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マホロバで迎える大晦日・謹賀新年!明けましておめでとう!

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第二章 大奥見学ツアーッ!5

「ツアーに参加してみたものの大奥を甘く見てました。広すぎます。はあ……お腹すいた……」
 ツアーの団体からはぐれてしまった獅子神 玲(ししがみ・あきら)は大奥の廊下をふらふらさ迷い歩いていた。
 竹中 姫華(たけなか・ひめか)の作った大奥内部地図を持っていたが、肝心な部分が鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)のサインによって見えなくなっている。
「どこかで良い匂いがするのに、どこかわからない。何か、美味しそうなものはないですかね……」
「そうですね。どこかに美味しそうな男性はいないですかね……」
 美人メイド獅子神 ささら(ししがみ・ささら)が、眼鏡をクイっと上げながら、あたりを見渡している。
 玲が力のない声で言った。
「そんな意味じゃないですよ、ささら。それにここは大奥なんだから、居るのは女性ばかりのはずです」
「確かに。女官とも仲良くなりたいですが、ワタシは興味はもっと別にありましてね……ん?」
 彼女たちが突き当たった部屋は、『御花実様専用(関係者以外立入り禁止!)』とでかでかと看板が掲げられていた。
「ほう、御花実様といえば、将軍のご寵愛を受ける方々と聞いてます。その専用のお部屋とは……これは期待できますね」
 玲が止めるのも聞かず、ささらは立ち入り禁止の部屋に上がりこんだ。
 その部屋は薄暗く、他とはまた一風違っていて、荘厳ではあるがどこか艶かしい。
 高級調度に囲まれた部屋の真ん中で、行灯の明かりを頼りに、黄金布団の上で本を読んでいる男の姿があった。
 玲がおずおずと尋ねる。
「あの……あなたはもしかして、鬼城 貞継(きじょう・さだつぐ)公ではありませんか?」
「……いかにも。お前たちは、見かけない顔だが新しい御花実か?」
 貞継が顔を上げていぶかしんでいると、ささらがすっと前に出た。
「まあ、そんなところです、貞継様。ところで、何をしてらっしゃるのです?」
「台本を読んでいる。蒼空の何とかというところは、人使いが荒いからな。こうやって時間を見つけて、セリフを覚えている」
「それは大変ですね。さ、ワタシも……お手伝いいたしましょう」
 そう言うなり、ささらは貞継を布団に押し倒した。
 眼鏡越しに鬼畜な笑みを浮かべて、ふふっと笑っている。
「貴様、何をする?!」
「手伝うといったでしょう? 身体を動かしながらの方が、脳も活性化されてセリフ覚えも良くなりますよ」
 ささらは嬉しそうに言い、貞継の耳を軽く噛みながらささやく。
「さあ、読んで。ワタシも続けますから」
「……くっ」
 貞継は、ささらから逃れようをしたが、相手の力が強いことに驚く。
 貞継の腕がささらの胸に当たった。
「貴様、男か!?」
「それがどうかしましたか? ワタシは両刀ですから、男だろうと迷わず食いますよ。貞継公にお会いできて光栄です」
 ささらの眼鏡がきらりと光る。
 貞継は歯ぎしりすると、ささらの眼鏡を掴んだ。
「男にやられるものか。鬼の力、受けてみよ!」
「ふ……鬼になられるか! ならば、ワタシもマホロバ人の力を解放しましょう。あなたはもう、ワタシに堕ちるしかないんですよ!」
 二人は互いに鬼の力を解放し、取っ組み合って暴れている。
 玲は顔を覆った指の隙間から、目の前で繰り広げられる光景を顔を真っ赤にして見ていた。
 が、彼女はすくっと立ち上がると、自らの鬼神力を高めていく。
「えっちぃのは、いけないんだから……」
 玲は二人に特攻をかけ、ぐーぱんちを炸裂させていた。
「そーゆうのーはー、専用シナリオでおやりなさあーい!!」

 アーーーーーーーッ!

 男たちの叫び声が大奥中にコダマしていた。



【ツアーにおける突発的な出費の内訳――】

 房姫が値段を見ずに購入した
 大奥中の花代、
 料理代、
 参加者全員へのお土産、
 貞継公による御花実部屋崩壊による修理費、
 ……大奥で過ごした時間――PriceLess[プライスレス]

「あ、赤字でありんす……」
 葦原明倫館総奉行ハイナ・ウィルソン(はいな・うぃるそん)は執務室でソロバンをはじいていた。
 ハイナは頭を抱えたまま机にぱたりと倒れた。
御神楽 環菜(みかぐら・かんな)殿に頼んでFXでもやりやすか……ね」