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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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第3章 1時間目・質問&回答@説明タイム

「私の他にも、魔道書の方がたくさんいますね」
 ロア・キープセイク(ろあ・きーぷせいく)は自分以外にも、祓魔術の知識に興味がある者を見つけ、青色の双眸を丸くする。
「話が合いそうな者でも見つけたのか?」
「いるとは思いますけど…。もう授業が始まっていますからね」
「機会があれば、話しかけてみるといいな」
「えぇ。これから一緒に学んでいく者ですからね。それはそうと…、ヴァッサゴーも授業受けるんですか?」
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)の隣にいる悪魔をちらりと見て、声のボリュームを下げて言う。
「魔性に分類されるでしょうが、私は祓う対象ではありませんからね」
「ぁ…聞こえましたか」
「フッ…しっかりと聞こえましたよ」
「(悪魔が祓魔師……何だかシュールですね)」
 悪事を働く者ではないから、特に問題はないのだが、なんだか奇妙な感じだ。
「基礎として、感情コントロールも重要ですか…。ふむ…興味深い宝石です」
 キープセイクの物言いを気にする様子もなく、宝石に宿る力を引き出す、と言うのにも興味があり、熱心に2人の先生の話しを聞いている。
 エリザベートの講義を聞きいていると、エルデネスト・ヴァッサゴー(えるでねすと・う゛ぁっさごー)には魔道具が持ち主を選んでいるようにも思えた。
 “精神が影響することは、よーくわかりましたねぇ?ちなみに〜、悪さばかりする人や〜、邪悪な精神の方などが使うと〜、効力がと〜っても落ちるんですぅ〜。そういう方々には、使えない物なのですよぉ〜!”
 ―…という話の中だと、いくら感情を上手くコントロールしても、悪人は上手く扱えないようだ。
「悪用防止に、使用制限するは当たり前ですね」
「(レヴィシュタールはともかく、ロアも来たのは意外だ…)」
 後ろの席にいるロア・ドゥーエ(ろあ・どぅーえ)を見つけると、グラキエスの方へフリフリと片手を振ってくれた。
 “折角だ、一緒に授業を受けないか?”
 ―…と、書いたメモ用紙を紙飛行機にし、彼の方へ飛ばした。
 それをキャッチすると、ガサガサと音を立てて開き、メッセージを読む。
「ん、俺たちがそっちに行けばいいのか?」
「もう授業中なのだから、静かに移動するのだぞ」
 大きな物音や騒がないように、レヴィシュタール・グランマイア(れびしゅたーる・ぐらんまいあ)が注意する。
「お、隣いいか?」
「あぁ、空いてるみたいだからな」
「(しまった…、グラキエス様の隣にヤツが…!!)」
 ロアが彼に何か仕出かすのではと思い、パートナーの傍へ席を移ろうとするが時既に遅く、“ケダモノめ…”と心の中で呟いた。
「まったく…。いざという時に、役に立たないなんて…」
「―…おもいっきり聞こえてますが。座れないように、物でも置けばよかったのでは?」
「えー…。意地悪するみたいでいやですよ。そういうのは、ヴァッサゴーの方が…」
「フフ……。悪魔だから問題ないとでも?」
「授業中だ。2人共…話すなら、もう少し静かに話せ」
 あまり大きな声で会話するなと、グラキエスが口元に人差し指を当てる。
 注意された2人は“すみません…”と、シュンとしてしまう。
「静かにしないと、怒られるぞ。なっ、グラキエス」
 その注意される元凶となったのにも関わらず、へらっと笑い、席を立って後ろからグラキエスを抱きしめる。
 同じ研究所でグラキエスを、弟のように可愛がっていたが、その時の記憶は失っているものの、気持ちだけは残っている。
「特に、先生が話している時は…大人しく聞くものだ」
「だよなー。なぁ、俺のペンダントと同じものか?」
「見てみるか?この魔道具、綺麗な色だな」
「貸してくれっ。んー…同じものか」
 ロアは紐を摘み、自分のエレメンタルケイジと見比べてみる。
「中に宝石を入れるんだろ?」
「小さいから落とすなよ」
 アンバー色のアークソウルを指で摘み、ロアに渡してやる。
「へぇ〜…これを入れるのかー。う〜ん……この宝石、結構いい値で売れるよな」
