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鴉鳴き飛ぶ西洋館

 古びた錆ついた門。
 左右が対になっているように見える木造の二階建ての西洋館。
 そこへ行くまでに飾られているオブジェはどこか禍々しさを醸し出している。

 門の前には数組の人が固まって立っていた。
 ギギッ……と錆ついた鈍い音をたてて中心から左右に開けられる。

「ようこそ、ホラーハウスへ。門をくぐればそこはまさに古今東西の異世界……異世界の夢から目覚められる自身があなたにはありますか?
共に歩む者は手をつなぎなさい。離れたくなければ……隣を歩む者がいつまでも同じ者である為に」


 擦り切れたテープからそう流れてくる。

「人が入れ替わるということかな? とりあえず、アディ」

放送を聞いた綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)は隣にいるアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)に手を前に出す。

「恐怖感を煽る謳い文句でしょうけれど。わたくし、最後まで離しませんわ」

 さゆみとアデリーヌは恋人つなぎで手を握る。

「さて、どんな奴が驚かしに来るか楽しみだな」
「そうだな。どんな風に脅かしてくるか楽しみだ」
「よーしっスタンプを全部集めてホラーハウスを踏破するぞ!」
「だが、このまま4人で行動するのか?」

 スリルを求めるリブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)アルビダ・シルフィング(あるびだ・しるふぃんぐ)
 エーリカ・ブラウンシュヴァイク(えーりか・ぶらうんしゅう゛ぁいく)はスタンプ制覇を目指し、レノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)はふと思った疑問を口にする。

「否、ここは簡単にクジで決めようか。面白味が半減してしまうのは嫌だしな」

 リブロはポケットに入っていた二種類のコインを3枚取り出す。
 ハンカチを被せて三人にコインを取らせる。

「(リブロと共に行けるだろうか……)」
「(さて、誰とペアになるのだか)」
「(どこにスタンプが隠されてたって見つけるもん!)」
「全員取ったな? ……どれ」

 リブロがペアを確認すると、エーリカとレノアが同じコインを持っていた。

「エーリカとレノアがペア……ということは私はアルビダとだな」
「そうみたいだな。今回はよろしく頼む」
「もちろんだ。レノアたちは1時間経ったら入るんだ」

 ペアが決まり、進み始めた参加者たちに倣って門をくぐるリブロたち。



◇          ◇          ◇




 館の入口の脇に簡易テーブルが置いてあり、瀬山 裕輝(せやま・ひろき)が座っている。

「いらっしゃーい。ようこそ、ホラーハウスへ。これスタンプの台紙な」

 にたりと不気味な笑みを浮かべ参加者たちに台紙を渡していく。

「リタイアしたけりゃあちこちに隠されてる出口を探せばええよ。ご褒美は貰えんけどなーまぁ頑張りぃ」

 10分間隔で扉を通していく祐輝。
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)を送り出し、残っているのはエーリカとレノアだけ。

「はいー次……ちゅーか最後の方―」
「あ、私たちは1時間後に入る約束してるから!」
「あーなら、人呼び行くから人来たら台紙渡してぇな」

 それだけ言って裕輝は席を立って、人呼びをしに行った。

「ちょおそこの君」

 館にかかる噂を興味本位で見ていた人に声をかける裕輝。
 マシンガントークの如く舌先三寸口八丁、嘘とホントを混ぜ込んで宣伝し、館に入らせていく。