天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

イルミンスールの割りと普通な1日

リアクション公開中!

イルミンスールの割りと普通な1日

リアクション



●俺たちの魔法を見てみろ!

「クソッ。ミスリルゴーレムじゃないなんて!」
 マイト・オーバーウェルム(まいと・おーばーうぇるむ)は地団駄を踏んだ。自分のくじ運の無さを心底恨んでもいる。
 イルミンスール武術部の部長である彼は、とにかくツワモノと戦いたかった。
 そんな部長の様子を見て赤羽美央(あかばね・みお)はあることを思いついた。
「部長! 私がウッドゴーレムを強化しますので、それで戦ってみてはどうでしょうか?」
「何! それはいいな! では赤羽、頼むぞ!」
 ウッドゴーレムを強化する。それは名案だ! とばかりにマイトは元気なった。
「うおっほん!」
 わざとらしく咳払いをし、マイトは、美央、鬼崎朔(きざき・さく)水神樹(みなかみ・いつき)相田なぶら(あいだ・なぶら)。今回参加している武術部の面々を見渡した。
「イルミンスール武術部の諸君おはよう。
 本日の部活はゴーレムをぶっ倒す事だ!
 今回は魔法以外のスキルは文字を削る以外に使ってはいけねぇという事だが
 別に使わなくても構わないそうだ。
 遠慮はいらねぇ。料理だって魔法なんだ!俺達の武術は無属性魔法だ!
 全員! 覚悟して闘え! ヒャッハー!」
 マイトの演説におー! と他の面子も勢いづいた。
 そして、勢いよく迷宮内へと向かおうとしたところ、
「そんなに、一体じゃ物足りないかね……」
 教師に声を掛けられた。
「もし、物足りないと言うのなら、それなりの数を一気にけしかけることもできるが、どうする?」
 ニヤリ。マイトは待ってましたと言わんばかりに、
「頼む!」
「わかった。精々怪我をしないことだな」
 教師も理解したかのように、マイトたちを送り出した。
 そして、迷宮に入った早々のことだった。
 ウッドゴーレムが、両の手では数え切れないくらいに現れた。
「いや、マジで?」
 マイトがぽかんとしている。まさか一気に十数体ものウッドゴーレムが襲ってくるとは思っていなかったからだ。
「部長、強化……して大丈夫ですか?」
 美央が心配そうに聞いてくるが、マイトは大きく頷いた。
「頼んだぞ! これも修行の一環だ!」
「部長、右から着ます。その後は左から」
 朔がマイトにウッドゴーレムがどこから来ているのかを教える。
 今日の朔の目標は他の部員のサポートをこっそりとやることである。
「サンキュ」
 マイトは軽々ウッドゴーレムの攻撃を避けた。
「では、行きます!」
 美央がオートガード、オートバリア、パワーブレス、ファイアプロテクト、アイスプロテクトをSPが切れ続けるまで重ねがけをした。
 ウッドゴーレムは強化され、その体は鋼のごとく硬質に、魔法も体に届くまでには何重にも軽減される。
 そして、その拳はなんなく大地を穿つ。
 少しやりすぎな気もしないではない。
「では、私は基本護りに徹しますので。頑張ってください」
 額に汗を浮かべ、美央は自身が持つ武器を構えた。
 元の素早さに、強化されたウッドゴーレムはマイトたちにとって、少しばかり脅威だ。
「っと、危ないねぇ」
 なぶらは、攻撃を受け流す。そして、光術を纏わせた拳で、ウッドゴーレムを打ち付ける。
 なぶらの実力ならば、打ち抜くことはたやすいはずなのだが、ウッドゴーレムはよろめくだけにとどまった。
「こ、これは……重いですね……。今ですよ!」
 朔はティアマトの鱗を交差させ、ウッドゴーレムの拳を受け止める。
 固まった隙に、樹がそのゴーレムの腕を駆け上がり、
「はぁ!」
 気合とともに片手剣状の光条兵器を起動させ、落下と同時に、ウッドゴーレムの文字を削る。
 そして、ゴーレムは動きを停止した。
「よし、これで五体目!」
 そんな中、マイトは五体目のウッドゴーレムを物理的に破壊していた。
「オレの武術は無属性魔法だぜ!」
 そういいながら、次の標的へと向かっていく。
「流石部長ですねぇ。これは負けてられない」
 なぶら、そんなマイトを見、感想を漏らす。
 後ろから迫っているウッドゴーレムをシュトラールで横薙ぎする。
 それだけで、ウッドゴーレムはスパッと両断され、動かなくなった。
 それからも襲い掛かってくるゴーレムたちを文字通りちぎっては投げを繰り返す、マイトたち。
 迷宮から脱出すると、教師たちが呆れた様子で見ていた。
「魔法生物を魔法なしで戦うと言う発想は面白いが、魔法の授業なのだから、破壊は魔法でしてくれ……」
 そう、これは【修行】ではなく【授業】なのだ。
 濁点がないだけで意味合いが違ってしまう。
「まあ、そういうわけだから、君たちには本日の授業の単位はあげられない……。また後日補講を受けに来るように」
 それでも、マイトたちはウッドゴーレムと修行ができたからという理由で、落ち込むことは無かったのだった。