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至高のカキ氷が食べたい!

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至高のカキ氷が食べたい!
至高のカキ氷が食べたい! 至高のカキ氷が食べたい! 至高のカキ氷が食べたい!

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●何かが違う!

「じゃあじゃあ、次はルカからお話しようかな!」
 はいはーい、と手をあげてアピールするルカルカ・ルー(るかるか・るー)は膝の上にファニー・アーベント(ふぁにー・あーべんと)を乗せている。
「ルカの次はファニーが話するー!」
 ファニーが、おー! と腕を突き上げ話をする気満々な様子で足をぶらぶらさせていた。
「ルカのお話は教導団であったデンジャーなお話なのです!」
 心当たりがあるのか、教導団に所属している数名がうっと顔をしかめた。
「デンジャーとな……」
 程よく冷えた紅茶をすすりながら氷精はしみじみと言った。
「そう、なんたって、新年会がデンジャー……あれはいつだったかぁ」
「新年会だからお正月だよ!」
 遠い目をして思い出そうとしているルカルカに、すかさずファニーが突っ込んだ。
「そうだねー。ファニちゃんは偉いね〜!」
 よしよしとルカルカはファニーの頭を撫でた。
「何がデンジャーかって、まず羽根突き。普通の羽根突きは……美悠、映してもらっていいかな?」
「いいよ。ちょっと待ってね」
 ルカルカの頼みを神矢美悠(かみや・みゆう)は引き受ける。ソートグラフィーで本来の羽根突きの様子をおぼろげながら映し出した。
「こんなんなんだけど、教導団の羽根突きは手榴弾でするの。手榴弾って爆弾なんだけどねー……」
「爆弾でそのような遊びをするなど、愚かすぎるだろう? よく死者など出なかったな……」
「うーん、実際映像見てもらったほうが早いんだけどねー」
 ルカルカは氷精の呆れっぷりに何か手はないと考える。
「クレーメックたちに電話して探してもらおう。イベントの映像くらいはネットに上がっているだろうし。それを美悠の携帯に転送して表示させればいいとおもうぜ」
 ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)が提案し、早速ツァンダ市内で待機しているクレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)のパートナー島津ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)に電話をした。
「ああ、俺だ。教導団の新年会の映像手に入るか? 動画サイトに上がってるようだったらテレパシーで送らずともURLを美悠の携帯に送ってくれると助かるんだが」
 ケーニッヒはヴァルナに用件を伝えているようだ。
「ああ、じゃあ少ししたら送れそうなんだな。わかった」
 そういって、携帯を切ったケーニッヒ。
「暫くしたら、美悠の携帯に動画のURLを送るそうだ。もし見つからなくても資料を探して送るそうだ。しかし我が頼んだとはいえ、中々にツァンダ市内を走り回るのは骨が折れるだろうな」
 ケーニッヒはルカルカたちにそう伝える。
「そっか、ありがとう! まさか外で情報集める人を作るとは思って無かったよ」
 ルカルカは関心したように言った。
「それじゃあ、映像来るまで話の続きをしようかな。ファニちゃん、はい、あーん」
 ルカルカはケーキ一切れをファニーに食べさせて話を仕切りなおす。
「これも新年会のことなんだけど、コマ回し。これはね本来なら小さいコマ同士をぶつけて遊ぶ遊びなんだけど、教導団のコマ回しは人を跳ね飛ばすの。いやあ、あれは怖かったなー……」
 やっぱり思い当たる節があるのか教導団所属の人間はああ、あったなと呟いている。
「そ、そんな恐ろしいことが教導団では起こっていたのか……」
 ファニーがお菓子を食べる手を止めルカルカを見上げた。
「他にも、双六はロシアンルーレットだったし……なんていったって、二年前の新年会はクーデターもどきまで……」
 神妙な口ぶりでクーデターと漏らすルカルカだが、しかしそのクーデターは『クーデター(笑)』と記録に残っているくらいに首謀者側の完全敗北で終わっていたものだった。
「いや、それはどう考えてもおかしいだろう!? どうして、新年会でクーデターが起こるんだ! 教導団は学校だろう! ……が、学校だよな?」
 ルカルカの話しぶりに、氷精は伝え聞いた教導団のイメージがぶれ始めた。そして不安になり、最後には聞き返していた。
