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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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【祓魔師のカリキュラム】一人前のエクソシストを目指す授業 1

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第8章 2時間目・質問&回答@説明タイム

「うーん…。エクソシストって結構、大変な役割だね。憑かれたものの救済だけじゃなくって、魔性をやたらと滅してはいけないとか…。当然、憑かれてもいけないし」
 だかこそ、実戦の任務を行う前に基礎知識を学び、これから行動を共にするかもしれない者たちと、顔合わせもしておくべきなのだ。
 由乃羽の方を見ると、先生の説明を頷きながら聞いたり、ノートにメモをしている。
「(…おお、由乃羽が珍しく真剣だ。レンズにも気づいてなさそうだし)」
 そのパートナーに月夜がデジタルビデオカメラのレンズを向け、撮影している。
「由乃羽、後で一緒に復習しない?」
「そうね。人数多い方が、効率も良さそうだし…。…って、なんで撮影してるの?」
「映像を見ながらのほうがいいかなって思ったのよ」
「へぇ〜それもいいかも」
「(頑張りの方向性がおかしい時があるからなぁ…。―…はぁ〜〜)」
 自分のパートナーなわけだし、行動するのも自動的に一緒なのだから、おかしな行動を起こさないように、ずっと見て………いなければならないと思うと、ため息ばかりでる。
「それにしても…魔性ねー…。俺の知るエクソシストとはイメージが違うな…」
 正悟が知るエクソシストは、地上の一般的なエクソシストのことで、主に悪魔祓いを行う者のことだ。
 パラミタでは悪魔以外も魔性に該当する種族が存在する。
「今日は持ってきてないけど、章の使い方を聞いてみるか…。先生ー。例えば、章の内容を記載した物を、前もって他の位置に配置しておいても、詠唱することで効果を発することはできるのか?」
「章を記載してあるスペルブックごとですかぁ?術者の手から数センチ離れていると、発動しません〜。別の紙などに章に書いても、それから術が発動することはないですぅ〜」
 スペルブックから離れたり、投擲出来そうなものに、章の内容を記載しても効果はない…と扱い方を教える。
「くぅ…。やっぱり基本を学ばなければ、先には進めないのかっ」
 何事も基礎から理解してくださいねぇ♪という態度をとられ、がっくりとへたれる。



「ある場所で、ゾンビモドキや霊体系の敵を倒したりしてたんやけど。今までのヤツと、今回習うヤツらどう違うんや?」
 燃え散らせてきた者とどう異なるのか七枷 陣(ななかせ・じん)は疑問に思い、校長に質問する。
「他の生徒さんに答えてきた話と重複してしまうかもしれませんがぁ〜。ん〜と、例えばー雷術を使ったらぁ〜。憑かれた人や物などを助ける時に、人を傷つけたり、物を壊しちゃったりするんですよぉ〜」
「状況的に考えると、陣くんの今までの焔だけじゃ、論外ってことだね」
 彼氏を小ばかにしたように言い、顔をニヤつかせる。
「この…っ」
「何?実技前に、早くも爆発しちゃう?にゃははは♪」
「―…今日のオレは何を言われても、怒らないからなっ」
 実技を失敗しないために、リーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)の言葉に耐える。
「話を続けますよぉ〜?」
「ぁっ、すんません!」
「陣さんが言う霊やゾンビモドキは、魂の器が消失しただけで〜。現世に留まれなくなり、魂はナラカへ旅立った者もいると思いますが〜…。今までのスキルなどで倒してしまうと、魂すらも消滅させちゃうことがあるんですぅ〜」
 霊体は現実世界を漂う力を失い、器を失った亡者が無事にナラカに逝けることもある。
 ―…しかし、中にはナラカへ逝くことすら出来ず、生前は良い人だった者までも、存在が消えてしまう。
「憑かれてしまった人や者を救うだけじゃなく、現世で生存出来る魔性なら、生かせますからねぇ〜。幽霊さんとかでしたらぁ、魂を救いやすくなりますぅ〜」
 生きている者なら、憑いた対象から祓い、対象と魔性の両方を生存させやすくなる。
 霊体などは魂を救済し、ナラカへ逝かせてあげることが出来る、と説明する。
「メイガスや上位職の召喚師、ドルイドがエクソシストに高い適性を持つんスか?」
「ウィザードとプリーストを前提とした職が好ましいですねぇ〜」
「ほぅ…我のような者でも構わないのじゃな」
 質問しようと思っていたことが答えに含まれていたが、ジュディ・ディライド(じゅでぃ・でぃらいど)も一部の魔道具は扱える。
 鎮魂術師(ネクロマンサー)を目指している彼女も、ウィザードのスキルを扱えるため、適性しないわけではない。
「あー…それと、魔道具所有者の清らかな精神力を、十全に発揮する為の方法や心構えは?」
「先に、陽子さんに説明しましたが〜。それ以外に、なるべく欲望の感情を抑えることや苛立ち、焦りすぎたりなどしないことですぅ。魔性に気づかれると、隙をつかれやすくなったり厄介ですからねぇ」
「そんな時に効力が弱いとヤバイってことやね」
「エリザベート校長!相手をボクたちに引きつけて、詠唱の時間を稼ぐ手段がいいと思うんだけど。もっと堅実な方法とかあるのかな?」
「ん〜…そういった場合は〜、ちゃーんと相手との距離を取らなきゃいけないんですけどぉ〜…。魔道具の力で魔性が見えたりする人と、一緒にいないと危ないですぅ〜」
「―…む〜。姿を隠してるヤツもいるってこと?居場所を教えてもらわないと危なそうだね」
「それも需要やけど、感情かー。―…リーズ、戦場でオレをいじるなよ」
「えっ?」
 なんでいけないのか理解不能という様子で、リーズが小さく声を上げる。
「えってなんや」
「陣くんからいじられ役をとったら、焔しか残らないんだよ?」
「ちょ…おまえっ、冗談も大概にしろや!」
「うん、冗談だよ。当たり前じゃん♪―…あ、やばい!」
 エリザベートは“静かに講義を聞きなさい〜っ!”と怒鳴り、リーズたちにチョークを投げつける。
「へっ?―…ぐぇえっ!?」
 運悪く腹に命中し、彼女の方は彼氏の後ろに隠れて避ける。
 痛む腹をさすりながら、家に帰ったら覚えてろよぉお…と怨念をこめてリーズを睨んだ。



