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俺の祭りを邪魔するな!!

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俺の祭りを邪魔するな!!

リアクション

「砲撃は失敗したようね」
 伏見 明子(ふしみ・めいこ)はロケットシューズで飛びながら煙を上げる空賊船を見下ろしていた。
 そこへ空飛ぶ箒スパロウに乗ったパートナーのサーシャ・ブランカ(さーしゃ・ぶらんか)がやってきて尋ねる。
「これからどうする?」
「……」
 サーシャの質問に明子は暫く黙っていた。
「……そんなの決ってるわ」
 そして明子は目を閉じると深呼吸をして、空中を走りだした。
「簡単なことよ! 空賊船のバリアが回復する前に私が徹底的に破壊してあげるわ!」
 明子は砲撃によってバリアがはがれた部分から空賊船を魔法で攻撃し始めた。
 空賊船で激しい爆発が巻き起こる。
 すると明子に対して≪氷像の空賊≫が突撃してくる。
「ちぃ、しつこい!」
 明子は舌打ちしながら振り払おうと空中を駆け抜けつつ、≪氷像の空賊≫を攻撃する。
 無我夢中で戦っていた明子は、ふいに聞こえた大きな音で背後を振り返った。
 気づけば、いつの間にか空賊船の真横に来ていたのだ。
 空賊船から放たれた大砲が弾が明子の目の前に迫る。
「しまっ――!?」
 反応が遅れた明子が覚悟を決めたその時、目の前にサーシャが飛び込んできた。
 鼓膜が破れそうな音に続き、激しい爆発が巻き起こる。
 明子が反射的に塞いだ目を開けると、目の前にボロボロになったサーシャがいた。
「……助かったわ」
「まぁ、僕は……キミの、パートナーだから……仕方ないよ、ね」
 明子は苦しそうにしながらも笑って答えるサーシャの身体を抱きかかえる。
 以前からサーシャは自分の命にあまり価値を感じていないようだった。
 それでも今回はやりすぎだと思った明子は感謝しつつも、怒ろうかと一瞬だけ考え――今は怒らないでおくことにした。
「あんまり無茶しちゃだめよ。死んだら元も子もないのよ」
「……了解」
 明子はサーシャが動けることを確認して一端避難するように指示を出すと、落とされぬよう積極的に攻撃をしかけた。
 そこへ葉月 ショウ(はづき・しょう)が≪氷像の空賊≫を切り刻みながらやってくる。
「明子。大丈夫か?」
「まぁ、なんとか……。敵が多すぎるわ」
 空賊船に直接攻撃をしかけた明子を警戒してか、彼女と船の間には≪氷像の空賊≫が大量に立ちふさがり、大砲が常に狙ってきていた。
「俺も近づこうとしたんだが、弾幕が激しくて近づけなかったぜ」
「だったら、私が大砲を破壊してあげるわよ。援護頼める?」
「任せな。雑魚は俺に引きつける」
 ショウが≪氷像の空賊≫達の中に飛び込み、明子が絶え間なく魔法を空賊船に向けて撃ちつけた。


 一方、地上では魔鎧スノー・クライム(すのー・くらいむ)を装備した佐野 和輝(さの・かずき)が≪氷像の空賊≫を相手に凄まじい戦いを繰り広げていた。
「和輝、右からくるわよ」
「わかってる」
 和輝は向かってきた≪氷像の空賊≫をかわすと、足を引っ掛け転ろして頭に銃弾を撃ち込んだ。
 和輝は二丁拳銃を構えなおすと、黒いロングコートを揺らしてステップを踏みながら、テンポよくトリガーを引いていく。
 まるでダンスを踊っているかのような動きは、魔鎧の影響で外見が女性になっている今、衣装によってはバレリーナや踊り子のようにも感じられたかもしれなかった。
「これじゃ、いくら倒してもきりがないな……」
 和輝は【紅の魔眼】が上下左右せわしなく動かして、視認した≪氷像の空賊≫に次々と銃弾を浴びせた。
 上空からアニス・パラス(あにす・ぱらす)が声をかけてくる。
「和輝! そっち手伝わなくてだいじょうぶ?」
「大丈夫。アニスは消化作業に集中してくれ!」
 和輝はコートの下に大量の汗を滴らせながら、アニスに叫ぶ。
 和輝達の周りの建物は≪サルヴァ≫が引き起こした爆発の火が燃え移り、大変なことになっていた。
「アニス、回復いくですよぉ」
 アニスの肩に乗ったルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)が【驚きの歌】を歌い、回復を行う。
「ありがとうです! よぉし、和輝のためにも頑張っちゃうよ!」
 アニスをブンブン腕を振り回しながら、火のついた民家に【氷術】を放った。

