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リアクション
【第三章】1
格好良く扉を開いたところだが、目の前に居たのは強盗団では無くメリーゴーランドの木馬の上に立つドクターハデスだった。
「フハハハハハハ我が名は……いや、違うな」
どういうこだわりか分からないが、違う気分だったらしい。
今度はコインを取り出すと、パンダの乗り物にセットした。
可愛らしいメロディーが流れると、ハデスは立ち上がりポーズをとる。
「フハハハハハハハ!
我が名は悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、天才科学者ドクター・ハデス!!
うむ。こ! れ! だ!
……しかし連絡が遅いな、”メデューサの瞳が付けられていると言うブラジャーを手に入れる”という簡単な指令もまだこなせんとは……」
ぶつぶつ言っているハデスを見て、雅羅達一行が「シツレーシマシター」と引き返そうとした時だった。
ビシッ ビシィッ
鞭鳴りの音と共に強盗団がなだれ込むように屋上へ現れた。
「なっなんだあの姉ちゃん達」
「鞭持って調教するって」
「ちょっと嬉しいけど怖い!!」
強盗団を追い掛けてきたのはルカルカの鞭だった。
こうして屋上で、強盗団と女達が対峙することになった。
「さあ皆、かかるわよ!!」
雅羅の号令に戦いが始まった。
「お嬢さん方、怪我の無いように!」
「きゃーエース様が応援して下さるわ!」
「槍で戦うエース様も素敵ぃい!!」
エースと女性軍の中で、リリアはメシエの小言を喰らわない様サポートメインに回っていた。
皆にオートガートとオートバリアで防御をすると、強盗団に目前バニッシュで目くらまし相手をひるませる。
メシエが見て居ない隙を狙ってライトブリンガーを喰らわせたりもした。
そのメシエはというと、リリアに攻撃が及ばない様魔術を繰り出している。
彼等の後ろで炎が燃え上がっていた。
竜螺ハイコドの火術の演出だ。
燃え盛る炎は強盗団に恐怖を植え付ける。
「女性の敵は僕の敵だからね……!!」
そう言うと、ハイコドは強盗の一人に向かって強化光翼の最高速度で突っ込み、アイアンクローをする。
「まだまだぁ!!」
倒れたところへ雷術を叩き込み、それを引きずりあげて壁にぶん投げた。
敵が途切れた所でSP回復の為の鉄火巻きを口に咥えると、そのまま風術で風を生み出す。
「いけえッ!!」
ハイコドが指を指す先、風術の風で煽られた先程の炎が、後ろを向いていた強盗のケツへ燃え移った。
荒れ狂う炎が味方達を攻撃しない様、オートガードで守っていると、柚が炎の上に氷術で氷の雨を降らせていく。
役目を果たした炎はみるみるうちに鎮火した。
ハイコドと柚は互いに目線だけ交えてサポートに感謝すると、自分達の居るべき場所へ戻って行く。
「ソラン、大丈夫かい?」
戻ってきたハイコドが気遣った彼の大切な人と言えば、
怒り狂いながら両腕を部分獣化させて強盗を殴る蹴る投げ飛ばすの大立ち回りだ。
適者生存の力で相手に絶対的優位を見せつけ震えあがらせると、防御力が低下している相手の懐に飛び込みアルティマトゥースで殴ってしまう。
「……強盗団、コロスころす殺す!!!」
そんな風に暴れまわる二人をしり目に、
矢張り冷静な信は強盗団の銃をサイコキネシスで奪ったり、トリガーを動かなくさせたりと的確な攻撃をしかけていく。
周囲で戦う女性たちに当たらないようにサイコキネシスで弾道を調節をしたりもしていた。
そんな事をやっているうちに、信に小さな悪戯心が芽生えていた。
エースの近くで戦っていた女性達が縛り上げた強盗のズボンを脱がすと、八重歯を見せてにやりと笑った。
「次になにすると思う?」
縮みあがっている強盗達を一瞥しながら、信はわざとらしく懐から携帯電話を取り出した。
「これで何すると思う?」
「これで写真や動画を撮ってどうすると思う?」
「その動画をどこにばらまくと思う?」
恐ろしい質問は、強盗達が泣き出すまで終わらなかった。
「さてと、生存戦略しましょうか?!」
それがセフィー・グローリィアの開戦の合図だった。
バーストダッシュで正面の一人をを斬り付けた後、背後からスプレーショットを食らわして掃討する。
「あたしに勝ったら、抱いてあげても良いわよ……」
豊満なバストを腕組みげ目立たせると、強盗達が「うおおおお」と飛び込んできた。
「ふふふ、血気盛んでいいじゃない」
セフィーはばら撒いた弾幕で敵が視界を失っている間に後ろに回り込むと、手にしている得物――雅刀で彼等の衣服を裂いていく。
服を脱がされた強盗達をセフィーは舌舐めずりしながら見ていた。
「中々似合ってるわよ。
っと、服は斬るんじゃなくて奪わなきゃいけないんだった」
少しの茶目っ気を見せてそう言うと、セフィーは得物の刀先を横に返した。
それでもって左から右にゆっくりと、強盗達の喉元を指していく。
「あんた。それともあんたがいいかしら?
