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リアクション
第三章
――開始から一時間経過が経過していた。
探索者、追跡者共に自分が居た場所を離れ、別の場所へと移動をしていた。
――教室棟1F、廊下にて。
「な、何だってんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ヤジロ アイリ(やじろ・あいり)は廊下を走っていた。
「首だぁ! その首よこせぇ!」
アイリの後ろには、顔を【光学迷彩】で隠した佐野 亮司(さの・りょうじ)が追いかけてくる。
「何だって顔無しなんかに追いかけられなきゃならないんだよぉぉぉぉぉぉ!」
追いつきそうで追いつかない、嫌らしい距離で亮司は追いかけてきていた。
「何か変な音が聞こえるな……」
「げっ!?」
アイリの目に、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)とクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)が映る。2人は出入り口付近にいたのだが、騒ぎを聞きつけてきたようだった。
「あ、エース! あれ……ってぎゃははははははははは!! な、何あれ!」
クマラがアイリを見て腹を抱えて笑う。
今現在、アイリはペナルティを受けて【男子用制服】の上に【胸がぶかぶかのビキニアーマー】を装着。顔には【鼻眼鏡】と中々カオスな格好をしていた。
「ん、どうした……ぶッ!? 何だあの格好は!」
エースもアイリの姿を目にし、噴出していた。
「こ、こっちは無理だ!」
その場でターンし、引き返す。
「あ! お、追うぞクマラ!」
「え、エースごめん……お、オレ……は、腹いたい……」
クマラは笑いすぎて過呼吸に陥っていた。
「と、とりあえずチャンスか……ってそうだったぁー!」
すぐには追って来れないと見たアイリが振り返ると、すぐそこには亮司がいた。
「首……ってなんだその格好!?」
一瞬素に戻る亮司。追いかける時背中しか見ていなかったので、アイリの格好は目に入っていなかったのだ。
「よ、よし! チャンス!」
亮司の横をすり抜けると、アイリの目にトイレが映る。
(こ、こうなりゃトイレに駆け込んで鍵かけて立てこもってやるか!)
急いでトイレに駆け込むアイリ。
「いらっしゃいませー」
そこには、微笑む神代 明日香(かみしろ・あすか)がいた。
――時同じくして、とある教室で。
(……なんだったんだ、アレは?)
椎名 真(しいな・まこと)外の様子を伺っていた。
彼が目にしたのは、首が無い体だけの亮司と、彼に追いかけられる【男子用制服】の上に【胸がぶかぶかのビキニアーマー】を装着。顔には【鼻眼鏡】とカオスな格好をしていたアイリだ。
(首無しも気になるが……あの走っていた、多分女の子は何者だ?)
同じ探索者の一人なのだが、真はそれを知る由も無い。
(とにかく、机で簡易トンファーを作ったし……ここに長居するわけにもいかなそうだ)
そう思い、真がトンファーを握り締めた。その時だった。
――がたり、とロッカーから音がした。
(何!? 誰か居るのか!?)
振り返った瞬間、如月 玲奈(きさらぎ・れいな)がロッカーから飛び出してくる。
「がおー……ってぎゃはははははははは!」
そして、真の顔を見るなり笑い出した。
「さっきのあれ、なんだったんだ?」
「いや、俺もよくわからん……」
「追いかけていたのに?」
「よく見えないんだから仕方ないだろ……」
エースとクマラ、亮司は女子トイレの前に居た。
アイリが駆け込んだため、捕まえようかと考えているのだが、女子トイレということに抵抗があるのと、先ほどのアイリの格好を思い出し躊躇っていた。
その時、扉が開く。
「それではお洋服は後でお返ししますねー」
「……それは返さなくていい」
アイリが出てくる。
「「「……え?」」」
エースと亮司が、言葉を失った。
――アイリの今の格好は、スクール水着だった。胸の辺りには平仮名で『あいり』と書いてある。明日香のペナルティだ。
「……なんだよ、笑いたきゃ笑えよ……」
すっかりやさぐれたように言うアイリだったが、3人が追ってこない様子を見ると、ため息を吐きつつ去っていった。
「……エース、あの中で何があったんだ?」
「俺が知るか……わかるか?」
「わかるわけねーだろ……ん?」
亮司が、物音を聞きつける。それは走ってくるような音だった。
「誰か来るぞ」
「よし、今度こそ捕まえるぞエース!」
身構えるエースとクマラに、【光学迷彩】を被る亮司。
そこに現れたのは、
「ふっ!? へひふぁ!?(訳、む!? 敵か!?)」
鼻の穴と下唇に割り箸が突っ込まれた真だった。
「「――ッ!?」」
エースと亮司が硬直する。いきなり鼻割り箸なんてした者が現れたら、そりゃ誰だってそうなる。
「ふぁ、ふぁはらんふぁいふぁがひゃんふふぁ!(訳、わ、わからんが今がチャンスだ!)」
エース達の横を抜け、真が去っていく。
「……なぁ、あれ」
「……言っておくが俺はしらねぇぞ」
絶句したエースと亮司は走り去っていく真の背中を見送っていた。
「……ひー……ひー……」
その足元で、クマラが呼吸困難になって倒れていた。
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