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空京古本まつり

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空京古本まつり
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リアクション

 弥涼 総司(いすず・そうじ)の雅羅ショップはそこそこの盛況を見せていた。
 特に季刊 エヌ(きかん・えぬ)の雅羅コスプレは人気で、本人が見れば怒りそうなポーズも取って写真撮影に応じている。
「同人誌やグッズより、撮影会の売り上げが多いとはな」
 総司は意外な売れ行きに嬉しさを隠せなかった。しかし悩みの種もある。
「雅羅さんはいつ来るんですか?」
 本人が来るなどとはどこにも書いていないにも拘わらず、当然の事実のように聞かれた。
 それに対して、つい「えっと、午後だったかな」と答えてしまっている。
「おお! これはレアな同人誌です!」
 新しい客かと思って顔をあげると男女の2人組みだった。
「まだ買うのか?」
 健闘 勇刃(けんとう・ゆうじん)は同人誌と見れば買いまくるアニメ大百科 『カルミ』(あにめだいひゃっか・かるみ)に呆れていた。
【セクシーコンパニオン外伝 エロいよ!! 雅羅さん】なんて初めて見ました。これは読む用、保管用、布教用に3冊買いますよ。この時のためにお金をためてきたんですから」
 総司は「ありがとうございましたー」3冊袋に入れてお金と引き換えに渡す。
 
 雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)高円寺 海(こうえんじ・かい)も古本まつりの会場を見て回っていた。
 海は雅羅の高飛車な物言いにムッとすることはあるものの、会場の雰囲気は気に入っていた。
「ましゃー!、かいー!」
 叫び声をあげながら、2人に向かって走ってくるの男が見える
「うおっ!」
 そいつは海に飛びついてきた。
「海、あなたやっぱりそういう趣味がありましたのね。道理で私に……」
「お前に?」
「いえ、何でもありませんわ。その方、お知り合い?」
「そっちこそ、“ましゃー”ってのは雅羅のことだろ?」
 海が引き離して顔を見るとカイナ・スマンハク(かいな・すまんはく)だった。
「離れろ」と言うと、「ごめん」と落ち込んで10メートルほど離れた。だがすぐに立ち直って2人を見る。
「お前らは……あ、でーとか! でーとだな!」
「「デート!」」
 雅羅と海は揃って大声を出す。
「なんで俺がこいつと……」
「私だって単なる荷物持ちですわ」
「やっぱりそうだったのか」
「そのくらい良いじゃないの」
「仲いーな。でーとって仲のいい奴と出かけることだろ?」
 カイナに言われると、どちらも口を閉ざす。
「ところでましゃーは本たくさん読むよな。なんか面白い本ないか? どっきょー文書かなきゃいけないんだ。桃タロウじゃダメなんだって。面白かったのに」
「桃太郎ではちょっとねぇ」
「じゃあ、浦島太郎や金太郎でどうだ?」
「それもちょっと……一休さんはどうかしら?」
 相談された海も「ん?」と思うが、雅羅が持っていた本は題名が『一休宗純』の伝記だった。
「一休さんなら良いんだな。よーし、買って読んでみる!」
 カイナは代金を払うと、本を掲げて大喜びした。
「ところで、ましゃーはお店を出してるんだな。なんか儲かってたぞ」
「私が? 店を?」
「うん、あっちにあったぞ」と弥涼 総司(いすず・そうじ)の店の方角を指差す。
「じゃあ、儲かったら俺にご馳走してくれよー」
 カイナは走っていった。
「一休さんは一休さんだが、理解できるのか?」
「さぁ、海は読んでみます?」
「……遠慮しとく」
「それより私の店と言うのは気になります。行きますわ」
 ここでも海に有無を言わさず歩き出した。