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【ろくりんピック】シャンバラ版バスケットボール

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【ろくりんピック】シャンバラ版バスケットボール

リアクション


2.

 西はクド・ストレイフ(くど・すとれいふ)、試合開始直後からオリヴィアをマークすることにした。ちびっこへのパスをさせない為だ。
 パートナーのルルーゼ・ルファインド(るるーぜ・るふぁいんど)はゴール付近でのディフェンスに徹している。
 西のちびっこ天津幻舟(あまつ・げんしゅう)綾小路麗夢(あやのこうじ・れむ)はパートナーのゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)の指示に合わせて動く。
「必殺防御!」
 と、ルルーゼのパスをいくつもの防御スキルを組み合わせた技でキャッチするミネルバ。それは、試合が始まってから何度も繰り返されてきた光景だった。
「そしてパス!」
 すかさずミネルバは近くにいる味方へボールを渡す。
 ボールを受け取ったのは悠希だった。先ほどの打ち合わせ通り、円を中心に試合を運ぶつもりだった。
「円さんっ」
 ドリブルしつつ、タイミングよく円へパスする悠希。
「あれ?」
 しかしボールは思わぬ方向へ飛んでしまい、あっという間にゴットリープの手に収まってしまう。
 注意していなかった相手だけにとっさの動きが間に合わず、無情にもボールは西の物に。
「幻舟!」
 ゴットリープからパスをもらった幻舟は、すぐさまシュートを狙いに向かう。
「年寄りじゃと思うて、甘く見てもらっては困るっ」
 その高いジャンプ力を活かし、バスケットに狙いを定めてボールを放る。
『第二ピリオド、初めに入れたのは西チーム! これで一点差ネ』
 ――西:17点。

 しかし、着地した幻舟は腰を押さえていた。すぐにゴットリープが審判へタイムアウトを申請する。
「いたたっ、こ、腰が……っ」
 ぎっくり腰だった。どうやら、年齢を忘れて無理に身体を動かしたのが原因らしい。
「無理するからだよ、幻舟」
 と、彼女を支えてコートから出るゴットリープ。ふと後ろを振り返ると、麗夢は力強く頷いていた。
「私はまだ大丈夫、戦えるよ」
 その言葉に、ゴットリープも頷き返した。

「私が点を入れて逆転させちゃうぞ!」
 と、気合十分にコートへ入る小鳥遊美羽(たかなし・みわ)
「うん、頑張ろう」
 パートナーのコハク・ソーロッド(こはく・そーろっど)もそう言って気を引き締める。
 東もその隙にロザリンドと悠希を下がらせて、七瀬歩(ななせ・あゆむ)が出た。
「もうちょっと強気に行かなくちゃ」
 その後ろには七瀬巡(ななせ・めぐる)もおり、二人ともやる気満々だ。

「パス!」
 選手が変わると試合の流れも幾分か変わったようだった。
 歩の投げたボールが巡へと渡り、勢いよくゴールへ向かって行く。
「そこだっ!」
 しかし、シュートしようと跳んだ瞬間だった。
「入れさせませんっ!」
 バーストダッシュを用いたルルーゼにボールを弾かれてしまう。
「あ」
「もらいますよっと」
 そのボールをクドが取り、オリヴィアにブロックされる前にコハクへパスする。たった15センチの身長差だが、上から投げられたボールにオリヴィアの手は届かなかった。
「行くよ、美羽!」
 チャンスだった。
 コハクがバーストダッシュで東の選手たちを突破し、ゴール前に待機していた美羽へパスを回す。
「見てなさい、美羽ちゃんの必殺ダンク!!」
 光術を発動した美羽が跳び上がり、眩しい光に包まれる。
 誰もが動きを止めた静寂の中、ボールがぽすっとバスケットに入る音がした。
『これは眩しいネ! まさにシャイニングダンクですネ!!』
 ――西:25点。

 逆転されてしまった。
 先ほどまでは東が優勢だったのに、この流れは悪すぎる。
「む、これはまずい」
 円の表情が変わった。これまで温存していた力を発揮するべき時が近づいているようだ。
 一方、オリヴィアは自分をマークしていたクドが、ルルーゼとともに抜けて行くのを目にした。
 代わりに入った選手もまたディフェンスのようだが、これなら先ほどよりも良い動きが出来るはずだ。
 ――試合時間は、すでに半分を切っていた。