天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

迷惑な青い鳥

リアクション公開中!

迷惑な青い鳥

リアクション


7.破壊と終幕

 空京市内の、とあるパチンコ店。
「この台で打つなんてばかじゃねぇ? 出るわけねーだろ」
「はぁ?」
 的場凪(まとば・なぎ)は切れた。
 通りがかりの中年男性に突っかかり、負け続けの鬱憤共々ぶつけてやろうと首根っこを掴む。
 すると隣の台で打っていたミートン・チェンバース(みーとん・ちぇんばーす)がすぐさま止めに入った。
「駄目だよ、凪! お店に迷惑、が……って、凪?」
 周囲の様子がおかしいことに気づき、凪は男性から手を離した。
「何か変だな。やけにみんな、酔っぱらってないか?」
「え……そういえば、確かに」
 携帯電話を取りだしてネットに繋いだ凪は、すぐにその原因に行き着いた。
 そしてにやりと恐い笑みを浮かべる。
「青い鳥か……よし、少し憂さ――いや、街の平和のために行くぞ」
「え、ちょっとコインの換金とかどーするの!?」
 ミートンの言葉も聞こえていないのか、さっさと出ていってしまう凪。
 仕方なく彼を追いかけることにして、ミートンは残ったコインすべてを先ほどの男性に渡した。
「さっきはすみませんでした。それじゃあ」

 新しいテレビを求めて空京へやって来た紅護理依(こうご・りい)とビスタ・ウィプレス(びすた・うぃぷれす)。
「家電量販店はどこにあったかな」
 と、賑わう街中を歩いていると、前方から青い鳥が飛んでくるのが見えた。しかも、誰かに追いかけられているようだ。
 飼ってた鳥が逃げ出したとか、そんなことだろうか……と、思う理依。それにしては、さっきから街の中がうるさいような気もする。
 あまり気にせずにいたら、青い鳥が理依の目の前へとやってきた。
「うわっ」
 想像以上に低い高度で飛んでいた鳥に何かを吹きかけられ、思わず咳き込む理依。
「大丈夫ですか、理依様っ」
 と、心配するビスタだが、顔を上げた理依は向かってくる凪に見とれていた。
「あ、あれ……なんか、ドキドキ、する……」
 恋だ。
 構わずに青い鳥を追いかけて行く凪に慌てて声をかける理依。
「ちょっと待って、そこの人!」
「あ?」
 足を止め、振り返った凪。理依は彼に近づいていくなり、ぎゅっと抱きついた。
「す、好きです……」
「……」
 凪が動きを停止した。あとから来たミートンも目をぱちくりとさせている。
「り、理依様っ」
 何が起きたのかと慌てるビスタ。きっと、あの鳥に吹きかけられたものが原因だろうが、こんな理依の姿は初めてだ。
「凪、しっかりして! 青い鳥行っちゃうよ!」
「……あ、ああ、そうだよな! 悪いな、まだ目的が達成できてねぇんだ」
 と、理依の腕を抜け出る凪。ミートンの後を追って再び走り出す。
 理依はすぐさま彼を追った。
「待って! もっといろいろお話を――」
 その直後、彼女の頭に落ちる剣の柄。理依は意識を失った。
「まったく、理依様ったら……一体、何だったんでしょうね」
 と、地面に倒れた理依を見下ろすビスタだった。

 トレルは八雲と手をつないで歩いていた。その間、ずっと彼に向けて喋りかけており、素直にナールの効果がいかに恐ろしいか、周囲に思い知らせていた。
 騒動のきっかけとなった講堂へ訪れた天音たちは、その惨状に声を失った。
 ラルクを初めとする全員が全裸になってお祭り騒ぎになっている。
 ここにも解除薬を必要とする人がいるとは……。天音はふと、中を飛び回っている鳥がいることに気がついた。その内の一匹には見覚えがあり、そっと腕を上げてみる。
『蒼い鳥』はすぐに主の元へ帰ってきた。しかし、天音の肩には先ほどからずっととまっている鳥がいる。
「じゃあ、今肩にとまっているのは……」
 と、天音はその青い鳥を優しく捕まえ、トレルへ向けた。
「被害者を増やすのは忍びないから、確認だけさせてくれるかな?」
「は、また俺なの? 嫌だけど、嫌っていってもやるんだろ? やれよ、早く!」
 噴射されるのにも慣れてきたのか、トレルはそれを素直に浴びた。
 すると、八雲とつないでいた手を離し、その場にがくっと両膝をつく。
「つ、疲れた……厄日だ、今日は」
 いつものトレルに戻ったようだ。
 ということは、天音は知らずに解除薬の入った青い鳥を肩に乗せて歩いていたということか。なんて強運の持ち主だろう。
 天音は青い鳥の足に解いたリボンを結ぶと、酔っている人々に薬を吹きかけ始めた。