さあ、誰からお仕置きする?」
黒狼の毛皮の外套にホワイトタイガーの下着というワイルドな出で立ちのオルフィナ・ランディは美緒を護りながら戦っていた。
「オルフィナ様、わたくし大丈夫ですわ
ですから自由に戦って下さってかまいませんのよ」
また一人打倒して戻ってきたオルフィナの外套を掴む美緒に、オルフィナは急に向き直ると美緒の胸を鷲掴んだ。
「きゃ!!」
「美緒、おまえ俺好みの良い身体をしているな」
「え?」
「だから護ってやるよ」
オルフィナはバスターソードを振り上げて、敵に向かって行く。
そんなオルフィナの背中を見ながら、美緒はまんざらでもなさそうに頬を染めていた。
「素敵ですわ」
エリザベータ・ブリュメールは戦乙女としていつも凛々しく清楚だった。
しかし今回は「白狼のエロ狼」ことオルフィナの所為で冒険心を擽られ、
試着したのが漆黒のボンテージ、グローブ、ガーターベルト、ストッキングの一式だったのだ。
普段なら恥ずかしい気持ちになりそうなその衣装も、一度戦いとなれば、気持ちを高揚させるアイテムに変わる。
エリザベータは自分でも知らずのうちに技の決めや立ち回りがワイルドになっていた。
高周波ブレードを手に、素早い動きで強盗団の服を引き裂き裸にひんむいて、女性達の輪の中心に投げ込んだ。
「無惨な姿で公衆の面前晒すがいい」
優雅な唇は残酷に歪んでいた。
戦うつもりがないのにここへきてしまったものもいた。
ルシェン・グライシスとアイビス・エメラルドは強盗団の騒ぎから巻き込まれない様に屋上へやってきたのだ。
ここが戦場になっているとも知らずに。
始めこそは
「何なんですあなたたちは」「私に構わないでください」
等冷静を装っていた彼女だが、ある事がきっかけでスイッチが入ってしまった。
「なんだこれ、高かそうなイヤリングじゃねえか」
ぶしつけにも後ろから触られたのはルシェンが大事に大事にしている朝斗から貰った”月雫石のイヤリング”だったのだ。
「許さない。
……汚い手で私の宝物に触れるなんて……」
何時の間にか彼女の周囲をブリザードが吹き荒れている。
「目茶苦茶にしてやるわ」
天からはいかづちがおちてくる。
冷たく凍った視線に動けなくなっている強盗達を、ルシェンは振り下ろした指先で指差し叫んだ。
「アイビス、やっておしまい!!」
『エロスの原因を排除します エロスの原因を排除します エロスの原因を排除します』
アイビスの機械的な声と共に放たれる攻撃が飛び交う中、二人の少女の笑い声が轟音と共に響いていた。
「あはははは楽しいねアデリーヌ」
「そうですわねさゆみうふふふふ」
綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)とアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)の二人は屋上のローラーコースターににこやかな表情で乗っている。
冷静に考えてこの状況で乗っている事がおかしい事を除けばそれは楽しげな光景に見えたかもしれない。
だが、彼女達の乗るコースターを最後まで見たものは、皆一様に震えあがった。
そのコースターの一番最後の席に、ゆるゆるの紐で縛られた裸の男達が括りつけられていたのだから。