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第四章


――西館3階、おへや。

 地図上、ただ『おへや』とだけ書かれた部屋。そこに何か重要な物があるのではないか、というアリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)の意見によりロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)マルティナ・エイスハンマー(まるてぃな・えいすはんまー)はこの部屋に訪れていた。
 特に他の部屋と変わらぬ扉は鍵もかかっておらず、ノブを捻るとゆっくりと開かれる。

「……ああ、そうね。おへやね、おへや……」
 アリアンナが中の光景を見て、疲れた様に呟いた。
 中は簡単に言うと物がごちゃごちゃと散らかった汚い部屋だった。
「おへやって『汚部屋』って意味なのね……」
「成程、これも日本文化の一つだな」
 感慨深そうに呟くロレンツォ。まぁ間違っちゃいない。
「さて、どうしましょうか?」
「……来ちゃったからには調べないわけにはいかないし」
 マルティナの言葉にアリアンナが疲れた様に答える。
 そして三人で散らかった部屋を調べ出した。
「……意外とゴミは無いのね。倉庫みたい」
 アリアンナの言う通り、この部屋はゴミ部屋、というよりは単に物を整理整頓できてないようであった。
「しかし本が多いですね。それも随分と薄い……」
 ロレンツォが一冊を手に取る。
「しかも何故か男性同士が抱き合っているような表紙の割合が多いですね」
 この部屋腐ってやがる。
「ふむ、数冊頂いていきましょうかね」
「え、そういう趣味?」
 アリアンナの言葉にマルティナが首を横に振る。
「いえ、よく見るとどれも埃を被っていませんし、それなりに大事な物だと思いますから」
「これも盾代わりにはなりそうですね。私達も貰っていきましょうか」
 ロレンツォも頷き、本を物色し始める。
「……なんか、私達大事な物を失っているような気がするわ」
 アリアンナが呟いた。きっと気のせいに違いない。

――西館3階、あかずの間

 世納 修也(せのう・しゅうや)ルエラ・アークライト(るえら・あーくらいと)は地図上で『あかずの間』と書かれた部屋の前に来ていた。
 本来は美術室に向かう予定であったが、出会った探索者からどういう部屋だったかを聞いたため予定を変えたのである。
「あかずの間って言うからには鍵とか必要なんじゃないのかな?」
「いや、そうでもなさそうだ」
 修也がドアノブを捻ると、扉がそっと開かれる。
「何があるかわからないからな……警戒だけは怠るなよ?」
「うん、わかってる」
 修也に言われ、ルエラが麺棒を握り直す。その様子を確認すると、修也はノブを握る手に力を籠め直し、一気に扉を開けた。
「「……え?」」
 中を見て、修也とルエラが言葉を失う。
 中に広がる光景は、ベッドや本棚と言った生活感が溢れる物。それと、
「だ、誰だね君達は!?」
パソコンに向かっていた根暗モーフリーダーがこちらを向く。身に纏うパンツは膝まで下ろしてほぼ半裸状態。股間は勿論フルオープンで右手は添えるだけ。誰かモザイク持って来い。
「ひ、ひゃあああああああああああ!?」
 その姿を見てルエラが悲鳴を上げる。
「い、いきなり悲鳴とは失敬な! ノックくらいしたまえチミィ!」
「いやその前にパンツを履けパンツを!」
「おっと、失敬」
 立ち上がりそのままでにじり寄ろうとしてきたリーダーが修也にツッコまれパンツを履きなおす。
「だ、大丈夫かルエラ!?」
「み、見ちゃった……モロ見ちゃった……」
 ブツブツと虚ろな目で呟くルエラ。SAN値がかなり減ったのは間違いない。後でカウンセリングが必要だ。
「ぬぅ……人のプライベートルームにノック無しで入ってきておいて何だね! 恥を知れ恥を!」
「恥を知れはそっちだろうが! 大体何だよパンツ一丁って!」
「自宅だから恥ずかしくないもん!」
 そういう問題じゃねぇ。
「勝手に人の部屋に入っておいて人に恥を知れなどけしからん! 君達には常識とはなんなのかを教える必要がありそうだ!」
 そう言ってリーダーがにじり寄ってくる。
「お前が常識を語るな!」
 修也が麺棒で殴り掛かるが、片腕でガードされただけで棒は呆気なく折れてしまった。
「さあ来い! お仕置きの時間だ!」
「いやちょっとまて! アレ触った手で触るんじゃねぇー!」
 そして、修也たちは呆気なく捕縛されてしまうのであった。