「ここで待ってろよ、いいな?」
 と、少しは酔いも落ち着いてきたアニスをベンチに下ろし、和輝は『トレジャーセンス』で見つけ出した青い鳥に向かって行く。それは解除薬の充填された鳥だった。
 両手に持った『曙光銃エルドリッジ』をしっかり構え、狙いを定める。
「壊れろ!」
 と、和輝が引き金を引くと、青い鳥にさっとかわされてしまった。さすがに空を飛んでいる相手を撃ち落すのは難しいようだ。
『侵食型:陽炎蟲』により脚部を強化し、構造物を利用する形で距離を詰めていく。
 そして確実に仕留められる距離までいくと、反対側から何者かが鳥に向けて石を投げてきた。凪だ。
 容赦なく石を投げ続ける彼の攻撃を避けていくうち、青い鳥に隙が出来始める。
 その一瞬を見極めて、和輝は撃った。見事命中し、地面へ落ちていく機晶ロボット。
「あっ」
 青い鳥を手にした和輝に、凪が悔しそうな顔をする。
「くそっ、俺の邪魔すんじゃねぇよ!」
「悪いな、どうしてもこいつが必要だったんだ」
 見たところ、凪の顔には必死さがない。パートナーと思しき獣人の少女にも異常は見られないし、和輝が手にして当然だった。
「だが、お前のおかげで撃ち落とせた。ありがとう」

 リカインは、式神の回収した中から解除薬の入った青い鳥を見つけ出していた。
「これで騒ぎもどうにかなるわね」
 と、その青い鳥を手に、今度は被害者たちへ薬をかけて歩いていく。
 彼女たちの地道な努力で被害の拡大は防げたようだが、まだ空には青い鳥が飛んでいた。
 それも回収しようとリカインが『トラの毛皮』へ振り向く直前、別の方向から来た真が『霜橋』を青い鳥めがけてトランプのように飛ばした。
 翼を切られた鳥はバランスを崩し地面へと落下する。
 真はその青い鳥を捕まえると、遅れてやってきた四季を見た。大きなクマのぬいぐるみを抱いた姿は可愛らしいが、誰が見ても酔っていることが分かる。
 彼女に薬をかけるか否かで悩む彼を見て、リカインは駆け寄った。
「解除薬ならここにあるわよ」
「えっ?」
 ぱっと振り返った彼に自分の手にした青い鳥を差し出すリカイン。
「中に何が入っているか分からないでしょう? それはこっちで回収させてもらうわ」
「ああ、ありがとう。助かったよ」
 と、真は解除薬を四季へ吹きかけた。

 解除薬を手にした者たちにより、青い鳥の騒動は無事に終わりを迎えることが出来た。
 何体か破壊されてしまった鳥もいたが、それはルパート教授たちの責任だ。
 次回の技術交流会ではこんなことがないよう、今後は気をつけることになるだろう。
 トレルの企みも結果的には阻止され、空京の空は今日も平和に暮れていった――。

 ふと、目を覚ました白花は刀真に抱きしめられていることに気がついた。
「っ、刀真さん?」
 耳元で聞こえる整った寝息。こんな姿を見るのは初めてだ。――もしかすると自分が思うよりも、自分は彼に想われているのかもしれない。
「……」
 白花は嬉しくなって微笑むと、もう一度両目を閉じた。

担当マスターより

▼担当マスター

瀬海緒つなぐ

▼マスターコメント

お疲れ様でした。
ご参加下さり、ありがとうございました。

青い鳥の起こした影響は、悪いものだけではないようです。
それぞれ、ちょっとずつ何かが変化したのではないでしょうか?
トレルのような例外もありますが、やっぱり青い鳥は幸福を呼ぶのかもしれませんね。

それでは、またの機会にお会いしましょう。
ありがとうございました。