天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊

リアクション公開中!

決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊
決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊 決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊 決戦! 秘密結社オリュンポスVSヒーロー戦隊

リアクション

「うおっ!? な、何だなんだ? 爆発音?」
「音からすると相当数の爆発物が一斉にドーン! ってところだろう」
「気づけばこのようなところに連れてこられ、あげく建物は破壊される。難儀じゃのぉ」
「そんなこと言ってる場合かよ! さっさとにげねぇと!」
 爆発の音に危険を感じ、逃げ道を探すのは猿渡 剛利(さわたり・たけとし)という名の美少女。と、みせかけての男だ。
 名前と口調からは想像できないが、その外見は男とは思えない。第三の性別と言われても違和感はない。
「まあまあ待て。せっかく人質として攫われたんだから、やることやっとかないとな」
「その通りじゃ。気がつけば人質になってたわしらにしか体験できぬこともある」
 逃げ道を探す剛利をなだめる様にして止めるのは三船 甲斐(みふね・かい)佐倉 薫(さくら・かおる)の二人だ。
 三人は知らぬ間にここへ連れてこられており、今に至るわけだ。
 周りには同じく人質として連れて来られていた者がいた。
「自分たちが囚われている場所が崩れ落ちそうだって言うのに、元気だな」
「でも、いつでも楽しむ気持ちを忘れないことはいいことだよ!」
「そうじゃそうじゃ。貴公、いいことを言うな」
「まったくだ」
「わーい! 褒められたよ!」
「良かったな」
「ってほのぼのしてる場合か! しっかりしてくれよ、あなただけがまともそうなんだから!」
「と、言われてもな。……とりあえず、今更かもしれないけど自己紹介でもするか。世納 修也(せのう・しゅうや)だ」
「僕はルエラ・アークライト(るえら・あーくらいと)! よろしくね!」
 その二人に習い、三人も自己紹介をし返す。自己紹介が終わったところでモブ怪人の一人が現れる。隣には、 黒羊郷ベルセヴェランテの姿もある。
「それじゃとりあえずこれで我慢してね。もうすぐ助けが来るから」
「うー仕方ないですー」
 先ほどぶり、モブ怪人ZS12がベルセにお菓子を手渡して人質が集まっている場所へ誘導する。そのついでに、謎の台本を皆に配り始める。
「はーい、聡明な皆さんのことですから先ほどの爆発音をお聞きしてわかる通り、もうすぐこの城は落ちまーす。
 ですがご安心を、ヒーローの方々がこちらに向かっておりますので無事にここを出られます」
「……それを止めるのが、お前の役目なんじゃ?」
「それを止めるのがお前の役目だろっ!」
 同じツッコミをする修也と剛利。それに対して笑いながら応えるモブ怪人ZS12。
「いやいや、私一人じゃ無理ですよ。いくらちょっと名前があるからってそこはモブ、ヒーローの足元にも及びません。それに皆さんが怪我をしたら大変ですからね」
「とってもお優しいんですね!」
「怪人にも、ここまで慈悲深い者がいるとは、感服じゃ」
「あっ、だけどこの台本はいいや。こっちで作ったのがあるから」
「もちろん、自前のものがある方はそちらを優先して構いません。それではヒーローさんがきたらその台本を参考に各自助けられるように叫んでください、それじゃ私はこれで」
「お菓子ありがとー」
「どういたしまして、気をつけてね。皆さんも上からの落石物には気をつけて!」
 全身タイツのナイスガイ、モブ怪人ZS12はそう言って去っていった。
「モブ怪人ZS12……一体何者なんだ……」
「いや、まじで何なんだあの人……それに台本って?」
 一緒に捕まっていたはずの人質たちも手渡された台本を見てキャーハズカシーなどと声を上げている。
「一体、何だって言うんだ? バイトでも雇っているのか?」
「そんなわけないだろ……ないよな?」
「さあ、どうじゃろうな。まあお前さんはこの台本を熟読しておれ」
「ああっ? どれどれ……?」
 以下、台本。

――――――

 秘密結社オリュンポス……なんて恐ろしい組織なの!
「美少女で薄幸」な私は、 お約束な展開として、悪の組織にさらわれてしまったのよ!

「助けて、ヒーロー! 助けてくれたらデートしてあげる! だから早く!」

 デートなんてしなくていいって断られても、
「私の好意が受け入れられないの!?」と強引についていくわよ!

――――――

「あーなるほどーこりゃ確かに台本だって、なんだこれはーーーー!」
「いや、今自分でも言ったじゃないか。台本だろう」
「どうみても台本じゃろ、わしらが丹精込めて作った台本じゃ。喜べ」
「喜べるかいいや喜べないね!」
「そりゃまた何で?」
「わからないか? パートナーのお前等ならわかると思うんだが?」
「そうか、台詞量が少ないんじゃな」
「違うよ違うこれっぽっちもカスってなーい! 俺の、性別、何!」
 何故かカタコトになる剛利の質問に答える甲斐と薫。
「第三の性別だろ?」
「第三の性別じゃろ?」
「男! 男なの! 男の俺がなんでヒロインやんなきゃなんないんだよ! だったら怪人やるわい! ……というか、誰が第三の性別かーーーー!」
「お前だろ?」
「お前じゃろ?」
「話聞いてんのかー! こんの、悪役共が!」
 台本を地面に叩きつける剛利。ツッコミに疲れた剛利が肩で息をしている横で、甲斐が台本を拾う。
「……ふむ、俺様と師匠が創った台本が気に入らないと?」
「当たり前だ! 男用の台本ならまだしも、完全に攫われたかなり押しの強い令嬢だろ!」
「適役じゃないか」
「だれが適役か!」
「しかし、わしらが悪役とな……悲しいのう」
「まったくだよ」
 顔を俯かせる二人。それを見た剛利が少しだけ戸惑う。
「な、何だよ。いきなりしおらしくなりやがって」
「悲しいのう、悲しいのう……この悲しさを晴らすにはもう、洗脳しかないのう」
「……はっ?」
 薫が放った言葉に理解が追いつかない剛利に追い討ちをかける甲斐。
「そうだよ、仕方ないよな。俺様たちは悪役、なら洗脳の一つや二つしても何もおかしくはないってことだよな」
「悪役じゃからのう、洗脳程度なら問題あるまいて」
「な、なんだよそれ! その怪しげな装置は!」
「『R&D』と『錬金術』で創ったこの簡易的な洗脳マシンだよ。何時間も続く代物じゃないが、ヒーローさんたちが助けに来るまでならいけるだろ」
「くっくっく、なーに、心配せずとも最高のヒロインに仕立て上げてやるわい」
「……いや、まて、話せばわかっ」
 しかし抵抗むなしく、甲斐が剛利に簡易洗脳マシーンを取り付ける。そしてスイッチオン。

