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リアクション
もう一人、テロには一切の興味を示さずただただ己の欲望のためだけにここパラミアンにきていた人物がいた。その名前は国頭 武尊(くにがみ・たける)。
彼の目的はそう、水着の女性たちを見るために、否、更にその先を見るために来ていたのだ。彼の持ち物の一つ「邪気眼レフ」の効果さえあれば彼にとってパラミアンは天国になるのだった。
そのために苦労してこの「邪気眼レフ」をプールにまでもってきて装着して、オープンカフェのテラスで待機していたのだ。本当は他にも自然を装うためのアイテムをもってこようとしたのだがプールにいた検査員にストップをかけられて今に至るわけだ。
どうにかこうにか本命アイテムだけは隠し通し既に装着していた。本来なら今彼は天国の光景を見ているはずたった。だが現実は違った。
「テロリストよ、お前らが何をしようが構わん。俺の知ったことではない。だが、俺の周りを囲むのはやめろ! お前らの下のシャツなんかに興味ないわ!」
残念ながら起きてしまったテロのせいで彼はテロリストに囲まれ、むさい男の下のシャツしか見れていなかったのだ。
「というかお前! なんでその迷彩服の下に直接ブラなんかつけてるんだ! そういう趣味を否定する気はないがテロするときくらいはビシっとしろよ!」
「な、なぜそれを!」
「おい、あいつそういう趣味なのかよ」
「これから話すのは控えよう」
「ち、違うんだ!? 話を聞いてくれみんなぁ!」
「お前らのいざこざなんてどうでもいいから水着の女性を見せてくれー!」
欲望のままに行動をしていたはずの武尊だったが結果的にはテロリストたちの仲たがいに一役をかってしまうのだった。ちなみにこの後も水着の女性たちは現れず武尊の夢は打ち破れたのだった。
武尊の一騒動をきっかけに徐々に動き出す場の状況に炎のように突貫する者が一人。フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)だ。
彼女は来るバレンタインにもこんなくだらないことで二人の時間を邪魔されたことにも怒っており我慢できなかったのだ。テロリストたちの元へとカプセルで収納していたバルディッシュを解放して向かっていく。
その傍らにはパートナーであるリネン・エルフト(りねん・えるふと)がいた。リネンはフェイミィと一緒にプールを楽しんでもらおうと思ってやって来ていたのだが、運悪くテロリストたちと鉢合わせてしまい更にテロリストたちの要求がフェイミィには気に食わず、もう手がつけられない状況になってしまっていたのだった。
「フェ、フェイミィ? 本当にやるの?」
「ああ。もう我慢の限界なんだ、許してくれ」
「そ、そう」
せっかく楽しんでもらおうと思っていたのにこんなことになってしまって気落ちするリネン。それを見て少しだけフェイミィが足を止め言葉をかける。
「さっきまでは楽しかったよ。ありがとう」
「え、そう?」
「ああ。それと人質がいるみたいだからそっちは頼む、そこまで面倒みきれん」
「わ、わかったわ。フェイミィも無茶はしないでね?」
「善処する」
そこで一緒にいた二人は二手に別れる。フェイミィはそのまままっすぐテロリストたちの元へ、リネンは右手から回って人質を助ける算段だ。明らかな闘気をまとい、バルディッシュを持ったフェイミィの異常さに気づきだすテロリストたち。
「おい、そこのお前! やる気か?」
「だったらどうなんだ?」
フェイミィの間合いまでもう数歩というところだ。リネンは不安になりながらも息を潜めて回り込んでいた。
「フェイミィ、すごく怒ってるよ。テロリストさんたちに申し訳ない気がするけど、これも人質を救出するため……」
そう思いながら心を痛めるリネン。フェイミィの気持ちを知っているからこそ彼女も辛いのだ。
「なあ、お前ら知ってるか? 義理と分かりきってるチョコを大好きな笑顔を見させられながら渡される苦しみってもんをさ……!」
