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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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第13章 3時間目・実技タイム

「ざっくりと説明しましたがぁ〜、皆さんちゃんとノートにメモしてくれましたかぁ〜?これより実技に入りますぅ!」
「えーと誰かにするかな。―…じゃぁ、エリシア・ボックとノーン・クリスタリア。教壇の近くにきてくれ」
「一番手はわたくしたちですわね」
 ラスコットに呼ばれた2人は階段を下りる。
「教えた通りに、使い魔を呼び出してみて」
「魔方陣は床に描いてもいいんですよね」
 エリシアはチョークで丸い円を描き、花を思わせる模様を描く。
「お絵かきみたいで楽しいかも」
 円を描くところまではエリシアと同じだが、その後は心の向くままに、ピンクや緑のチョークを使って描いてみる。
「呼び出す時の魔方陣はずっとこの形なの?」
「図柄が異なっても大丈夫ですしぃ〜。前回は地面で〜、今回は紙に描いちゃいました〜とーいうこともおーけーなんですぅ」
「状況に応じて変更出来るってことかなー」
「ノーン、描けましたの?」
「うん、おねーちゃん」
「次はいよいよ、使い魔を呼び出すんですのね。ところで校長、祈りの言葉は何でもいいんですの?」
「聖杯を手にしてゆっくりとイメージしてみてくださぁ〜い。お菓子ください〜とかはいけませんよぉ〜」
「分かりましたわ!」
 そう言い終わるとエリシアは聖杯を掲げ、目を閉じて祈る。

 “傷つき苦しむ者のため…、慈悲の悲しみの涙を分け与えてなさい…。
 いただく対価として、あなたにわたくしの祈りを捧げます。
 わたくし血は、あなたの涙に溶け込み…、つながりを示す証となるでしょう…。”

 エリシアの祈りが通じ、虚空から涙が1粒、聖杯へ零れ落ちる。
「後は、これを魔方陣に落とせばよいのですわね」
 親指を噛み、その中へ1滴だけ零す。
 ワイングラスを回すように、ゆっくりと揺らして血と涙を混ぜる。
 聖杯を傾け、魔方陣の上へぽたりと落す。
 魔方陣の中央から植物の茎が伸びたかと思うと、先端に大きなつぼみが現れる。
 赤色の花のつぼみは徐々に人のような形となり、20前後の女性の姿へと変わった。
 細身の身体には、フリージアのように裾が開いた、鮮やかな赤色のドレスを纏っている。
「あなたが私の主?」
「えぇ、そうですわ」
「フフ、聡明そうな魔女さんね。よろしく、エリシア」
「わたくしの名前が分かるんですの?」
「えぇ、血の情報のおかげで、あなたのことが分かるのよ」
「こちらからの自己紹介は必要ありませんわね。こちらこそよろしくですわ」
「いいなー、おねーちゃん」
 自分もエリシアのようにクローリスを呼び出そうと、魔方陣の完成を急ぐ。
「校長、クローリスが催眠術で眠ってしまったノーンを起こせるか、試させてほしいんですわ」
 ノーンに聞こえないよう、声のボリュームを下げて言う。
「構いませんよぉ〜」
「ではさっく試しますわ。―…ノーン、手を止めてわたくしの目を見なさい」
 エリザベートに許可をもらったエリシアは、ノーンを振り向かせる。
「えっ、おねーちゃんの目を見るの?」
「視線を逸らさずに、じーっと見るんですのよ」
「うん。うぅ…なんだか眠くなってきちゃった…。―…すびー、むにゃむにゃ」
 明け方まで遊んでいた睡眠不足の影響で、すぐにヒプノシスにかかり、深い眠りについた。
「クローリス、ノーンを起こしてみなさい」
「この女の子を眠りから覚ませばいいのね?」
 人差し指で自分の唇をそっと撫でると、紅の粉のようなものが指につく。
 それをノーンの方へ撒くと、甘酸っぱい果実のような香りが漂い、少女の身体へ降り落ちたものは、身体に浸透するように消える。
「!?」
 目を覚ましたノーンが、パッと床から起き上がる。
「ここ、どこだっけ?」
「上手くいきましたわね」
「あっ、そうか…。おねーちゃんがヒプノシスかけたんだね」
 ほんの少しだけ、エリシアを恨めしげな目で見る。
「(あれがクローリスか。花の使い魔の名の通り、なかなか美しいな)」
 実技の様子を見ていたクリストファーが思わず息を呑んだ。
「魔方陣を消しても使い魔は消えませんので〜。元いた場所に戻っていいですよぉ〜、と伝えてください〜」
「分かりましたわ。クローリス、あなたのあるべき場所へ戻りなさい」
「もう帰っていいのね?じゃあね、エリシア」
 そう言うと花の使い魔は姿を消し、魔方陣から伸びていた茎も消え去った。



