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至高のカキ氷が食べたい!

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至高のカキ氷が食べたい!
至高のカキ氷が食べたい! 至高のカキ氷が食べたい! 至高のカキ氷が食べたい!

リアクション

「あたいも何か話そうかな」
 そう言ったのはマリリン・フリート(まりりん・ふりーと)だ。
「あたいは魔法学校にいるんだけどな、飼育の科目があるんだ。大体幻獣を飼育をしてるんだけど、そこにコカトリスってのがいてなー」
「突かれると全てを石化させてしまうやつか」
 マリリンの話に氷精が知っている知識をかぶせた。
「そう、そいつにさー、この前大事な本を突っつかれて石にされちまったんだ……」
「それは、なんというか……気の毒に」
「いや、今は石化解除薬ってのがあって、それをお店で買って元に戻せたんだけど」
「そこまで大事なものだったのか。元に戻せてよかったじゃないか」
 氷精は我が事のように喜んでいた。
 それにマリリンは笑顔を浮かべて、
「その本、今持ってきてるんだけど、読むか?」
「いいのか? 大事なものだろう?」
 氷精は驚いたようにマリリンを見た。
 大事なものを軽々しく見せてもいいものだろうかと思っていた。
「話好きって聞いたから、特別だぜ?」
 マリリンは氷精の元に向かうと、手に大事そうに持っている本を開いた。
「はは、あたいの日記帳なんだ、これ。石にされた日はすっぽり抜けてるが……」
 まずは真っ白になっているページを開いて見せた。
 日付だけが振ってあり、真っ白だ。
 そして、マリリンは1ページ目から開いていく。
 日記は毎日欠かさず綴られており、その日記を辿るだけでマリリンが日記をつけ始めてからの軌跡が追える。
「この日とかバナナの皮で転んだんだぜ? 今時笑っちまうだろ」
 マリリンは『今日はバナナの皮で転んでしまった。ちょっと恥ずかしかったぜ……』という文を指し示す。
「本当に今時ありえないな。そもそも注意不足なのではないのか?」
 氷精はおかしそうに笑い、マリリンに聞いた。
「いやあ、あの時は慌てててなあ、はは、ホントドジっちまったぜ」
 マリリンもそのときのことを思い出す。頭をかきながら大声で笑い声を上げた。
「なあなあ、あんたの話も聞かせてくれないかい?」
 軽い気持ちでマリリンは言ったのだろう。
 打ち解けてきたから、話してくれるのだろうという願望を持っていったのかもしれない。
「面白いものでもないぞ?」
「聞き手ばっかりも面白くないだろ? たまには話し手になってみなってー」
 マリリンは邪気の無い笑みで持って、氷精を徐々に追い詰めていく。
「仕方がないな……」
 呆れたように苦笑を漏らすと氷精はおもむろに口を開いた。
「まあ、わたしは古王国時代から生きている精霊だよ。何の変哲も無い氷の精霊だ。ただ他と違うのは群れから離れ一人ここに居を構えたことだ。別に群れが嫌だったとかそういうわけではない。外の世界で起こる争いを見るのが嫌だったのだよ。同胞は戦火に巻き込まれ死してはまた生き返る……見てられないだろう?」
 過去の話を無理やり思い出し氷精は言葉を紡ぐ。
「日々をここですごし、時折噂を聞き訪れる者にはこうやって話をさせ、面白ければ求めているものを、つまらなければそのまま帰し、奪い来る者には制裁を加えている……。ただそれだけだよ」 
 それは余りにも虚しい言葉だった。
 空気は冷め、皆の手は止まる。
「こうなるのが分かっていたから、余り話す気は無かったのだよ」
 やれやれと氷精は肩をすくめた。
 そして、そんな静かな空気に、カリッ、カリッと何かを削る音が響いていた。
 皆して一斉にそちらを振り向く。
 氷の扉が開いていた。
 中央には山のようになっている氷。
 その中には人間がいる。
 氷漬けにされた人間は1000以上になるだろう。
 数を数えるのが馬鹿らしくなるくらいの量がそこにあった。
「お前は何をしているんだ!」
 氷精が始めて冷徹な怒りを向けた。
 矛先は、氷漬けの人間の氷をリターニングダガーで削っているメイ・カンター(めい・かんたー)だ。
「えっ?」
 それがメイがあげることができた唯一の言葉だった。
 氷精の声に乗った冷気がメイを包み込み、メイは一瞬にして氷漬けになっていく。
 香奈恵にした時のような徐々に相手をいたぶるような凍らせ方ではなく、一瞬で凍らせたのだった。
「メ、メイ!」
 マリリンが慌ててメイに駆け寄った。
「はあ、すまん。わたしとしたことがつい感情が昂ぶってしまった……」
 頭を抱え、氷精もメイの所へと行く。
 そして、氷漬けのメイに振れ小さく呟くと、ピシリとメイを包んでいた氷が割れた。
「さ、さぶい……」
 防寒着の上からぶるぶると震え、鼻水までたらしているメイ。
 可愛いいのが台無しである。
「わたしとしたことが、話に夢中で他に気を散らしていなかったのは迂闊だったよ。分かってると思うが、この氷の塊が今までわたしから氷を奪おうとしてきた人間どもだ」
 氷の山を叩き氷精は言った。
「雪だるまみたいな形とか、ツララで吊り下げてみたら面白いのに」
 山をみて、マリリンがポツリともらした。
「最初は趣向を凝らしてみたのだが、だんだん飽きてきてな、場所をとるしまとめて山にしているんだよ」
 いかにも悪人ですといった表情で氷漬けにされている人間。
 驚き、怒り、悲しみ、ありとあらゆる不の感情をその顔に張り付け凍っていた。
「こんなの見ても面白くないだろう、さあ、戻った戻った」
 しっしっと、氷精は皆をその部屋から追い出した。