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遅咲き桜と花祭り

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遅咲き桜と花祭り

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 楽しいひと時はあっという間に過ぎて行き、温かな日差しを皆へと提供していた太陽は、西の空へと沈みつつあった。
 辺りはすっかり夕闇に包まれて、ライトで照らされた桜の木々が、妖艶に浮き上がっているように見える。

 ――パートナー皆でのお花見は早々に済ませた。けれど、2人きりでのデートも兼ねた花見には出かけていなかったな。
 そう思い至った神崎 優(かんざき・ゆう)は、パートナーであり恋人でもある水無月 零(みなずき・れい)と共に、花祭りを訪れていた。
 昼のうちに一頻り楽しんだ後、日が暮れ始めてから、手を繋ぎ、昼間の楽しさを話し合いながら、桜並木へと歩いてくる。
 沈み行く太陽とはほぼ反対方向に見える月の灯りに照らされた桜の花は幻想的で、優も零も息を飲み、言葉を失った。
 優の横顔がとても魅力的で、零は見とれてしまう。
「昼間の桜も良いけど、やっぱり俺は夜桜の方が好きだな」
 暫く見入っていると、そう口にした優が彼女の方へと顔を向けてきた。
「っ!」
「それに、やっと零と二人で来れた」
 突然のことに、驚く零に対し、微笑みながら彼は言う。
「うん」
 2人きりだということを改めて認識して、頬を赤らめながら零は頷いた。
 それと同時に、強い風が辺りを吹き抜けて、桜の花びらが舞い散っていく。
「わあ……」
 これまた幻想的な風景に、2人は見惚れた。
「ありがとう」
 2人きりの、良い思い出の機会をくれた優に感謝の気持ちを込めて、零は、彼女の言葉で振り返った彼にそっと口付け、微笑んだ。

 作成コーナーにてネックレスを製作しているうちに、すっかり日が暮れてしまった。
 ふと顔を上げたキリエは、夕闇に桜吹雪が舞うのを目にして、表情を曇らせる。
「綺麗な桜が散る姿は儚くて少し切ない光景ですが、同時にとても美しいですね……まるで花弁の雪のようです」
「凄い綺麗だね〜夜空にピンクの花弁が映えて桜の雨みたいだ」
 ぽつりと呟くように告げたキリエの言葉に、気付いたラサーシャが告げた。
「来年も再来年もこうして4人でこういう景色を見たいですね〜」
 彼の言葉に頷きながら、何気なく、キリエは言う。
「僕は4人でいるのすっごく楽しいよ。一番自然だって思えるし安心して暮らせるもの。どこで暮らすにしても4人なら頑張れるって思ってる。桜だって散っても来年には新しい花が咲くんだもの。僕らは何度だって見られるよ」
「私はキリエが行く所ならどこにでも行きますよ。この場所でなくともキリエやラサーシャ。メーデルワードがいる所が私の居たい場所ですから。何度だってこんな光景を見ることが出来ます……。だから、そんな寂しそうな顔をしないで……君は笑っているのが一番です。そうすれば私達も笑顔が自然と浮かんできますから」
「これだけ多くの人がいる世界で出逢い心を通わせ合っただけで奇跡なのだよキリエ。それが出来た私達なのだからその程度のことが出来ないわけがあるまい?」
 彼の言葉を受けて、ラサーシャが、セラータが、そしてメーデルワードが応えた。
 3人ともの言葉を受けて、キリエは曇らせていた表情を解いて、微笑んだ。

「やっぱり、桜は、散り際の夜桜が一番ですね」
 先ほど吹い抜けた強い風により、花びらが舞う。
 それを見ながら、近遠が呟いた。
「近遠ちゃん。あたしは、どのお花も綺麗でしたと思いますわ。優劣なんてつけれないと思いますわよ?」
 それに対して、ユーリカが言い返すけれど、彼女もまた、舞い散る花びらに目を奪われていた。
「我が思うに、桜の花はいかなる場合も綺麗なのだよ。貴公の思いは、おそらく育った文化に影響されたものであろう」
 イグナもそう応えながら、舞う花びらを眺める。
「近遠さん、散り桜は……確かに綺麗ではございますが。もう来年まで見れないと思うとアルティアは寂しゅうございます」
 アルティアはそう応えながら、翳した手に偶然舞い降りてきた花びらを名残惜しそうに見つめた。
「そうですね、桜への思いはそれぞれですね」
 パートナーたちの言葉を受け、小さく頷いた近遠は、改めて彼女らを見回す。
「皆さん、今日はおつき合い、ありがとうございます。また、明日からもよろしくお願いしますね」

 花祭りの夜は、静かに、終わりを告げた。

担当マスターより

▼担当マスター

朝緋あきら

▼マスターコメント

 こんにちは、朝緋あきらです。
 参加ありがとうございました〜!

 楽しんでいただけたなら、幸いです。

 アクセサリーなどの作成をされた方には、大半の方に、称号を配布しております。
 ご確認くださいませ。

 ではでは。
 また次のシナリオでお会いできることを願って――。