 エリシアとノーンが席に戻ると、今度はエリザベートがロザリンドと終夏を呼ぶ。
「あなたは紙に描くんですね?」
「家で復習出来るようにね」
「確かに、手元にとっておくという手もありますね。私も参考用として、紙にしましょう」
 教壇の上に予め用意されている用紙を掴み、持ち運びやすいサイズを選ぶ。
 紙に魔方陣を描き終えると、彼女たちは聖杯に祈りを捧げる。
 ロザリンドは心に護りたい人たちを思い描き…。
 
 “罪を犯し、人々の幸福を脅かす者の手から救う力を、どうかこの私にお貸しください…。
 あなたが涙を与えてくれる時まで、大切な人々の笑顔を守るため、私は祈り続けます。
 供物として捧げる1滴の血は、供物としてあなたに差し上げます…。”

 後ろ暗さや曇りのない祈りに、涙が聖杯の中へ零れ落ちる。

 終夏の方も聖杯を掲げ…。

 “罪み無き者を、苦しみ中から助ける力を貸してほしい…。
 私の祈りが届き、良き仲間として認めてくれるなら、涙をほんの少しだけ私に与えて…。
 与える血は私との絆の雫…。”

 彼女の穢なき純粋な思いが届いたのか、これから使役するであろう者の涙を得る。

 自分の血と涙を混ぜると2人は、紙に描いた魔方陣にそれを落とし、花の使い魔を呼び出す。
 花のつぼみは人のような姿へと変り、ロザリンドの使い魔は、薄いピン色のサザンカを思わせる、若く美しい女性の容姿だ。
 終夏の方は可愛らしいカスミソウのような少女で、すぐに終夏のことを気に入ったらしく、彼女の肩へ飛び乗る。
「クローリスにもいろんな姿の者がいるんですね」
「私の使い魔は、この小さな女の子だね」
「あんたがアタシの主なのー?」
「ううん、ちょっと違うかな。仲間や相棒になってもらいたんだよ」
 小さくかぶりを振り、自分の思いを伝える。
「ふぅ〜ん。おともだちーってこと?」
「そんなところだね」
「わぁーい♪おともだちー、おともだちー♪」
 無邪気で幼い花の使い魔は、彼女の肩の上で元気よくはしゃぐ。
「ロザリンド、あなたと私は主従関係でよいのかしら?」
「まだ決めていませんが、気軽に接してくれて構いませんよ」
「えぇ、そうさせてもらうわ」
 ロザリンドを主と認め、にっこりと微笑みかける。
「2人とも、使い魔の呼び出しに成功しましたねぇ♪実技を行ってもらう次の生徒を呼びますので〜。使い魔に帰るように、伝えてくださぁい」
 エリザベートの声に軽く頷いた2人は、元の居場所へ戻るように伝える。



 実技を終えたロザリンドと終夏は席に戻り、最後に綾瀬とベリアリリスが校長に呼ばれる。
「先ほどの方たちは、クローリスを使役するんですのね」
 花の香りばかりだったため、何の使い魔が呼び出されていたのか綾瀬にも分かる。
「もしかして、召喚する使い魔が同じだったりする?」
「おそらくあなたの予想通りかもしれませんが。性格や容姿まで同じとは限りませんわよ?」
「実技もまもなく終わりそうですわね」
 他の者が使い魔を呼び出す時の雰囲気や、使役するその魔性の容貌などを、シャンバラ電機のノートパソコンでエリシアが記録する。
 綾瀬は下準備や儀式の流れ、召喚した使い魔の制御方法・使い魔の帰還方法などをもう1度、2人の教師に確認すると、まずはチョークで床に魔方陣を描き始める。
「(あれー、僕だけ待ち時間が長い気がする…)」
 彼女よりも先に準備を終えたベリアリリスが、召喚の祈りの言葉を捧げ始めるが、聖杯の中に涙が落ちる気配はない。
 パートナーであるリゼネリの表情が、だんだん鬼の形相へと変貌する。
「(ベリアリリスめ…。ちゃんと真面目に祈っているのか!?)」
「(やばい…。失敗したら殴られるどころじゃすまないかも…っ。ぅー…、お願い…お願い、涙を聖杯にちょうだいっ)」
「はぁ〜…なんとかもらえたようだが、まるで慈悲の涙だな。50点に減点だ」
 虚空に小さな水滴が現われ、ベリアリリスが持つ聖杯に零れ落ちる瞬間をリゼネリが見る。
 虫や蛇を操る時に役立つかも…という、雑念の影響で他の生徒よりは遅くなってしまった。
「こんばんは、ベリアリリス」
 紅葉のように赤々とした髪色の女の子の姿だ。
 召喚に応じたポレヴィークはリゼネリとは魔逆で、性格は穏やかそうだ。
「(第2のルヴェじゃなくってよかった…)」
 そもそも基本的には主に従順なわけだし、術者であるベリアリリスに、乱暴なことはしないのだろう。
 彼がほっと安堵する中、綾瀬は聖杯に涙を得るため、祈りの言葉を捧げている。

