドを眺めた。
「セツカちゃん、このまくら。ふかふかなんです♪」
「じゃあそれも、いただきますわね。……あら? ね、ヴァーナー。抱き枕コーナー、見てくださる?」
 ふえ? と言われたとおり抱き枕のコーナーを見ると、ピラミッドのように積まれたまくらのてっぺんにじゃわの姿があった。マシュマロ素材の彼女はビーズクッションと見事にどうかしている。
 ……隠す時は多少目に付く所にさりげなくって言うのが鉄則なのですよ!
「おっ、いいところに! なあ、じゃわ見なかったか!?」
「え、えっとえっとー……」
「ごめんなさい、こちらでは見ませんでしたわ……♪」
「そ、そうです! ぜんぜん、みてないですよっ」
 超感覚で栞を捕まえた垂は、次にじゃわを探しているらしい。セツカは慌てたヴァーナーをさりげなくフォローし、じゃわを逃がしてやる手伝いをした。
「そっか! わりぃ、邪魔したな!!!」
「いえ、お気になさらず♪」
 どきどき。
 一生懸命にこにこしてたけど、ヴァーナーはばれちゃわないかと心配だった。セツカちゃんがいてくれて、よかったですっ。
「……にゅ! じゃわ、かんしゃなのですよー」
 目薬知らずの潤いにあふれたつぶらな瞳に感謝の気持ちを込めると、じゃわは抱き枕からぬいぐるみの間をあいじゃわあたっくでゴム毬のように移動していった。ピュンッとその姿が確認できなくなると、ヴァーナーはセツカと目を合せてにっこりとほほ笑む。
「さ、こっちもどうかしら? そのシーツはベッドのサイズより小さいみたい」
 セツカはヴァーナーが気に入りそうな商品をさりげなく出しながら、彼女の買い物の手伝いを続けた。明日になれば、彼女たちはここで買った大きな新しいベッドで皆でお昼寝できるようになる。大きな買い物はまだ1人では難しい、私が助けてあげよう。

 メイドらしくハウスキーパーで箒を取り出した垂は、山狩りのようにベッドの下を掃除し始めた。ライゼも捕まえ、栞と一緒に正座させている。
「悪い子はいねーかー!!!」
「朝霧殿の盲点を突くには……」
 ベッド下に潜り込んでいる淵の元に彼女が来るのは時間の問題だ。あの食器棚の上には、寝そべったルカルカがいる。光学モザイクで姿を消して、今は退屈して昼寝をしているが……。
「悪く思うなよ……ルカ!」
 このままでは見つかると判断した淵は、眠っているルカルカの傍に枕の1つをサイコキネシスでぽふっとぶつけた。
「ひゃうっ!?」
「そこかぁ!!!」
 意外な攻撃にびっくりし、思わず声を上げたルカルカに垂の注意が向かう。その隙を狙い、淵は軽身功を使って素早く垂の確認した後のベッドの下に移動した。
「まったく、売り場で何をやってるんだ!」
「だって広いんだもん〜」
「じゃわも、この辺にいるかもな。……ん、上手くいけば眠ってもらった方がいいかもしれない」
 淵がギクッとしたのと同時に、垂は子守歌を歌った。だんだん、意識が遠のいていく。ね、ねむい。かといって体を傷つけてまで起きている事もないし……。ぐー。
「……あれっ☆」
 超感覚が誰かの寝息をとらえた。音は自分の下から聞こえる。ルカルカと2人でひょいっと下を覗いてみると、そこでは気持ちよさそうに昼寝をしている淵の姿があった。当然、彼も正座の列に仲間入りだ。
「あはは、天罰だよ☆」
「……ちっ」
 見つかった4人は、垂がじゃわを見つけるまでずっと正座させられていた。正座に慣れていないものはこっそり手を抜こうとするが、その度に垂にばれてゲンコツをもらっている。
「お待たせしました。るかっち、朝霧殿」
「あ、あー!?!?」
 じゃわが見つからないまま、黎の買い物は終了したようだ。それを報告しようとした垂は、黎が眠っているじゃわを抱っこしているのを見て素っ頓狂な声を上げた。彼女の子守唄でじゃわは偶然眠ってしまい、そこに通りかかった黎が『そんなに寝心地がいいベッドなら、これにしておくか』とじゃわを引き取った後にベッドを買い取ったそうだ。
「も〜、ちゃんと見つけてくれないと駄目じゃん〜」
「あははっ。いいベッドが見つかって良かったね☆」
 栞の口調に、ルカルカは思わずくすっと笑ってしまった。かくれんぼの優勝者は、じゃわで決定だ。


