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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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第5章 1時間目・実技タイム

「おかえりなさい、マスター。お見事でした」
「さっきの方法、覚えたか?まず、宝石の野力を理解して、それから…。―…おい、本当にちゃんと見てたのかよ。」
 頷くばかりのマイペースなフレンディスが、ちゃんと実技を見ていたのか疑う。
「え…はい!見てましたよ、ノートにも書き込みましたし…」
「見て書くだけじゃなくって、触れて理解するところに到達しないとな」
「ええっと、扱えないと理解するのは…」
「(鈍感だから気づかねーだろーなー……)」
 ちょっとの努力で面白い上に、便利な宝石が手に入りやすい環境だし、フレンディスにも覚えてほしいのだがまったく気づいてくれない。
「どの宝石にも何かしらの力が宿っていると、母様からも伺った事ありますが。…不思議ですよね。持っているだけで安心しますし」
「ダイヤモンドには、ペンダントで発揮出来る効力はないけどな」
「何も入っていないのも寂しいので…。気分ですよ」
 目敏く発見され、顔を真っ赤にしてペンダントを、両手で隠した。



「あぁ…こっちを見ないで、エリザベート校長…っ」
「大人しく授業を聞くだけで十分ですっ」
「(ぁ…主みたいな人がいますね)」
 すぐ近くで郁乃と同じように祈り続けているレイカをマビノギオンが発見する。
「あわわ、私の方じっと見てない!?」
「指名されたらいってください。そして、失敗してもへこまないように…」
「皆の前で失敗とか、拷問すぎるわっ」
「失敗…。成功の元と聞いたことがありますが…。失敗は失敗、ピンチはピンチでしかありませんよ…」
「それ分かるー!」
「意見が合う方がこんな近くにいるなんてっ」
 指名されたくない2組の間に、新たな友情が芽生えつつあった。
「ぇっと、蒼天の書 マビノギオンさんと…」
「ぎゃぁあ、私も呼ばれるフラグ!?」
「火村 加夜さんとフレデリカ・レヴィさん、パートナーの方々はこちらへ集ってくださいねぇ」
「はぁ〜…よかった」
 緊張の糸がほぐれきり、だらんとだらしなくテーブルに突っ伏す。
「魔力を引き出すコツなどはあるんですか?」
 せっかく実技を受けるなら、もう少し効率よく扱える方法を知ろうと加夜が講師に聞く。
「宝石に宿る魔力の気の流れを理解しないとね」
「光の力を試してみます。(こうして触れているだけでも、心が穏やかになっていく感じがしますね)」
 エレメンタルケイジに触れ、器であるペンダントを通し、ホーリーソウルの癒しの力が指先から伝わる。
「魔性に憑かれていた影響で、弱っている動物の精神を回復してみて」
「はい!」
 小さな生命を守れないようでは、大切な人々を守るのは困難だ。
 苦しそうに横たわるハムスターの傍へいき、守りたい大切な人たちを思い浮かべ、宝石に思いを込めて祈る。
「(大切な人たちを守りたいんです!光の宝石…、この小さな命を助けてあげてくださいっ)」
「―……?」
 ハムスターは瞼を開き、丸い目で加夜を見上げる。
 自分の身に何が起こっていたのかも忘れたのか、もしゃもしゃとエサのひまわりの種を頬張った。
「もう回復してしまったんですか!?」
「程度によるかな?ダメージが酷い場合、それだけ時間もかかるし。被害に遭った生き物は他にもいるんだけどね」
「症状の重い子は今のところ、私たちが担当しなければいけませんからねぇ〜」
「その中で回復させやすい状態の動物を選んだんだよ」
「なるほどですね…」
「加夜、私も成功したわ」
「おめでとう、蓮花!」
 大切な人を守るエクソシストとしての一歩を踏み出せた2人は、互いの手を握り、喜びを分かち合う。
「精神の回復のパターンは、いくつかあるのね。一通り満たし、私はこれで魔性に攻撃が通じるか試してみるわ」
「魔性さんたち、かもーんですぅ♪」
「ぇ…っ!?」
 エリザベートの視線の先へフレデリカが振り返ると、何匹もの人形が突然動き、こちらへ向かってくる。
「深夜の授業の魔性とは違いますよぉ〜」
「それならいいんだけど…」
「フレデリカさんに、ちょっと攻撃されてみてください〜」
「おっけー」
 軽々しい気のよい返事をする。
「(悪いやつじゃないなら痛めつけるのは可愛そうだし、なるべく効力を弱めに調節しなきゃね…)」
「フリッカ、攻撃の仕方は分かっているんですか?」
「あぁ、それも聞いておかなきゃ…。あの、どのようなイメージで攻撃するの?」
「えっとですね。こういうふうにしてみたい〜っていう、イメージしてください♪例えばですねぇ…」
「なんだロリ校長。何する気だ?」
 嫌な予感がし…後ずさる。
「エリザベートビーム♪」
「ぎゃぁああっ!!」
 指先から放たれた光線が、魔性の額に直撃する。
「(額にビームなんて、なんてことをっ)」
 まさか滅させたのではと思い、床に倒れ込むドールにフレデリカが駆け寄る。
「あの…大丈夫……?」
「全然平気さ。あぁ、そうとも。やられたフリしただけだ。びっくりしたか?本気でヤルとは思ってねぇーしな」
「(なんでこんな軽いノリなの…っ)」
 心配して損したとフレデリカが顔を顰める。
「一緒に叩いていんですか?」
「バッチコーイ!だが、オレはドエムじゃねぇえっ。本気でヤルなよ?絶対ヤルなよ!」
「なんだか少し気が抜けてしまいますね…」
「協力してくれるっていうなら、悪い魔性ってわけじゃないし…」
「とりあえず試してみましょう、フリッカ」
 ルイーザは人差し指に光の魔力を集め、攻撃魔法を頭の中でイメージする。
 編みこんだ力を、細長い鞭を思わせる形状に変え、魔性を叩く。
「ホゲーッ。イタくねぇーっ」
「軽く叩いたただけだもの…」
「フリッカも同じイメージをしたんですか?」
「そうみたいね…。ねぇ、この力で捕まえたり出来るの?」
「宝石の力だけでは無理ですねぇ〜」
「他の授業を受けた人と、いろいろ試してみる必要がありそうね…」
 機会があれば誰かを誘ってみるのもわるくないだろう。