 “草よ…樹よ…、生命を汚そうとする者から、守る力をお与えください。
 私の祈りはあなただけに差し上げましょう。
 ―…この聖杯に、僅かな涙をください。
 この私の血は、あなたへのせめてもの捧げ物であり、罪を犯す血ではないという証。”

「聖杯に涙が…!」
 綾瀬が掲げる聖杯へ零れ落ちたその時、ドレスは小さく声を上げる。
「ワンステップクリアですわね。次の段階に移りましょう」
 涙と血を混ぜ、床に描いた魔法陣へ落として使い魔を召喚する。
 そこから現れたポレヴィークは、ブルーベリーのような丸い飾りを髪につけ、淡い緑色のローブを纏った少女の姿をしている。
「わたしのご主人は綾瀬様ですね?」
「えぇ、私ですわ。手始めに、テーブルにある私のノートを、取ってきてくださらない?」
「かしこまりました!」
 ポレヴィークは枝から下り、素足でぺたぺたと教室内を歩いて、綾瀬のノートを抱えて主である彼女の元へ届ける。
「確かに…私のノートですわね」
 使い魔から受け取ると、手に触れて自分のものか確かめる。
「エリザベート校長、私に何か投げてください。きちんと私を守れるか、試してみますわ」
「分かりましたぁ〜!!」
 箱の中のチョークを掴み、無遠慮に数本投げつける。
「ポレヴィーク、私を守り抜いてみせなさい」
「全力で綾瀬様をお守りいたします!」
 身体に生やした枝でチョークを絡めて主を守る。
「有難う御座います、お疲れさまでした」
「またいつでもお呼びくださいませ」
 使い魔はぺこりとお辞儀をして帰還した。
「用事もないし、帰っていいよ」
「ではでは〜失礼いたしますー」
 ベリアリリスに命令された使い魔も姿を消して帰る、



 席に戻ったベリアリリスは、召喚に成功したのにも関わらず腹を、減点分力いっぱい殴れる。
「酷いよー…」
「フンッ、てめぇがもたついたからだ」
 呻くパートナーを放置して、教師たちの方へ顔を向ける。
「美しい者もいれば、可愛らしい少女のような姿の者もいたね」
「それぞれ容姿が違うみたいだよ。クローリスとポレヴィークの能力も見れたし、授業を受けておいてよかったね」
 生徒たちの実技の様子を眺めていたクリストファーとクリスティーの2人は、使い魔の印象や感想を言う。
「今日の授業はここまでですぅ〜」
「想像していた以上に楽しかったですわ。次回も是非参加させて頂きたいものですわね」
 綾瀬は校長に礼を言い、教室から去っていく。
「それでは皆さん、忘れ物などがないよう、気をつけてお帰りくださ〜い♪」
 エリザベートは生徒の名前を記載した名簿をパタンと閉じる。
 室内に生徒たちが残っていないか確認すると、照明スイッチを押し、教室内の明かりを消した。

担当マスターより

▼担当マスター

按条境一

▼マスターコメント

皆様、お疲れ様です。

祈りの言葉は一定ではありませんので、ある程度変えてしまって大丈夫です。

使い魔の性格などは1体につき、1種類としてください。
今回はマスターの方で設定しましたので、こちらもある程度変更可能です。
変更後はそれで固定になります。
180cm以上の巨体や、ミクロサイズなど小さすぎる設定も不可なので、ご注意ください。

それではまた次回、シナリオでお会いできる日を楽しみにお待ちしております。