天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

邪竜の眠る遺跡~≪アヴァス≫攻防戦~

リアクション公開中!

邪竜の眠る遺跡~≪アヴァス≫攻防戦~

リアクション



stage5 問題発生

「よし、一番乗りだな!」
「じゃあ、俺は二番か」
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)に続いてエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が、仲間を引き連れて遺跡の最深部に到達する。
「うぅ〜、なんかこの辺寒いな」
「大丈夫か、グラキエス? なんだったらウルディカから上着を借りてくるが……」
「ありがとう。でもそこまで寒くはないから大丈夫だ。それに上着を羽織ったら動きにくいだろ。
 ウルディカにはそのまま作業を続けてもらってくれ」
「わかった」
 グラキエスはゴルガイス・アラバンディット(ごるがいす・あらばんでぃっと)に無邪気な笑みを見せると、壁に描かれた壁画や巨大な石像をじっくりと眺め始めた。
 そんなグラキエスから少し離れた場所――最深部の中央に設置された何らかの儀式を行うためと思われる祭壇の上に、ウルディカ・ウォークライ(うるでぃか・うぉーくらい)はいた。
 ウルディカの目の前にはいかにも怪しい宝箱があった。
 宝箱は金属製で錆が見えるものの、如何にも何か重要なものが入っていそうな雰囲気を醸し出している。そのため、周囲には幾つもの罠が仕掛けられており、ウルディカはその解除に向かっていた。
「どう? 開きそう?」
「もう少し待ってくれ。わりと慎重にやってるから……」
 エースの質問に顔を向けずに返事をするウルディカ。
 その真剣な様子に、エースは邪魔にならないようそっと離れ、今度は【サイコメトリ】を行っていたメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)の方に話しかけてみた。
「そっちはどうだい?」
「……それほど重要な情報は読み取れていませんね。
 この遺跡が邪竜を焼き払い、残った心臓を収めた……それなことくらいでしょうか。
 とりあえず他にも色々と調べてはみますが、期待はしないでください」
 そういうとメシエはエースの脇を通り過ぎ、祭壇から降りて彫像の方へと向かっていった。
 残されたエースは暫し遥か遠くに見える天井を見つめたのち、頭をかいた。
「やることないね……」
 エースは苦笑いを浮かべて、メシエの後を追いかけた。

 その頃。遺跡の他の場所では、大変な事件が起ころうとしていた……。

「あ、ミッツさん。やっと見つけましたよ」
「おおっ、鉄心じゃん」
 人が進んで痕跡を追って最深部へ向かっていた源 鉄心(みなもと・てっしん)達は、ようやくミッツ・レアナンドと合流うすることができた。
「なんだ君も来てくれたのか。
 ありがたや〜。ありがたや〜」
「なんですかそれ」
 手を合わせて拝むミッツに、鉄心は思わず笑みを溢した。
「よかった。見た感じよりミッツさんが全然元気そうですね」
「ん、なんで? 僕は全然ピンピンしてるよ?」
「いや、だっておぶってもらってますよね?」
 首を傾げる鉄心。ミッツはヘイリー・ウェイク(へいりー・うぇいく)におんぶされた状態だった。
「あ〜……」
 天井を見つめて、ミッツは懸命に言葉を探した。
「えっと、あのな、鉄心」
「はい?」
「うん……色々事情があるんだ」
「はぁ……?」
「深くは聞かないでくれ」
「わかりました」
 良い答えは見つからなかった。
「ところで鉄心。連れの子は大丈夫なのかしら?」
「へ?」
 ヘイリーの問いに鉄心が振り返る。
 すると、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が青ざめた表情で壁に寄りかかっていた。
 鉄心は慌てて近づき、肩を掴んだ。
「どうした、イコナ!」
「ト……イ……」
「問い? なんのことだ?」
 イコナは俯き、鉄心の顔を見ようとしない。
 ただ、ブツブツと何事か呟いていた。
 鉄心は何か重大なことが起きたのではないかと焦った。
「イコナ! 何が起きたんだ! はっきり言ってくれ!」
 すると、イコナ肩を震わせ、答えた。
 
「トイ……トイレに行きたいですの!!

「……は?」
 話を聞いてみると、ここに来るまでの間に飲食を繰り返し、そのためトイレに行きたくなったということらしい。
 心配していた鉄心は安心して、それから呆れて、なんだかドッと疲れを感じた。
「今から戻っても外に出るまで時間がかかるぞ。
 そこら辺でするしかないんじゃないか?」
「嫌ですわ! そんな恥ずかしいことをわたくしできませんわ!」
 半べそ状態で訴えるイコナに鉄心はどうしたものかと頭を抱えた。
 すると、鉄心の肩をティー・ティー(てぃー・てぃー)が叩く。
「どうした、ティー?」
「あの、鉄心。実は……」
 ティーは苦笑いを浮かべながら額に薄らと汗を滲ませていた。
 鉄心は深い深いため息を吐いた。
「早くおトイレに……」
 イコナがふらついて近くの柱に寄りかかる。
 その瞬間、

 ガコッ――

 遺跡の仕掛けが作動した。