 屋上イベント会場主催の着ぐるみアルバイトショー午後の部に出演していたローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)は、キューティーオレンジの衣装を着たまま空京百貨店の裏階段を大急ぎで駆け下りている。
「もう暫し、あの子らと触れ合っていたかったのですが……。やむをえませんね」
 上杉 菊(うえすぎ・きく)はローザマリアを送り出したのち、エリシュカ・ルツィア・ニーナ・ハシェコヴァ(えりしゅかるつぃあ・にーなはしぇこう゛ぁ)グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)と片付けをしていた。気ぐるみの中で苦笑しながら階段のほうを見る。
「はわ、ローザ、がんばって、なの」
「……そうですね。せっかくの逢引、殿方との一騎打ちでございます」
「戦場に例えなくてもよいであろうに」
 片付け終わった3人はローザマリアのデートが上手くいくように、それぞれ心配しているようだ。シャワー室に着くと誰かの転んだ跡がある。……不安だ。
「うゅ……エリーはローザに、しあわせになってほしい、の」
 慌てたせいか部屋は少々散らかっている。片づける時間もなかったのだろう。夏休みでヒーローショーは長引いていたから、待ち合わせにはぎりぎり間に合わないかもしれない。
「こっそり様子を窺いに行きましょうか。家具フロアとのことでした」
 菊の提案に、エリシュカは賛成してこくこく頷いた。グロリアーナも用事がなかったので同行しているが、家具を見るほうが好きそうだった。

 家具フロアに向かうエスカレーターには、横に鏡が付いている。セオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)はそれを見ながら服装に乱れがないかチェックをしていた。
「久しぶりのデートなので、楽しみですね」
「ふはははは! セオボルト! 早く来ないと置いていくのじゃよ〜っ」
「……あくまで、今日は別行動ですから」
 セオボルトはエスカレーターを猛ダッシュしているヴラド・ツェペシュ(ぶらど・つぇぺしゅ)に不安を隠せない……彼女は天蓋付きのベッドが欲しいと駄々をこねるのだ。
「あのベッドは、王たる此方にふさわしいのじゃ!! わははははー、さらばじゃ!!!」
 串カツ好きな夢見る少女は、セオボルトが百貨店に行くと聞いてついてきたのだ。家具フロアで別れると目的のベッドに一目散に向かってゆく……。別行動は約束だったが、此方を置いてゆくとはどういうつもりじゃ。まったく!
「おぉぉ、なんというモフモフ感……!!」
 ベッドにだいぶして枕の海を泳いでいると、体がポカポカしてきた。まぶたが重くなっていき、このまま眠ってしまおうかと思った矢先に話し声がして眠気がとんだ。
「ふむ。これは中々……。バッキンガムでの日々を思い出す、善き寝心地のベッドよのぅ」
「此方の眠りを妨げるのはだれじゃ!!」
 広いベッドの反対側ではグロリアーナが大の字になって寝ころんでいる。スペースは余っているが……ライバル登場は気に食わないっ。
「はわ……けんかは、めー、なの」
 おろおろしながら2人の睨みあいを止めようとするエリシュカだが、彼女の力では収まりそうになかった。どうしようかと菊に視線を向けるが、菊は別の場所をじっと見つめている。
「御方様が参られました! 皆様、腰を低くして備えてくださいませっ」
「な、なんじゃ!?」
「か、隠れるなど……うぷっ」
 普段はおとなしい菊だが、ローザマリアのために心を鬼にしたらしい。グロリアーナとヴラドの頭を無理やり下げて、天蓋の隙間からデートの様子を見守り始めた。