「―……それ、俺のだが」
 玩具を取られそうになっている子供のように、ムスッと顔を顰める。
「いや売らねえって。だってこれグラキエスのだろ?グラキエスはキレイな色した物が好きだもんな」
 慌ててかぶりを振り、ペンダントと宝石をグラキエスに返してやる。
「俺のヤツも見る?」
「見せてほしい」
 不機嫌な顔から興味津々な表情に変へ、目を輝かせて片手を出す。
「俺のと同じ形だ。どっちも綺麗だな」
「そういやこの魔道具って、そこらで拾って来た宝石でも作れるのか?」
「聞いてみたらどうだ?」
「あー、そうだな。校長ー、その辺で拾った宝石でも、魔道具に出来るのか?」
「魔力を宿した特殊な宝石しか適応しませんので〜、出来ません〜」
「うー…、無理なのか。じゃあ…じゃあさ、俺たちがエクソシストの魔道具を作れるか?」
「エクソシストとして、まずは基本となる道具の扱い方を学び、いろいろ経験を積んだ方でないと〜無理ですぅ〜。後、素材の問題などもありますので〜、全ての要望を通すわけでもありません〜」
「えぇえ〜っ。まじかよぉお!?」
 レヴィシュタール・グランマイア(れびしゅたーる・ぐらんまいあ)の付き合いで参加し、偶然会ったグラキエスのために、作れるなら作ってみたい…という感じで聞いてみた。
「基礎も学ばなきゃいけないってことはー…。つまりあれだ。実戦経験も必要ってことか?」
「そうですねぇ〜」
「(うぅ…グラキエスに、何か作ってやりたいしなぁー…)」
 キレイなものが大好きな彼のためには、我慢も必要のようだ。
「個人用は却下されますぅ。実用化されたものは、他の方も使うのですからねぇ〜。それとー、私たちに許可なく、個人で量産するのも不可ですぅ」
「他のヤツが使えない個人専用のアイデアは通らないってことかー」
「ロアもエクソシストになりたいのか?」
「あー…どうしようかな。俺はレヴィの付き合いで来ただけだから、後でレヴィにやるつもりだったし」
「え…持ち主しか使えないぞ、それ」
「はっ…まじで!?」
 自分のパートナーといえど、他の者に渡したりしても効力を発揮しない。
「ロアさんは深夜の授業を受けにきましたよねぇ?パートナーの方を連れて、もう1度きてくださぁい♪」
 つまりレヴィシュタール用に、取得しなければならないのだ。
「うぅ〜…」
 また深夜まで起きてなきゃいけないのかー…と思うと急に脱力し、大好きな友人…兼弟分兼最高のご馳走であるグラキエスの頭に噛みつく。
 狂った魔力を宿した血肉と、いい匂いに誘われ、かぶりついている。
「ロア、授業に集中出来ない…」
「ぇえ、なんか暇なんだよなぁ」
「―…始まってから、20分も経っていないぞ」
 舐めたり吸ったりされているせいで、まともに集中出来なくなってしまう。
「ロア!私に授業を受けさせないつもりか!」
 黒板に質問の回答を書いている校長が、苛立つあまりチョークをパキッと割り、追い出されるフラグにレヴィシュタールが気づく。
 奈落の鉄鎖で床へ、ロアをベシャリッと潰す。
「追い出される前にグラキエスから即刻離れろ!」
「むぐぅううう。―…ちぇー」
 無理やり引き離されたロアは残念そうに俯く。
「ぜえぜえ……す、すまんグラキエス。貴公達は真面目に授業を受けにきたのに、迷惑をかける」
「エンドがこちらへ呼んだのですから…。多少のことは気にしていませんよ」
「えぇ、今のところは…ですね」
 怒りを沈下しかけている過保護なキープセイクとは違い、平静な態度を保ちながらも、心の中では“次はケダモノを攻撃しますよ”と、黒い言葉を呟いた。



「えーっと〜…。小さな声での意見交換はかまいませんが〜。なるべく静かに聞いてくださいねぇ!」
 暴れたり騒いだりしたら、次はない…とエリザベートはロアたちを睨みつけた。
 追い出されては授業が聞けなくなってしまう。
 レヴィシュタールは必死に謝り、グラキエスとキープセイク、エルデネストは軽く頭を下げる。
「ロアも謝るのだっ」
「な、何で俺まで!?」
「もとはといえば…。―……っ」
 最後まで文句を言い終わる前に、校長の咳払いが聞こえ、今度こそ追い出されると思い、私語を止める。
「―…私も質問があるのだが」
 騒ぎを起こしておいて聞けるかどうか分からず、遠慮がちに手を挙げる。
「はい、いいですよぉ」
 いくら幼い校長とはいえ、それは別として、真面目に聞く姿勢のある者は拒むことはない。
「宝石から魔法的なエネルギーを引き出すと言うのは、魔性を祓う以外に普通の火術や雷術にも使えるのだろうか?」
