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武装化した獣が潜む森

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武装化した獣が潜む森

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「犯人は自爆、手掛かりもなし、か」
 ウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)が洞窟内を見回し言った。爆発と炎上の収まった洞窟内、鼻につく臭いは焼けた草木のものだと思いたかった。
「人のものは見つからないか。まぁ自爆するような連中だからな、中に一人居たとしても不思議は無ぇが」
 木っ端微塵に吹き飛んだか。いや死臭はしない少なくとも人が焦げた臭いは無かった。
「つまり犯人は3人という事になるのでしょうか」
 膝をつき、背を向けていた戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)が立ち上がった。その手には『パワードスーツ』の欠片が乗せられていた。
「どう思います?」
「どうって……」
「これ、『パワードヘルム』の目穴部に見えませんか?」
「まさか……」
 割れた面、その端から半円状の穴が空いている。爆発による破損とも考えられるが、素材も手触りも『パワードシリーズ』のそれと同じに思えた、そこから考えると『パワードヘルム』の一部に見えない事もない。
「もちろん詳しく解析してみない事には何とも言えません。しかしおそらくこれは」
 ウォーレンは詰まった空気を弾き出すように息を吐いた。
「パワードスーツ系の保管や管理は今もこれまでも外注が行った事は無い。これは事前の調べで明らかだ、間違いない」
「つまり教導団に属する何者かが自爆した寺院の残党にスーツを渡した……」
「鏖殺寺院って事は、帝国とも繋がってる可能性があるな」
 洞窟内の爆発は証拠を消すためのものだったのだろう。確かに無傷のまま残ったスーツは一つたりとも無い、しかしその残骸欠片だけでも20を越えるスーツが保管されていた事が推測できた。
「国外に運ぶなら回数は少ないに限る。この洞窟に蓄えて一度に流すつもりだったか」
「自爆されてしまった今、それを確かめるのは難しいでしょう。しかしスーツを流していた者の素性は調べれば分かるかもしれませんよ」
「はぁ……身内を疑うような真似はしたくねぇんだが……仕方ねぇな」
「すぐに尻尾を出すとは思えませんが。しかもそれが高官クラスともなれば」
「高官?!! うちの偉いさんの中の誰かだってのか?」
「これだけの量のスーツを教導団の外部へ、しかも何度も行えるとなると……その可能性の方が高いとは思いませんか?」
「はぁぁぁぁぁ〜。やっかいだな」
「えぇ、やっかいですね」
 教導団内に黒幕がいる、しかもそれが高官である可能性があるならば。捜査は難航を極めるだろう。まず第一に今回の件の報告さえ慎重に行う必要がある。
 よってその報告は―――
「以上が今回の調査報告になります」
「うむ。ごくろうだった、小暮少尉」
 秀幸によって金 鋭峰(じん・るいふぉん)にのみ行われた。
 捕獲回収したグリズリーとハンマーラプトルは既に生態調査に回されている、『パワードスーツ』の解析も同様だ。報告は武装獣を操っていたのが鏖殺寺院の残党であった事、そして教導団内部に彼らと内通していた者がいるという推論である。
「寺院の残党か。いやでも帝国の影を感じさせるな」
「はい。自殺させてしまった事は自分たちの責任です、申し訳ありませんでした」
「問題ない。すでに『パワードスーツ』及び軍備の管理と監視を徹底するよう配備している。敵もそうやすやすとは動けんだろう」
「敵って…………あの……団長は気付かれていたのですか? 内部に内通者がいることを」
「当然だ。何の為に各校への応援要請を許可したと思っている」
 金 鋭峰(じん・るいふぉん)は目尻を鋭く尖らせて続けた。
「スーツの流出、それが事実なら教導団の汚点以外の何物でもない。それでも情報を公開すれば少なからず内通者への牽制にはなる。各校あげて捜索を行うとなればよもや尻尾をみせるのではとも思ったが、随分と慎重な奴のようだな」
 もっとも『パワードスーツ』であるという確証もなかったため調査させたいう事もまた事実だそうだが。
 結果、内通者は姿を見せず、鏖殺寺院の残党3名が自害した。スーツを回収したと言っても大半は大破してしまっている。
 内通者の目的も手段もまた、結局は全て推論の域を出ていないのである。
「目的が何であれ、我々が内通者の存在を疑い調査を行う事くらい読んでいるだろう、が、こんな大それた事をする者だ、しばらくは大人しくしていようとも必ず再び動き出す」
 その時を待ち、必ず捕らえる。
 それまでは内通者の存在は公表せず、調査は秘密裏に行われる事となった。
 今回の調査に同行した生徒たちは決して情報を外に漏らさぬようにとの通達が一人一人になされるという。
 その通達に金 鋭峰(じん・るいふぉん)直々の労いの言葉が綴られていた事もまた、参加者たちしか知らぬ存ぜぬスペシャルであった。

担当マスターより

▼担当マスター

古戝 正規

▼マスターコメント

 
 またお会いしましたね……お会いできましたよね? ゲームマスターの古戝正規です。
 如何だったでしょうか。お楽しみいただけたなら幸いです。

 今回はここまでになります。
 ちなみに事件は、
 『廃棄となったスーツが森に捨てられ、それを獣たちが装備していた』
 『スーツを捨てた犯人は引き続き教導団が捜査を行う』として公表されるようです。
 内通者の存在は公表されなくても事件が明るみになった事で内通者は地面深くに潜ってしまうことでしょう。
 内通者が教導団の高官であるなら証拠も消されているでしょうしね。

 内通者が再び動く、その気配が見える時まで、しばし待ち頂ければと思います。 
 次の機会にもお会いできることを心より祈っております。

▼マスター個別コメント