 天蓋付きのベッド近くには他の客もいた。寝具売り場の近くでブリジット・パウエル(ぶりじっと・ぱうえる)金 仙姫(きむ・そに)は、このベッドについて激論……というより言い争いをしているようだ。2人の間に挟まった橘 舞(たちばな・まい)はおっとり笑いながらも、ブリジットをさりげなく牽制していた。
「元々、ベッドは2つでしたし……仙姫も許してあげないと」
「お前のせいで、わらわまで舞に怒られんじゃぞ。本気で怖かったわ!!」
「わざとじゃないって言ってるじゃない!!」
「キシャアアアア!!!!」
「クエエエエエ!!!!」
 漏れ聞こえた会話から推測すると、ベッドの無かった仙姫は今まで布団を敷いて眠っていた。しかし寝ぼけたブリジットに踏まれて喧嘩になって、寝起きが悪く鬼の化身となった舞にとろ火でじっくり説教されたらしい。
「ふん、背に腹は変えられぬわ。様式寝台は腰を痛めそうじゃから、できれば避けたいんじゃがなぁ」
「こんな洒落たベッドはちょっと仙姫にはもったいないわよね。仙姫には、特価のシングルパイプベッドぐらいで十分でしょ」
「グルルルルル!!!!」
「ガオー!!!」
 彼女たちの背後に肉食獣が牙をむいている姿が見えたが、舞が2人の肩を叩いてにっこりほほ笑むとそれらはみるみるしぼんでいった。あ、あれは……阿修羅だ!! 背後の阿修羅が口からビームを出して、2人の闘志を木っ端みじんに粉砕している!!
「仙姫が好きなのを選べはいいんですよ。ね?」
「……こ、このような蚊帳の付いたタイプが流行なのじゃな。夏場にはよさそうじゃ。のう、あほブリ?」
「ま、まあ、私のお下がりと交換するしいいんじゃないの?」
「どれにするか悩んじゃいますね。可愛いのがいいかなぁ……あ、ブリジット。後ろ、人が通ります」
 ローザマリアとセオボルトがブリジットの後ろを通り、アジアン家具の方に向かっていった。教導団所属のセオボルトが中華系やアジアの雰囲気のあるものを探しているらしい。
「そういえば、さっきキューティーオレンジがものすごい勢いで走っていましたね」
「ああ、何かあったのかしら?」
 ふと、舞が呟くとローザマリアはぎくりと動きを止めた。どうかしたのかとセオボルトに尋ねられると、虫が横切ったのだと苦しい言い訳をする。
「セオ、その椅子が気に入ったの?」
「ん。いい椅子ですな」
 慌てて話題をそらそうとして、ツタの装飾の美しいブラウンの椅子を眺める。机を挟んで2脚あり、そのうちの1つに彼が腰かけた。自分も腰かけると、向かいの彼と目があって顔が赤らむ。
「ふふ、こうしていると、新居に越して来たばかりの新婚夫婦みたいね?」
「奥さん、お茶が飲みたいです。……なんて」
「あらあら。抹茶入り玄米茶でいい?」
 ほのぼのとした空気が流れ、食器棚や電気スタンドを眺めながらローザマリアはうっとりとした表情でセオボルトを見つめている。
「今は未だ、必要性に乏しいかも知れないけれど……私、将来こんな素敵な家具に囲まれて生活するのが夢なの」
「その隣は?」
 椅子から立ち上がったセオボルトは、後ろからそっとローザマリアを抱き締めた。こめかみのあたりに口づけされて、はにかみながら顔を反らす。
「勿論セオ、貴方と」
「嬉しいですね」

 天蓋付きベッドの下では、その様子を彼らのパートナーが握りこぶしを作って見守っていた。
「御方様、その調子にございます。殿方の御心を己が方へ手繰り寄せられませっ」
 しかし、その天蓋付きベッドにスタッフの影が近づいている。このベッドの購入を決めた舞が頼んだ配送のため、このベッドを移動させるようだ。
「オーライ、オーライなのじゃー。……ふぅ、それにしても舞があれほど怖いとは」
「……その点だけは同意ね」
 お下がりにするかどうかは、じゃんけんで決めることになった。仙姫の笑顔を見れば分かるように、勝利の女神は彼女に微笑み新品のベッドが仙姫のものになった。

 ガタッ。

「あ」
「あ」
「あ」

 スタッフがベッドを持ち上げると、這いつくばった4人の姿が現れた。ローズマリアはそれを見ると、ぱちくりと目を瞬かせた後ガタンと椅子から立ち上がる。
「あいたぁ……っ!!」
「ああっ、ごめんなさいっ。セオ!」
 いきなり立ち上がったためセオボルトの顎に思い切りよくぶつかった。慌てている間に4人は逃げ出し、顔を真っ赤にしたローザマリアは後を追いかけようとする。
「まあ、お待ちなさいな」
 走ろうとした彼女の細い手首を優しくつかみ、自分の元に引き寄せる。顎をさすりながら苦笑して4人の背中を見送った。
「な、何を」
「今日は私だけのローザでいてくださいね」
 普段は軍事訓練や戦場の煙の中で生きているけど、今日は普通の女の子で……。俯いた表情は前髪に隠れて見えないが、小さく頷いてセオボルトの手をそっと握った。

担当マスターより

▼担当マスター

相馬 円

▼マスターコメント

お世話になっております、相馬 円(そうま・えん)です。
空京百貨店、楽しんでいただけたでしょうか。

突然で申し訳ありませんが、相馬は次回のシナリオで蒼空のフロンティアマスター業務を引退することにしました。
理由は新しい目標に向けて生活が変化し、こちらでの執筆続行が難しくなったためです。
まだ書いていないフロアや薔薇学シナリオなど楽しみにしていてくださった方、本当にごめんなさい。
辞める身でアレですが、前向きな理由での決断のため応援してやってくれると嬉しいです。

この半年間、皆様には本当に良くしていただきました。
いつか「相馬 円」のシナリオに参加したことが自慢になるように、これからも愛情を込めて文章を書いていきます♪