「お、俺たちなんてもらったことすらな」
「それならそれであきらめもつくだろうが、こっちはそうもいかねぇんだよ!」
ついに限界が来たフェイミィはバルディッシュを振り回してテロリストたちと戦い始める。それをみたリネンはすかさず人質の所へと走る。
「みなさん、ご無事ですか? さあ安全なところへといきましょう」
そう言って急がず焦らず音を立てずリネンは人質を解放していく。人質にされていた人数も少なかったので特に問題なく救出は完了したのだ。
しかしフェイミィはとまらず、テロリストたちをばったばったとなぎ倒していく。
リネンはどうすればいいかわからず人質のいた場所で少しの間そのやりとりを見ていたが、はっと我に返り人質の誘導をするため人質たちのところへと行くのだった。
一方リネンの手によって解放された人質たちのところへ来ていたのは、ライフガードのバイトをしていた椎名 真(しいな・まこと)だ。真は人質たちの心労を少しでも和らげるために動いていた。
「みなさん、お疲れでしょう。この先にテロリストたちの目から外れている空き部屋がありますので、そちらのほうで待機していてください。何か要望があれば俺になんなりとお申し付けください」
「あの、貴方は?」
後ろからやってきたリネンに声をかけられた真。
「椎名真と言います。人質になった人たちも疲れているだろうと、心労を軽減するために動いているものです」
「なるほど、ではここはお任せしてよろしいでしょうか?」
「平気です。早くお連れの方の下へと行ってあげてください」
「ありがとうございます。それは後はよろしくお願いします」
それだけ言ってリネンはフェイミィの所へと引き返すのだった。一方の真は人質たちを空き部屋へと誘導。空き部屋には既に何人かの人質たちがいて羽を休めていた。
「ここで待機していてください。私は少し周りを見てくるのと、何か飲み物でも持ってきますので」
言い残して真は空き部屋を後にする。いくら過激なことはしないからと言っても腐ってもテロリストだ。一般人では疲弊するのは当然だった。その疲弊した人たちの支えになればと思い真は行動していたのだった。
その真の元へ丁度聡と翔がやってきた。
「見事な誘導だ。ここならまず見つかる心配もないしな」
「君たちは?」
「俺たちはこの事態の収拾をはかってるところだ」
「それなら、この先人質がいたらこの空き部屋のところへ来るように言ってもらえないか? まだまだ空きはあるし、近くにもまだあるから」
「了解した」
「それと、さっき人質の人から聞いた話だけどこの先のまた別のプールのほうがテロリストの数が多いらしい。気をつけてくれ」
「そりゃ素敵な情報だな。有効活用させてもらうぜ、それじゃあな!」
真から情報を聞いた聡と翔はそのままいなくなった。真も飲み物の調達をするために密かに行動するのだった。
救出された人質の中にはプールに遊びに来ていたノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)がいた。本当はおにーちゃんと呼んでいる御神楽 陽太(みかぐら・ようた)と来る予定だったが、生憎陽太の仕事の都合がつかずノーン一人で来ていたのだった。
空き部屋でしばらくじっとしていたもののつまらなくなってしまったノーンは空き部屋をこっそりと出てしまう。
「さっきの人には出ちゃだめだって言われたけどなんかイベントやってるみたいだし、ワタシもみたいし、ちょっとだけ……」
「おい、そこの嬢ちゃん何してる?」
といきなりテロリストに見つかるノーンだったが、ノーンはテロリストのことをスタッフの人と勘違いしていて、普通に話しかけるのだった。
「えっと、ちょっとお手洗いに行ってて」
「そうか、だけどあんまり一人で動き回ると危ないからこっちにおいで。そこにみんなもいるからな」
「はーい」
そのままテロリスト兼スタッフの人に連れられてノーンはまた人質へと戻ってしまうのだった。
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