「よし、こっちは完了!」
 目の前の屋台を破壊し終わったセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は額の汗を拭う。
 そこへパートナーのSFL0020133{#セレアナ・ミアキス}がやってくる。
「人の物を勝手に壊すのっては気が引けるわね」
「しょうがないわよ。このままじゃ被害が大きくなるだけだもの」
 セレンフィリティ達はこれ以上火が広がらないようにと、火の燃え移った屋台を破壊していた。
 セレアナが所々赤く染まる大通りを悲しそうに見つめる。
「人の家に爆発物を仕掛けるなんて、酷いことをしてくれるわ」
「そうだね。みんなの大切な家なのにね」
 セレンフィリティはたった数時間前の戦いの予感させ感じなかったのどかな≪ヴィ・デ・クル≫の街を思い出していた。
 すると、地響きを立てて≪氷像の空賊≫達が二人のもとへ向かってくる。
 セレンフィリティは≪氷像の空賊≫達がやたらと熱い視線を感じとった。
「そういえば、私達一応囮役なのよね」
「そうだったわね。どうする?」
「どうするって……応戦するしかないでしょ」
 セレンフィリティとセレアナは武器を構えた。
 すると、浴衣姿の椿 椎名(つばき・しいな)は屋根からセレンフィリティとセレアナの前に飛び降りてきた。
「その必要はないぜ! こいつらはオレがちゃんと殺してやっから、セレンフィリティ達はそのまま消火作業を続けろよ!」
 椎名は腰から剣を抜くと≪氷像の空賊≫達に向けて構える。
 ≪氷像の空賊≫達の視線が椎名とセレンフィリティ達を交互に見つめた。
 その視線は彼女達の胸の注がれていた。
 すると≪氷像の空賊≫達が椎名の胸を見て深いため息を吐いた。
 椎名の顔が真っ赤に染まる。
「てっめぇらぁぁぁぁ!!」
 椎名は剣を振り回しながら逃げる≪氷像の空賊≫達を追いまわした。

 砲撃を食らって焦ったのか、≪氷像の空賊≫達の数が徐々に増えてきていた。
 そのため、前線で戦う生徒達は苦戦を強いられ始める。
「あわわわわ、何かいっぱいおってきたぁぁ」
「アニス、急いで!」
 ≪氷像の空賊≫達の数が多くなり、和輝だけでは引きつけられなくなった敵がアニス達の所までやってきた。
 アニスは使い魔を召喚して戦いながら、必死に逃げる。
 それでも数で勝る≪氷像の空賊≫達は確実にアニスを追い詰めようとしていた。
 そんな時、アニスを捕まえようとした≪氷像の空賊≫に下から銃弾が直撃する。
「大丈夫……?」
 アニスが地上に目を向けると椿 アイン(つばき・あいん)が空に銃口を向けていた。
 アインは次々と≪氷像の空賊≫達を撃ちぬき、アニスを助けた。
「助かったぁ〜」
 アニスが感謝を述べると、アインはこくりと頷いていた。