「学校だよー? もうほんっとに、訓練と祝い事がごっちゃになって、どっちなのやらーって感じだよねー」
 ルカルカはあははーと笑う。
「URLじゃなくてテレパシーだ」
 そんな時、美悠が声を上げた。
 そして携帯に映し出される、断片的な映像。
 決して鮮明とは言いがたいが、何が起こったのかは伝わる程度には理解できる。
「おおう……なんとも……」
 氷精は言葉を失った。
「うわー、なっつかしいー」
 ルカルカはその映像を見て記憶を揺り起こしていた。
「でもさー、総司令が教導団にはバレンタインはない! とかズバアっと言い切っちゃうような現実だし、お祭りごとに飢えてるからなのか、若さゆえの暴走かはわからないけど、皆結構楽しんでたとおもうなー」
「た、楽しんでいるのはわかるのだが、ベクトルが違うというかなんと言うか……」
 切り替わる映像を氷精は見ながら、ルカルカに答える。
「ルカの学校は戦場だったのよ。だからこれは仕方ないことなの! これがルカからのお話でした。教導団は危険と隣りあわせだけれど楽しいところなんだよー!」
 また、ルカルカはあははーと笑い声を上げて話を終わらせた。
「そ、そうなのか……」
 そういうこともあるのだろうと氷精は自分を納得させることにしたのだった。
「次はファニーが話すよー!」
 ファニーはカップの中のお茶を飲み干した
「結構前の秋の話なんだけど、空京でシャンバラ演劇際っていうのをやってたの。その演劇祭で白雪姫っていうお話をしたんだけど……白雪姫ってわかるかな?」
 ファニーは氷精にそう問いかけた。
「何かの物語だったな。確か毒りんごを食べた姫を王子様が助けるといった話だったかね」
「そうそう! ファニーはそのお話の登場人物の1人になったんだよ!」
 説明の手間が省けたファニーはそういって、話し始める。
「ファニーはその時どんなことをしたかっていうとね、王子様を妨害する魔王の役をやったの!」
「ま、待て! 白雪姫に魔王はでてこないだろう!?」
 無邪気にそんなことを言うファニーに、氷精は思わず突っ込んだ。
「ホントだよー! 眠ったお姫様の前に立ちふさがってー、最後は王子様にかっこよくやられて退場なんだけどねー」
「どういうことなのだ」
 氷精はわけがわからないといった様子で、ファニーたちを見た。
「うーん、実際見てもらったほうが早いんだけどねー。動画とかないかな?」
 ファニーは今回外の情報を逐一持ってきてくれる、ケーニッヒたちを見た。
 ケーニッヒはすでに電話を耳に当てており、連絡を取っている。
 仕事が早い。
「あの時は、ルカも大変だったんだよー」
 ルカルカがしみじみとそのときのことを思い出して嘆く。
「そうそう、ロシアンルーレットリンゴの当たり引いちゃったんだよね!」
 ファニーが何が起こったのかを詳しく言った。
「なんとまぁ、ご愁傷様だな……」
 氷精が気の毒そうに声をかけた。
「今回は動画があったみたい」
 美悠の携帯にメールの着信音が響いた。
 演劇祭というだけあって、動画データとして残っていたようだった。
 音声は周りには聞こえるが、映像は氷精が優先的に見えるように美悠は携帯電話を配置した。
「見てみるといいよー! ファニーの立派な魔王姿が映ってるから!」
「ファニちゃんは魔王様だもんね!」
 ルカルカはそういいつつ、ファニーをぎゅうぎゅうっと抱きしめ、頬ずりをする。
 それから暫く氷精は白雪姫の演劇を見ていた。
 ルカルカが毒リンゴを引き当ててピクリともしなくなったところや、なんともカオスな内容の演劇祭が流れる。
 演劇祭の動画は王子様役の人の前に立ちふさがるファニーのところまで行った。
「ほう、なるほど」
 動画に見入っている氷精は一人呟いている。
「四天王をあっさりと倒していく王子様かっこいいよねー!」
 ニコニコと無邪気な笑みを浮かべながら、ファニーは動画の解説をする。
「見てるのもたのしいけど、やっぱりその場にいて演じるともっと楽しかったんだよ! 氷精さんも今度何かあったら一緒にやってみようよ!」
「それは中々、面白い提案だな」
 ファニーの提案に氷精は考えるように答えた。
「ファニーの話はこれで終わり! どうかな? 楽しめた?」
「面白かったよ。しかし本当に色々とカオスな演劇だな」
 氷精は演劇の感想を言う。
 そこで、ルカルカはファニーを氷の椅子に座らせ、ファニーの前に跪いた。
「彼女は魔王で、私は魔王様の最終兵器でございます」
「うむ、ファニーは魔王なのだ! さあ、ルカルカよお菓子をもてい!」
 お互いにわざとらしいやり取りに、軽く噴出した。
 それでもそこにはファニーとルカルカに友情があるように見えた。
「イエス・ユア・ハイネス」
 ルカルカは立ち上がり恭しく一礼をすると、皿とカップにお菓子と桃。それにお茶を注ぎ足しファニーの目の前に持ってくるのだった。