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リアクション
★ ★ ★
「おっしゃあ、また一匹!」
「凄いですベア。今回はほんとに楽勝です」
マフラーハンドで、また一匹鷽をハエのように叩き潰したメカ雪国ベアに、ソア・ウェンボリスがコックピットの中でパチパチと拍手した。
先ほどから、鷽を一匹倒す度に雪国ベアグッズが一つずつ消滅しているような気もするが、多分気のせいであろう。
「ふっ、世界樹め、我がオリュンポスの動きを察知して、イコンを警備に就けるなど、はん、小賢しい。そのような物が、どれほど役にたつものか。たかが白熊のイコンなど。さあ、我が許へ来い。いでよ、巨大機動城塞オリュンポス・パレスよ」
鼻先で笑うと、ドクター・ハデス(どくたー・はです)が天の一角を指で指し示して叫んだ。
一天にわかにかき曇り、厚く立ち籠めた雲の中から巨大な機動要塞が降下してくる。今まで、次元の狭間に隠れていた物だ。
「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの天才科学者ドクター・ハデス! 世界樹は我らが占領する」
そう言いながら、ドクター・ハデスが要塞からのトラクタービームで空中へと舞いあがった。そのまま、機動要塞の中に吸い込まれていく。
「お待ちしておりました、ドクター・ハデス様。侵攻の準備は全て整っております」
機動要塞のコントロールルームでドクター・ハデスを迎えた天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)が、深々とお辞儀をした。
「えええっ、ちょっと兄さん! なんで私が秘密結社の怪人にして、悪の女幹部なんですかっ!? だいたい、なんでいつの間に私がここにいることになってるんです」
なぜか悪の改造人間として幹部にされてしまった高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)が、天樹十六凪とは対照的にドクター・ハデスに詰め寄った。
「今さら何を言っている。さあ、我が戦闘員たちを率いて、イルミンスールに侵攻するのだ」
「拒否権はないんですか?」
「ない!」
懇願するような高天原咲耶に、ドクター・ハデスがどきっぱりと答えた。
「ううう……、な、なんで私がこんなことを……。さ、さあ、怪人たちよ、行きなさいっ! イルミンスールを落とすのですっ!」
高天原咲耶の命令で、機動要塞からトラクタービームで地上に降りた秘密結社オリュンポスの戦闘員たちが世界樹を目指そうとした。
『ちょっと待ったあ!』
突如地面の下からそんな声が響いたかと思うと、重巡航管制艦 ヘカトンケイル強襲型が現れた。
世界樹にむかおうとしていたオリュンポスの戦闘員たちが、土砂に埋もれて姿を消す。
『この世界は、超古代国家の流れを汲む、我が帝国が支配するのであります。抜け駆けは許さあん!』
ヘカトンケイルの中から、ベスティア・ヴィルトコーゲル(べすてぃあ・びるとこーげる)が怒鳴った。
「なんなの、あの巨大な応龍は!」
突然現れた想定外の巨大イコンに、高天原咲耶が絶句した。
「恐れることはありません。いかに巨大でも、イコンの基本スペックは一定。カスタマイズが可能と言っても、しょせんはイコンです。巨大な分、装甲は紙でしょう」
天樹十六凪が、冷静に状況を分析した。
「ふふふふ、なんとなく見くびられているような気がするであります。だあが、甘い甘い甘すぎるのであります。今まさに、新型恐竜イコン軍団がこのヘカトンケイルの中で生まれようとしているのであります。さらに巨大な、デスヴァラヌスの完成も時間の問題。ひれ伏すのは、貴様らの方なのであります!」
出撃準備の整った恐竜型イコン軍団を前にして、ベスティア・ヴィルトコーゲルが勝利を確信した。
「おいおい、てめえら、人の庭先で何やらかしてくれてるんだ。いいかげんにしねえと、鷽より先にてめえらを吹っ飛ばすぜ!」
明らかにイルミンスールの物でない機動要塞と巨大イコンを前にして、雪国ベアが吼えた。
三つどもえで、一触即発の状態になる。
そのとき、彼らのちょうど真ん中の空間が光り始め、何かが現れようとしていた。
★ ★ ★
「なんだか、イルミンスール中が凄いことになっているようですが、この聖域だけは私が守り切るのですぅ!」
校長室に陣どった神代 明日香(かみしろ・あすか)が、自信満々で宣言した。
隣の部屋には、エリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)と小ババ様がいる。
「うそそそそそ、うそそそそ」
ついに、校長室にも鷽が入り込んできた。
「ついに来たですねぇ。私の奥の手は、これですぅ!」
そう叫ぶと、神代明日香は校長室の壁に大きな紙を貼りつけた。その紙には、何やら長い文章が書いてある。
『私こと神代明日香はイルミンスール魔法学校で三番目に凄い魔法使いなので、対象をどこかにいるアーデルハイト様の側に転送する限定的なテレポートを扱うことができます。ちなみに一番と二番は校長先生で超ぷりちーなエリザベートちゃんと大図書室の司書さんです。こういう場合は一番って書くものでしょうけど譲れないところでした』
ぶっちゃけでまかせなのであるが、鷽に対してはこれほど有効な物もないだろう。
「さあ、今世界樹の中で暴れている鷽ちゃんたちよ、私の声を聞くのですぅ。あなたたちは、このイルミンスール魔法学校で三番目に凄い魔法使いである私の転移魔法で、どこにいるのか分からない大ババ様の所にテレポートするのですぅ!」
両手を振り上げて神代明日香が叫んだ。
いかな鷽の大群でも、アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)の前に転送されれば、それこそ瞬殺されてしまうであろう。きっと大ババ様もストレス発散になって、一挙両得のはずだ。
そう確信すると、神代明日香は目の前の鷽を含む全ての鷽をどこにいるか分からない大ババ様の許へと転送した。
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