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【ろくりんピック】シャンバラ版バスケットボール

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【ろくりんピック】シャンバラ版バスケットボール

リアクション


5.

 向かい合うザンスカールの森の精ざんすか(ざんすかーるのもりのせい・ざんすか)ツァンダの町の精つぁんだ(つぁんだのまちのせい・つぁんだ)。誰もが楽しみにしていた時が、ついに訪れた!
 東はざんすか、続けてカセイノ、高務野々(たかつかさ・のの)ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)の五名だ。
 対する西はつぁんだと、ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)、続けて巡と風斗。そして、
「このままでは負けてしまいますわ」
 と、西のちびっこエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)が再びコートへ入った。
 試合開始の合図が鳴り、ジャジラッドがつぁんだへ声をかける。
「オレに良いアイデアがある。同点になっても、あっちにやり返されたらおしまいだ」
 こちらを見上げるつぁんだへ、ジャジラッドは狡猾な笑みを浮かべた。
「乱闘騒ぎを起こしてこの試合、無効試合にしてしまわないか?」
「なるほど」
 にやりとつぁんだも笑う。
 しかし、そんな二人の元にボールを追いかけるふりをしてブルタがぶつかってきた。
「うわああ! 痛いよー、これって反則? 反則だよね?」
 ジャジラッドとつぁんだは何が起こったのか分からなかった。
 しかし体格差から見て、ジャジラッドがブルタにぶつかったように見えたので、訳のわからないまま、西にファウルの判定が下されてしまう。
 気を取り直して、つぁんだが野々から無理やりボールを奪う。ジャジラッドの陰に隠れているせいで審判からは見えなかったから良いのだ。
 だが、ばしっとラルクの手によってボールをはたき落とされてしまう。
「勝負は正々堂々するもんだぜ!」
 と、ラルク。見られていた?
「構うな、その内にあっちから騒ぎを起こすはずだ」
 ジャジラッドはそう言ったが、やはり胸がもやもやする。
 ドリブルでゴールまで行くラルク。とっさに巡がブロックをしたが、ラルクのジャンプ力には負けた。
『ダンクシュート! とってもクールネ』
 ――東:75点。

 差が広がってしまった。
「こっちに渡すざんす!」
 と、エリシアを邪魔するざんすか。
「残念ながら、無理ですわっ」
 エリシアは隙をついて下からボールを逃がす。
「もらっ――!」
 ボールへ手を伸ばしたつぁんだに再びブルタがぶつかってくる。
「押されたー! ボールを取ろうとしただけなのに、ひどいよぉ」
 狙ったわけではないが、審判の目にはその瞬間がジャジラッドの背中で見えず、倒れているブルタしか分からない。
 再びファウルになる西チーム。
 頭には来るが、どうもブルタを見ていると、呆れて怒る気になれない。

「行け、ざんすか!」
 カセイノからボールをもらったざんすかがつぁんだの横を突っ切って行く。
「そうはさせない!」
「何っ!?」
 ルール違反せず、堂々と手を出すつぁんだ。
 ざんすかの手を離れたボールは巡に奪われ、エリシアへとパスされる。
「インビジブルアタック!」
 死角を突いたシュートだった。
『誰もマークされてないナンテ!!』
 バスケットへ飲み込まれるボール。――西:70点。

「つぁんだが点を入れれば、75点で同点だよ」
「そうしたら俺がまたシュートで72点」
 巡と風斗にそう言われ、つぁんだはひらめく。
「ざんすかに打たせなければいいだけだ!」
 しかし、そう簡単に行くはずもなく。
「もっと点を離さないとダメですぅ! 諦めちゃ終わりですぅ!!」
 エリザベートの必死な声援。必死な様子で両手を上下に動かすチアガール。
「わああーん、痛いよー! 足踏まれたぁ」
 萌えを充電したブルタは、一層うざくなる。
「やっぱり怪しいな、あの二人」
「そうですね、なるべく彼らには近づかない方が良いでしょう」
 味方さえも信じ込ませる演技力。ブルタ、恐るべし。
 当のジャジラッドは、一応試合に参加しながらも複雑な気分になっていた。場外にはパートナーのキャプテン・ワトソン(きゃぷてん・わとそん)まで待機させているというのに、どうやら出番がないまま終わってしまいそうだ。

「僕の方が背は高いんだっ」
「何てことするざんす!」
 ざんすかを執拗に狙い始めたつぁんだがボールを奪う。
 ブロックされないように近くを走るチームメイト。つぁんだはジャンプすると、ボールをバスケットへ投げ入れた!
 ――西:75点。
『ここへ来て並んだネー! さあさ、残り時間はあと半分ダヨ』
「悔しいざんす! 絶対に勝つざんす!」
「そうです、絶対に勝ちましょう!」
 ざんすかに影響されたのか、野々もそう言って気を引き締めた。

 先ほどから遠距離ばかり投げるカセイノは動きを読まれてブロックされる。
 シュートを狙うエリシアは野々にマークされて動けない。
 ブルタの演技もだいぶ鼻についてきた。
 ジャジラッドは大きな身体を活かしたプレーが出来ず、下方で行われるちびっこ対決についていけない。
「ボールは僕のものだ!」
「渡さないざんす!」
 一進一退の攻防が続く。
 つぁんだがボールを奪ったと思えばざんすかが奪い返す。そんなやりとりが続いた後だった。
 ボールを手にしたつぁんだに突っ込んでくる太い影、ブルタだ。
 またファウルなんてことになったら大変だ!
「う、うわぁ、来るなー!」
 軽くトラウマになっていたつぁんだが慌ててボールを放す――。