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俺の祭りを邪魔するな!!

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俺の祭りを邪魔するな!!

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「みんな楽しそうですね」
 四谷 七乃(しや・ななの)は活気に満ち溢れた通りを見てほっこりと笑った。
 その横顔を見た四谷 大助(しや・だいすけ)も嬉しそうに笑う。
「七乃も楽しんでくれているみたいでよかった」
 二人は並んで歩きながら一緒に屋台を見て回った。
「あのマスター……」
「何?」
 七乃が恥ずかしそうに頬を染めている。
 大助は黙って次の言葉を待った。
 七乃が意を決したように一度強く目を瞑ってから口を開く。
「かっこ……よかったです」
 七乃は恥ずかしかったのかチラリと横目で一度大助を見ただけ、その後は顔を赤くして地面の一点を見つめていた。
 大助は照れ笑いを浮かべる。
「ありがとう」
 二人は静かに並んで歩いた。
 大助は何か話さないといけないと思い、話題を探す。
 すると、手の甲に七乃の小さな手が一瞬だけ触れた。
 触れた手を見ると、七乃が手を繋ごうとしているらしく、震えながら少しだけ伸ばしてきていた。
 大助はその手を掴むべく手を伸ばした。
 そして手が触れようとした瞬間、七乃ではなく背後から伸びてきたグリムゲーテ・ブラックワンス(ぐりむげーて・ぶらっくわんす)の手に掴まれてしまう。
「大助! あっちに面白い出し物がやってたわよ!」
「え、グリム!? うわっ、ちょっと待って……」
 グリムゲーテは大助を引っ張っていく。七乃は苦笑いを浮かべて二人の後を追った。

 アンネリーゼ・イェーガー(あんねりーぜ・いぇーがー)は屋台の明かりが並ぶ通りを見て、それと同等、あるいはそれ以上に目を輝かせていた。
「朔夜お兄様、見てください! みんなキラキラしてますわ」
「ええ、そうですね」
 笹野 朔夜(ささの・さくや)が優しい笑みを浮かべていた。
 アンネリーゼが街の子供達に混ざって泳いでいる金魚を眺め始める。
「冬月さん。まだ、ご不満なのですか?」
 朔夜は隣を黙って歩く笹野 冬月(ささの・ふゆつき)に声をかける。
 冬月は返事を返さず、朔夜は一人でそのまま話を続けた。
「仕方ありませんよ。夜道を歩くのは何かと物騒ですし、それに街の方が今晩の宿を用意してくださったのに、そのご厚意を無下にするのも失礼じゃないですか」
 そこまで話すと冬月はため息を吐いて、首を振っていた。
「そうだな。仕方ないことだよな」
 冬月ははしゃぐアンネリーゼを見て微笑みを浮かべる。
「今日は『祭りの社会見学』ということにでもしておこうか」
 アンネリーゼが人混みの中から楽しそうに手を振っていた。
「朔夜お兄様、冬月お兄様、こっちですわ〜」
 朔夜と冬月はアンネリーゼに追いつくと、一緒に手を繋いで屋台を回ることにした。


「ここは涼しくていいが、少し人目につきすぎだろう」
 噴水の縁に腰かけて横たわるグラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)に膝枕をしていたベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)は、しきりに周囲の視線を気にしていた。
 先の戦いでのグラキエスの戦いぶりを見た住民は、皆が脅えたような視線を向け、避けるようにして通り過ぎていく。
「グラキエス。やはり、やりすぎだったのではないだろうか?」
「……」
 グラキエスは何も答えず、代わりにゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)が深いため息を吐いた。
「我などは何もしてなくとも怖がられているがな」
 住民が避けて通る原因にはゴルガイスの存在もあるようだった。
 まるで世界から孤立したかのような三人。
 すると、グラキエスの元へ子供が走ってくると、怖がりもせずに声をかけてきた。
 グラキエスは上半身を起こして子供を見つめた。
「……あぁ、あの時の助けた子か。傷か? 大丈夫だ。大したことはない」
 子供は感謝と傷の心配をしにきたらしい。
 子供はグラキエス達がこんな所で何をしているのかと尋ねてくる。
「俺は激しい戦いの後は身体を冷やす必要があるんだ。ほら走った後とか身体中が熱くなるだろう。そんなもんだ」
 グラキエスが質問に答えると、子供はグラキエスのためにかき氷をもらってきてくれると言った。
「いいのか? ありがとう」
 子供は父親が他の生徒のために新しい味を追加したのだと自慢していた。
 子供が走って行くとベルテハイトがクスリと笑いをもらす。
「気に入られたんだろうな」
「そうみたいだ」
 グラキエスは嬉しそうに笑う。
 すると、歴史博物館の方から聞こえていたカラオケ大会の騒音が止み、代わりに空に向けて色とりどりの光が放たれた。