ヤメロオオオオォォォォォォォォォ―――――――。

 そうして剛利はヒロイン(男の娘)になったのだ。洗脳恐るべし。
「……ご愁傷様だな」
「楽しそうだね! 僕たちも混ぜてもらいたいよ!」
「俺は遠慮しておこう。しかし、この台本はどうするか」
 持たされたモブ怪人ZS12のお手製台本(用紙はきっちり揃えられホチキスで止められている)を眺める修也。
「見るだけ見てみようよ! せっかく作ってくれたんだし」
「まあ、それならいいか」
 そう言って、台本の中身を確認する二人。
 またしても以下、台本!

――――――

あなた:「キャー助けて!」
相方 :「大丈夫、ボクがそばにいるよ」
あなた:「で、でも…。」
相方 :「それにきっとヒーローが助けに来てくれるさ」
あなた:「そうね、きっとヒーローは来てくれるわね」

共にじっとヒーローが来てくれるのをじっと待つ

――――――

「……本当にこんな台本を読めというのか?」
「んー、どうしてこんなことをするのかな?」
 十数ページにわたる台本を眺めて見た二人がそれぞれの感情を漏らす。
 それもそのはず、手渡された台本だが、修也が女性口調の方で、男性口調の方がルエラなのだ。
「なぁ、ルエラ。これ台本逆なんじゃないか?」
 至極当然の結論に至った修也がルエラに問いかけるが、ルエラはこう答える。
「いやいや、ちゃんと口調もあっているしこっちがボクので間違いないよ。ただ修也の台本は間違ってるかも、だって口調違うし」
「……そもそも女性口調から考えるにルエラは女で女口調の台本がここにあって、自然に導かれる答えはそうなるんじゃ」
「うー台本もらったからにはちゃんと覚えないとー……」
「……聞いちゃいないか。というか、俺も覚えるのか? この女口調の台詞を」
 台本とにらめっこを開始したルエラとため息をつく修也。
 そこへ、先ほど暴れていた三人の怪人ヒーローが現れる。
「うおっりゃー! 動力炉はここかぁ!」
「……見たところ、違うようだが」
「やっと広い場所にでれましたね」
「っと、ヒーローのお出まし……か?」
 遂に修也の前に現れたヒーロー、なのだが。
 一人は片腕がガトリングになっており、
「ああ?」
 もう一人は可憐で儚げな微笑であり、
「あら?」
 更にもう一人?は宙に浮く右腕、だけである。
「んっ?」
「ヒーロー、なのか?」
 そんなヒーローなのか怪人なのか判断が難しい人たちに出会ってしまった修也は頭を抱える。そんな修也に話しかけるラトス。
「姿は完全に怪人だがこれでもヒーローだ。こちらの二人もな。見たところ人質のようだが、助けは必要か?」
「おぉ……凄い、本当のヒーローだ……。本当のヒーローは姿だけじゃ判断ができないものなんだな……」
 ラトスの紳士的なヒーロー対応に感動して、三人がヒーローだと思い込む修也。
「え、えぇ? 修也ってそんな風になることもあるの?」
 普段からは想像できない修也の豹変に驚くルエラ。完全に台本のことは忘れてしまったようだ。
「認めてもらえて光栄だ。それでは脱出するとしよう」
「助けて、ヒーロー! 助けてくれたらデートしてあげる! だから早く!」
 突然現れたのは洗脳され、ヒロイン(男の娘)になった剛利。今の彼は台本に何の違和感ももたないのだ。洗脳とは恐ろしい。
「いや、今はこうしていられるが普段は灯と同体だからな。悪いが、デートはできん」
「私の好意が受け入れられないの!?」
「なんでそっちに行くのじゃ! どうせならそっちのガトリング背負った者の方が絵になるじゃろうが!」
 剛利を洗脳した張本人の薫が叫ぶ。
「いやまあ、ガトリング背負ってるヒーローを選ぶのもどうかと思うけど」
「俺だって好きでやってるんじゃねぇ!」
 甲斐のツッコミに更なる勢いでツッコむ恭也。
「ともかく、放っておけばこの城は落ちるだろう。動力炉は無視して、ここをみんなで脱出するぞ」
「そうしましょう」
 収集がつかなくなる前にラトスが何とか皆を纏めて、パレスから脱出を開始する。
 パレス崩落まであと少し。そして、遂に動く黒幕の正体。
 一体、その正体は何ハデスなのか。まるで予想がつかないまま、ヒーローと怪人の戦いは続く。