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第六章 村木お婆ちゃんのお礼


「お婆ちゃーん、売れたよー」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が売り上げを届けに来る。2人とも売り子をしていた時のコンパニオン衣装のままで駄菓子屋を訪れた。
「本当に全部売れたのかい? お疲れ様」
「いろいろ工夫したのが良かったみたい」
「おまけでも付けたの? ちゃんと必要な分があったら言ってね」
「ううん、お金とかは全然かかってないから大丈夫」

 運良く、蹴り上げたカメラが壊れることはなかった。
「すみません! 美羽さんがご迷惑をおかけしてしまって……」
 必死に謝るベアトリーチェだったが、「じゃあ君が挟んでくれる?」と言った男性には、華麗に平手打ちが飛んだ。
「あ、これで良いです」
 真っ赤になった頬を大事そうにさすりながら、去っていった男性だった。

「これね、万博の入場券。蒼空学園も“シャンバラの現在”っていうパビリオンを作ってるから、よかったらお婆ちゃんも遊びに来てね」
「なんだかいろいろ申し訳ないねぇ。本当にありがとうね。ぜひ行かせてもらうよ」
 美羽とベアトリーチェは再び小型飛空挺に乗って駄菓子屋を後にした。


 蒼空学園の校長室では、ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の映し出したモニターに視線が集まっていた。
「やー、売れたよー。暑かったってのもあるけど、ダリルの指示が良かったよね」
 パートナーの3人はそれぞれにうなずく。
「助かった。村木婆ちゃんからもお礼の電話があったよ」
「任せてよ。涼司の頼みで、村木お婆ちゃんの手助けになるんなら、一石二鳥だもん。一肌どころか、二肌だって三肌だって脱いじゃう!」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)がシャツを脱ぎかけると、夏侯 淵(かこう・えん)カルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が押さえつけた。
「そんな写真を付ければ、もっと売れたかもしれないな」
「いいよ、じゃあ涼司には特別に付けてあげる。ただしコンテナごと買ってくれるかな」
 ルカルカ・ルーがウィンクしたが、山葉は「それはさすがに……」と両手を振った。
 ダリルが集計を出す。日ごと、時間ごとの売り上げから、各セットの販売数などなど。
「セット販売は、各校とも売れてますね」
「写真もさることながら、座右の銘が良かったようです」
「どれも含むべきものがあったよなぁ」
 ルカルカ・ルーや佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)が話し合う中、1人不機嫌なのが{SNL9999002#花音・アームルート}。
「何、言ってるんですか。他の皆さんは普通の写真なのに、私だけこんなで……」
「可愛く写ってるよ。こんなって?」
 そんな写真を撮ったルカルカ・ルーの問いに、花音は「だって……男の人が買っていったんでしょう」と答える。
「ふーん、どうしてそう思うの?」
「もう……知りません!」
 校長室が笑い声に包まれた。
「ルカー、ちゃんと馬舎を作ってくれるよな」
「わかってるって、セイカチョコも売れたしね。ちっちゃいのに、よく頑張ってくれた」
 ポンポンと頭を撫でる。夏侯淵は照れながらも「ちっちゃくない!」と叫ぶ。
「方向性が違うけどー、うちのフィンも頑張ったよねぇ。あれ? フィン、太ったぁ?」
 弥十郎がフィン・マックミラン(ふぃん・まっくみらん)の頬を軽くつまむ。反対側の頬を真名美・西園寺(まなみ・さいおんじ)が突っついた。
「毎日、ラムネとアイスばかり食べてたんじゃ、太っても当たり前よね。上下に伸びたら良かったのに」
 皆に小さいと言われた夏侯淵とフィンが背比べをしている。現時点では夏侯淵がいくらか高いものの、ダリルやカルキノスに比べれば、小さいのは明らかだった。
「校長セットの販売数では、僅差ながらも山葉校長が一番だったかぁ。企画を持ち込んだ身としてはー、ジェイダス校長にも頑張って欲しかったけどなぁ」
「発案が山葉校長だったからね。感想はいかがですか?」
「うーん、村木お婆ちゃんのためになったと思えば、一肌脱いだかなと、なぁ」
 うながされた花音は、どこか納得しない表情ながらも「はい」とうなずいた。ちなみに販売数は、花音セットが山葉セットの倍以上売れていた。
「ああ、その村木お婆ちゃんが言ってたけど、予想以上に早く売れて利益が出すぎたから、皆に何かお礼がしたいってさ」
「お礼?」
 ルカルカ・ルーや佐々木弥十郎は「ふーん」とうなずく。お礼目当てで参加したわけではなかったが、何かあるのはありがたい。
「決まったら連絡するとは言ってたけど、いつとは言ってなかったな」
「全員にー、焼きそばパンプレゼントとかだったら良いなぁ」
 弥十郎が言うと、何人ものお腹がなった。

                    《終わり》

担当マスターより

▼担当マスター

県田 静

▼マスターコメント

本作で6作目となりました県田静です。多くの参加ありがとうございました。

前作もですが、参加者が100人越えるとドキッとします。『全員、活躍させられるだろうか』ですね。アクションのかみ合わせによって表現量差が出てしまったとしても、最低限で満足していただきたいと思っています。

さて本作ですが、多様なアクションありがとうございました。ただ初の未投稿者が2人ありました。初めてのことだけに少々複雑な心境です。

またオリジナルドリンクの考案もありがとうございました。『いろいろ来るだろうな』とは思っていたものの、予想を超えた集まりです。創作ものに刺激される方が多いのでしょうか。今後の参考にしたいと思います。

これからもネタが続く限りですが、ちょくちょく駄菓子屋を舞台にしたいと思います。特に今回の儲けはちゃんと使う予定です。もっとも運営サイドに案が通らないと駄目なんですが。

機会がありましたら、次回の参加をお待ちしています。本当にありがとうございました。