「それは宝石だけでということですかぁ?宝石のみですと〜、元々の効力以外のことは出来ないですぅ」
「あの…この魔道具、色や封入された魔力の種類はどれくらいあるんでしょうか?」
「うーん…、宝石のほうでしたらぁ〜、2つ以上ありますねぇ〜。色はー…取得してからのお楽しみですぅ♪」
「質問です!そういえば、同じ名前の宝石でもランクとかあるんでしょうか?」
 校長の説明が終わるとすぐさま、樹は片手を挙げる。
「ありますよぉ。効果が増えていたりしますがぁ〜…。下のランクの能力が、全て含まれるとは限りません〜。なので〜、その辺をよく考えて使用しなければいけないのですぅ!足りない部分は、他の方々と協力して、補うしかないですねぇ〜」
「単独では戦えないのは、そういう問題もあるからなんですね。分かりました!」
「互いに支え合うってことだね」
 九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は頷きながら話を聞き、ノートに書き留める。
「何事も協力し合うことが大切だよね」
「先生が他の人の質問に答えた話ではさ、助力イコール補助…という感じではないね。でも、攻撃系を主にしないのは、そんな理由もあるからかもね、学人」
 誰かの支えになりたい…と、思ったからこそ参加したのだが、夢のために頑張っている学人に、自分も負けてはいられない。
 冬月 学人(ふゆつき・がくと)は冬月流符術という、符を媒介にし、自然の力を行使する術を受け継ぐ者。
 パートナーの自分ですら、その原理は不明だ。
 長男の彼はいずれ、家の代表となる。
 代表の名に相応しい、立派な魔法使いになるのが学人の夢だ。
 自分を期待してくれる家族や仲間を落胆させないため、受け継ぐ術以外を習得する更なる魔法の研鑽が必要。
 無論、話したこともない相手とも、切磋琢磨しなければ、話にならない。
 ローズと共に、エクソシストに志願し、魔道具の説明を聞き漏らさぬよう集中する。
「ゆくゆくは、術による攻撃も…あるのよね?」
 期待していた内容と、少し異なる気がしてきたフレデリカは隣の席にいるルイーザに、声のボリュームを下げて話しかける。
「どうでしょうね?質問に対する答えを聞いていると、まったくないわけじゃないと思いますよ」
「私に合うかどうか、何度か実践してみないと、なんともいえないわ…」
 他にもいろんな使い方がありそうだが、そのためにはまず基礎から学ぶべきだ。
 任務で手痛い失敗なんてしたらシャレいならない。
「あ、あの、すみません…ちょっと質問があるのですがいいですか?理解が浅くてすみませんー」
 高峰 結和(たかみね・ゆうわ)は遠慮がちに小さな声音で言い、そっと手を挙げる。
「はぁ〜い」
「魔性の定義とは、一般的なスキルや攻撃の効かない『悪霊』と、同義でよいのでしょうか?」
「通常のスキルなどは、ほぼ効きません〜。それだけで無理に倒そうとすると、高確率で返り討ちに合う恐れもありますぅ〜。一般的な手段ですと〜、もっと本気で襲ってくる危険などもありますからねぇ。憑いた者を道ずれに、消滅しちゃうことなどもありえますしぃ〜。それに中には、まったく効かない者も存在しますよぉ〜」
「アークソウルの効力で、地球人が魔性に憑かれているかどうか…判断することは可能ですか?」
「それは〜エアロソウルのほうの効果ですよぉ〜。術者の近くにいる者に、魔性が憑いていないか分かるんですぅ〜」
「(あ…っ、別の宝石の効果なんですね…)」
 校長の説明の中で、地球人が反応の対象外でなさそうだと理解する。
「あ…ぁの…。先ほども宝石の種類に聞いている人がいましたけど、…具体的にどのようなものでしょうか?」
「炎や氷などの魔力を宿す宝石がありますよぉ〜」
「(難しい話を聞いてるとなんか眠くなるよね…。皆…眠くないのかな…?)」
 大切なことをいろいろと説明してくれているのは分かるが、どちらかというと体育会系なエメリヤン・ロッソー(えめりやん・ろっそー)にとっては、眠りを誘うような子守唄に聞こえる。
「ここは寝室じゃないのよ、起きなさいっ」
 うとうととし始めたエメリヤンを結和が小突く。
「(あぅう〜…、イテテ…)」
「皆さん、もう質問したいことはありませんねぇ?では〜実技に移りますぅ〜!」
 エレメンタルケイジと宝石についての説明を終え、実技を行うべく、エリザベートは生徒たちの顔を、前の席から順番に見る。