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マホロバで迎える大晦日・謹賀新年!明けましておめでとう!

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第二章 大奥見学ツアーッ!2

「それでは、これから大奥の内部をご案内いたします。大奥には托卵を受けられた肩や女性のプライベートな空間もありますから、あまり勝手なことは慎まれてくださいね」
 本郷 翔(ほんごう・かける)が小さな旗を持って先導する。
 見学者――その殆どは男性であり、裕福な町人が多い――は物珍しそうに、豪奢な建物を眺めていた。
 彼らのお目当ては大奥に住むという三千人の美女であり、特に将軍の寵愛を受ける美姫や女官たちであり、彼女たちの姿を追っている。
 その中に、今回のツアーに参加した空京大学リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)とマホロバ人陽風 紗紗(はるかぜ・さしゃ)がいた。
「大奥の女性たちってどんな人たちなんだろう。すごいと思うけど、色々と大変そうだもの。はあ、どきどきするなあ。無礼が無いようにしなきゃ」
 普段とは違う雰囲気に、紗紗は胸を躍らせている。
 すると、金髪で派手な外見をした若い男が、彼女の前にすっと現れた。
「美しいお嬢さん。大奥のことなら俺に聞いてほしいな。俺は奥医師として、ここを担当してるからね」
 守護天使ソール・アンヴィル(そーる・あんう゛ぃる)は、見学者の中からいち早く可愛い娘を見つけ出すと、紗紗に声を掛けていた。
 彼は数ヶ月前から大奥で奥医師として働き、御花実や女官たちの診察に当たっている。
 ソールはまず、繭の間と呼ばれる寵愛を望む女官の住まいへ連れて行った。
 ここには、御花実や彼女たちに使える女官たちの部屋がずらりと並んでいる。
「ああ、知ってるとは思うけど、大奥はマホロバを収める将軍のために作られたものなんだ。寵愛を受けた女性は托卵を授けられ、将軍のお世継ぎを産む。だけど、将軍家には大きな秘密があったんだ」
 ソールは、ひそひそと声を落として言う。
「キミ達もここへ入るとき、『大奥御法度』っていう血判状を押させられなかったかい?」
「ええ、そういえば。そんなものを書かされたような……」と、リュース。
「ああ、やっぱりね」
 ソールは首をすくめ、翔の手にタッチした。
 かわりに翔が説明を行う。
「えーと、御花実とは大奥の中でも選ばれた女性たちで、托卵によって次期将軍候補を産みます。托卵とは、代々将軍家の『天鬼神の血』と共にマホロバを統治する力をで受継いでいく儀式です。将軍家は、桜の世界樹扶桑(ふそう)の化身である天子(てんし)から、マホロバを統治する力を授けられています。でもそのために、多くの犠牲を払う必要があったのです。それは将軍家の闇の部分ともいえます」
 翔がここまで言って、見学者の中から質問が出た。
 『托卵』とは具体的にどういうことなのか、である。
「え……と。それは言葉で説明するのは難しいんですが……」
 あせる翔がソールを見遣ると、守護天使はここぞとばかりに話し出した。
「それは、男女の交わりではあるんだけど、普通のソレとはちょっと違うというか。まあ、将軍しか天鬼神の血をもってないから本物は無理だけど、真似事なら俺もできるかな。実践するなら、帰ってからじっくりね……?」
 ソールが紗紗の肩に手を回す。
 紗紗はまさか大奥で口説かれるとは思わず、目を白黒させている。
 真面目なリュースも戸惑っているようだ。
「わー、すみません。何でもありませんから! 今のは忘れてください!」
 と、ソールを抑え、慌てて駆け寄る翔。
 リュースは静かに、真面目に言った。
「……あの、オレ達は花を見に来たんです。普段、大奥でどのような生け花をされているか、その技を見たくて。勉強にもなりますし、そういったところへ連れて行ってもらえないでしょうか」
「(なんと……このツアーでまともな人が!)そうでしたか、かしこまりました。それでしたら、姫君たちのお部屋へご案内いたしましょう」
 翔はこの場をそそくさと後にし、次の場所へ向かっていった。