 いつしか祭りも終盤に差し掛かり、歴史博物館前の特設ステージでは【846プロ】所属アイドル達によるライブが開かれていた。
 シエル・セアーズ(しえる・せあーず)が歌い終わると、観客から歓声が湧き上がる。
「みんな〜、ありがとうだよぉ〜!!」
 シエルがステージ脇に下がってもなお、観客からはシエルコールが聞えてきていた。
 すると、いきなり会場が真っ暗になり、ドヨメキが走る。
 ふいに上空に向けてスポットライトが照らされ、そこには【『シャーウッドの森』空賊団】副団長リネン・エルフト(りねん・えるふと)が手綱を掴むワイルドペガサス背に乗った煌びやかな衣装に身を包んだ【846プロ】のアイドル神崎 輝(かんざき・ひかる)の姿があった。
「みんなぁぁぁぁ、ボクの歌を聞いてくれぇぇぇぇぇぇ!!」
 輝の叫びに合わせて会場が明るくなると、観客達から雄叫びを上がった。
「いくよ!!」
 輝がワイルドペガサスが飛び降ちた。そして地面に達する前にクリュティ・ハードロック(くりゅてぃ・はーどろっく)が抱きかかえ空中へと運ぶ。
 観客の悲鳴が安堵へと変わり、乗りの良い音楽が流れ始めると、抱きかかえられたまま輝が綺麗な歌声を披露し始めた。
「なぜこのようなことに……」
 クリュティはマイクに音が入らないように微かな声でぼやいた。
 周囲では同じようにライブ直前に巻き込まれ、アルバイトをするはめになったサーシャ・ブランカ(さーしゃ・ぶらんか)セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)、それにアニス・パラス(あにす・ぱらす)が、明かりのついた箒で飛び回りながら綺麗な光芸術を作り出していた。
 盛り上がる会場。
 下を見下ろしたクリュティは手を振って声援を送るパートナー閃崎 静麻(せんざき・しずま)を見つけ、やるからにはしっかり成し遂げようと、気持ちを切り替えたのだった。
「みんな、いっくよぉぉぉぉ!!」
 会場が歌で一つになる瞬間だった。


「全然、何が書いてあるのかわからないわね」
 歴史博物館で回収した書物に目を通した如月 玲奈(きさらぎ・れいな)は、解読不能な文字を見て残念そうにした。
 わかったのは後半に描かれた挿絵から伝わる≪三頭を持つ邪竜≫が巨大で強力なドラゴンだということくらい。
「これどうするの? ここに置いておいたらまた狙われるわよ」
 玲奈の質問に館長は、今後蒼空学園に在籍している教授に書物の保護と研究をお願したことを教えてくれた。

 タシガン空峡沿岸部の小さな街≪ヴィ・デ・クル≫。
 この街で毎年行われてきた夏祭りは、生徒達のおかげで今年も無事終了を迎えることができたのだった。

≪オシマイ≫

担当マスターより

▼担当マスター

虎@雪

▼マスターコメント

 こんにちは、虎@雪です。
 コメントの前に、シナリオに参加して頂いた皆様に深く感謝をさせていただきます。
 ありがとうございました。

 さて、今回は二度目の執筆ということもあり、若干の慣れによる精神的余裕に加え、油断してミスからの大幅修正をしたという執筆期間でした。
 バトル物ということで戦いの部分が多いですが、その中で笑いや仲間の絆を描けたらいいと思い書かせていただきました。
 とりあえず、楽しんで読んでいただけたらいいかなと思っています。今回も率直な感想をお待ちしております。

 読んでいただきありがとうございました。
 皆様にまたお目にかかれる日をお待ちしております。