「エレメンタルケイジに、あのような宝石を入れなければ使えないのか…」
 洋は授業の内容を聞き漏らしてしまったらしく…。
 ペンダントだけでなく、白く輝くホーリーソウルや、アンバー色のアークソウルなどの宝石が必要だと、実技の様子で分かった。
 該当する宝石にはそれぞれ、光の魔力や大地の魔力などが宿っているようだ。
「私もこの宝石をペンダントに入れることで、扱えるかもしれないんだな?地球人以外の、魔性などに憑かれていない者を探知したり出来るようだが…」
 他の者たちの手順を思い出しながら、ペンダントに手を触れ、精神を集中させる。
「(みとの傍に寄ると、宝石が光始めたな…。弥十郎には反応しないようだ…)」
地球人には反応しないなどと試し歩く。
 疲れきった様子でみとたちの元へ戻り、席に着くとぐったりと項垂れる。
「なんとか成功したか。しかし…精神的に疲れる。光条兵器ミニガンモードで吹っ飛ばした方が楽なんだがなあ。いやいや、ここで火力に頼ってはいかんいかん」
 成功しても、気を抜かず、エクソシストの基礎を思い出す。
 かぶりを振って楽の思考を捨て去り、自分を叱咤激励をする。
「洋様、みと様はディテクトエビルの能力を持っておりますから器さえ使いこなせれば、このペンダントはお二人をお守りするでしょう。…実に悔しいです。以上」
 宝石に秘めている能力を知ったエリスは、みとと洋に声を掛け、悔しげに呟いた。
「そんなものがあったの!?セレアナ、知ってた?」
「いいえ。宝石いっても何でもいいわけじゃないのね」
 手持ちの宝石がエレメンタルケイジに対応しないことを知り、セレアナたちは実技を受けたとしても、失敗してしまうようだ。
「ガーネットでは反応がないんですか?」
「ペンダントに適合する魔力が宿っていないと無理みたいね」
「ゼロに1をかけても、ゼロということね。今回は見ているしかなさそうよ。他の者から受け取った魔道具は、使用出来ないみたいだし」
「ぇー…。私の宝石には、何も力が宿ってないのでしょうか…」
 椿は手の平に乗せたガーネットを見つめ、しょんぼりと涙を浮かべる。
「生徒が扱えるものは、今のところ3種類ですね。実技で使われたもの以外に、エアロソウルもありますよ」
 どんよりと沈んでいる椿に、朱鷺が手持ちの宝石を見せてやる。
「黄緑色の宝石ですね!きれい…」
 悲しみの表情から興味に満ちた表情へと変る。
「これ、どこでもらえるんですか?」
「もらうというより…。深夜の授業で手に入れたんですよ。運がよければ手に入るかもしれませんね」
「へぇー…そうなんですか。どんな能力が秘められているのか気になりますね…。貴重な宝石を見せていただき、ありがとうございます!」
 照明の光に当てて眺めた椿は、朱鷺にエアロソウルを返した。