「数が多すぎる!」
 ≪氷像の空賊≫達に囲まれた和輝は【クロスファイア】で周囲の敵を一掃しようとするが、状況は変わらない。
 じりじりと距離を縮めてくる≪氷像の空賊≫に焦りを感じる和輝。
 ふいに手に激しい衝撃が伝わる。 
 ≪氷像の空賊≫が投げつけてきた剣が銃に当たったのだった。
「……しまった!」
 和輝は剣が当たった衝撃で拳銃を落としてしまった。
 拳銃が≪氷像の空賊≫達の足元に転がり込む。
 和輝は一丁の拳銃で戦うことになり、さらに状況は悪化した。
 このままでは危険だ。
 和輝が隙を見て退却しようした時だった。
「どいて、どいて〜 どかないとはねちゃうぞ〜」
 ミニスカの浴衣姿をしたソーマ・クォックス(そーま・くぉっくす)が、≪氷像の空賊≫達を蹴散らして和輝の元までやってきた。
「お待たせ! 大丈夫かな?」
「そうでもない。拳銃を落としてしまった」
「なら、これを使って!」
 ソーマは背負ったリュックから銃を取り出すと和輝に渡した。
 和輝は感謝を述べて受け取ると、何度か握ったり構えてみたりしながら渡された銃の感覚を確かめていた。
 そこへ援護のためにアインが≪氷像の空賊≫の上を飛び越してやってくると、和輝の背に自分の背を合わせて立った。
「……銃の所まで援護します。背後は任せて」
「助かる」
「じゃあボクは切り込み隊長でもやろうかな♪」
 ソーマを先頭に和輝とアインは≪氷像の空賊≫を蹴散らしながら、落とした銃の元へ少しずつ横歩きしながら進んだ。
 進みながらソーマが楽しそうに和輝に話しかける。
「さのちんは可愛い服とかも似合いそうだね♪」
「勘弁してくれ」
「ドレスがいいですよぅ」
「いいね!」
 空中から聞こえるルナの主張にソーマが楽しそうに賛同していた。
 アニスとルナも和輝の援護にかけつけたのだ。
 そうこうしているうちにもう少しで銃に届く距離まで来た。
 和輝がソーマの銃をコートにしまう。
「今だ!」
 和輝は隙をみて駆け出すと、≪氷像の空賊≫達の間を抜けて自身の銃を掴みとった。
 そこへ襲いかかる≪氷像の空賊≫を、和輝は頭を掴んで拘束すると胸に銃口を押し付けて数発撃ちこんだ。
「やっぱり自分の銃が一番しっくりくるな」
 硝煙を上げる銃口を見つめ和輝がニタリと笑った。
「なんだ、あれぇぇ!?」
 ソーマの声に和輝が指さす方を見ると、四メートル近い≪氷像の空賊≫が向かってきていた。
 その≪氷像の空賊≫は、雄叫びを上げると手に持った斧を物凄い速さでたたきつけ、地面に大きなヒビ入れた。そしてもう一度天に向かって野太い雄叫びをあげた。
 アインが顔面を狙って銃を撃つ。しかし、銃弾は≪氷像の空賊≫の額にめり込んで止まり、貫通できなかった。
「効かない……?」
 弾が額の修復と共に吐き出され、地面の落ちた。
「先ほどの借りを返したい。俺にやらせてくれ」
 和輝はすたすたと≪氷像の空賊≫の前まで歩いていく。
 馬鹿にしたような目で見つめてくる≪氷像の空賊≫に、和輝は余裕の笑みを見せた。
 その態度が気に入らなかったらしく≪氷像の空賊≫は雄叫び上げると、勢いよく斧を振り下ろした。
「当たらないな」
 巻き起こる土煙のなか、和輝は≪氷像の空賊≫が振り下ろした斧の上に立っていた。
 和輝は捕まえようとしてくる≪氷像の空賊≫の反対の手をよけながら、その腕を駆けあがった。
 そして駆けあがった和輝は、くるりと後ろから首に足を絡ませてぶら下がると、後頭部に両方の拳銃を押し付け、引き金を引きまくった。
「貫けぇぇぇぇぇ――!!!!!」
 続けざまに放たれる銃弾。薬莢が乾いた音を立てて地面に落ちる。
 一発が駄目でも、数回に渡り同じ場所を通った銃弾は少しずつ冷たい氷の中を進み――そして銃弾が≪氷像の空賊≫の頭を貫いた。
 頭部が破壊され倒れる≪氷像の空賊≫。
 周りの≪氷像の空賊≫達は信じられないものを見たかのように後ずさっていた。
 地面に降り立った和輝は周囲を見渡していった。
「俺の邪魔をするな。邪魔する奴は全て殺す」