「騒がしいな…。―…ぐぅー……ぐぅー…」
 閃崎 静麻(せんざき・しずま)は頬を指で掻き、再び睡眠学習をする。
「授業が始まってから、10分ほどしか経っていない気がするんですけどね…」
 早くも自分の横で居眠りをしているパートナーを起こさず、レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)は授業に集中する。
 大きないびきでもないし、授業の邪魔にならないため放置する。
 眠っているか授業の記録を取るか、どちらかだろうと思っていたのだが、残念なことにノートは印刷されたラインのみしか存在しない。
 つまりは新雪のように真っ白も同然なのだ。
 その斜め前の席では、壮太がノートを頭の下に敷き、授業が終わるまで起きなさそうな感じで、本気で眠りに入っている。
「聖書たるテスタメントが祓魔術の一つや二つこなせなくては笑いものなのですっ」
「ぅー…実技はまだかしら?」
 やる気満々なベリート・エロヒム・ザ・テスタメント(べりーとえろひむ・ざてすためんと)とは真逆に、日堂 真宵(にちどう・まよい)はテスタメントの本体を枕にし、口の中で飴玉をコロコロしている。
 周りに生徒が密集しておらず、特に暑いわけでもないのに、扇子でぱたぱたと扇ぐ。
「そこのあなた!もっと真面目に説明を聞きなさいっ」
「はぁ〜い…」
 注意を受けても肩肘をついたまま、パートナーのスペルブックを自分の方に寄せて、ぱらぱらと捲る。
「エリザベートちゃん…。あまり効果がないみたいですよ」
「むぅ〜、明日香ー…どうしたらいいですかぁ」
「それはー…エリザベートちゃんが考えなければいけないことですよ」
 助け舟を出してやりたいが、生徒が教師に教えるのもおかしな感じがするため、心を鬼にしてかぶりを振る。
「ちんたら区別せずに敵なら悪霊ごとどっかーんと行くべきなのよ」
「本は持ち主でないと使えませんよ」
 ハイリヒ・バイベルまで枕にされかねないと思い、本を掴み真宵から取り戻す。
「そんなの分かってるわよ。ていうかさ…。ちんたら区別せず、敵なら悪霊ごとどっかーんと行くべきなのよ」
「ぶっ壊さずに何かするのは制御能力が必要だし、面倒臭いのよね〜」
 真宵と同じようなことを、神曲 プルガトーリオ(しんきょく・ぷるがとーりお)が呟く。
「あら、意見が合うわね」
「楽をしたいなら基礎を覚えて、めんどくささを減らすしかないわ」
「―…ごめん合わないわ、残念ね。あー、むしろ悪霊操って何かしたいわ」
 魔術の勉強は好きなほうなのだが、真宵の精神はあまり清らかと呼べない。
「それなんてもう、対抗勢力じゃないですか」
 聞き逃さなかったテスタメントは、すかさずツッコミを入れる。
「プルガトーリオの言葉を借りるとしたら、もっとめんどくさいわそんなもの」
 対抗勢力に加勢したら、間違いなくこのメンツを全て敵に回すことになり、捕まりでもしたらマズイ冷や飯を食う生活しか見えない。
「貴重な質問タイムもいただけるんですから、ここはやはり何か聞かなければ!ハイハイハイ!!!」
「先生ー!」
「んー…では、魅音さん!」
「魔性にも種族みたいに分類分けがあるの?憑く対象によって効果的な章がどうして違うの?魔性払いの章はボク達が新たに作るのは不可能なの?」
 片手を振り騒がしいほど大きな声音で言うものの、元気よく片手を上げた閃崎 魅音(せんざき・みおん)が先に、いくつも質問を投げる。
「魔性とは主に、悪魔や霊、奈落人とか魔鎧などのことだね。魔性によって効力も異なるからね。扱いやすいように分ける必要があるんだよ。新たな章を作るためには、エクソシストとして経験が浅い者は許可されないし、要望が通るとも限らないよ」
「いっぱい勉強したり、実戦にも出なきゃいけないのね」
 まだまだ駆け出しの魅音たちでは、分からないことがたくさんあるし、何か要望を出したりするのは当分先のようだ。